衙齋臥聽蕭蕭竹, 疑是民間疾苦聲。 些小吾曹州縣吏, 一枝一葉總關情。 |
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濰 縣署中に 竹を畫 きて 年伯・包 大中丞括 に呈す
衙齋 に 臥して聽く蕭蕭 たる竹,
疑ふらくは是れ 民間疾苦 の聲かと。
些小 なる吾曹 州縣吏,
一枝 一葉 總 て關情 。
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◎ 私感訳註:
※鄭燮:〔ていせふ(しょうZheng4Xie4●●〕:乾隆年間に山東濰県知県等を務める。民の苦しみを詠った詩が遺されている。一六九三年~一七六五年。
※濰県署中画竹呈年伯包大中丞括:(現)山東省の濰県(ゐけん)の役所で、竹の絵を描いて、科挙の先輩(・父親)である包括(はうくゎつ)大中丞に差し上げる。 ・濰県:〔ゐ;wei2○-けん〕山東省にある地名。 ・濰県署:濰県(いけん)の役所。 ・画竹:竹(の絵)を描く。 ・呈:差し上げる。 ・年伯:科挙の合格が同期の者の、先輩・父親に対する呼称。 ・包括:先輩(同期の者の父親)の姓名。包括の官職名が大中丞。 ・大中丞:官職名。
※衙斎臥聴蕭蕭竹:役所の中の書斎で、風が竹に、もの寂しく吹く音を、寝転んで耳をすまして聴いて。 ・衙斎:〔がさい;ya2zhai1○○〕役所の中の書斎。 ・臥聴:寝転んで耳をすまして聴く。 ・聴:両韻。念を入れて詳しく聴く。 ・蕭蕭:〔せうせう;xiao1xiao1○○〕風がもの寂しく吹くさま。『古詩十九首』第十三首にはそれを描いて「驅車上東門,遙望郭北墓。白楊何蕭蕭,松柏夾廣路。下有陳死人,杳杳即長暮。」とあり、『古詩十九首』の第十四首には「去者日以疎,來者日以親。出郭門直視,但見丘與墳。古墓犁爲田,松柏摧爲薪。白楊多悲風,蕭蕭愁殺人。」
とあり、荊軻の『易水歌』に「風蕭蕭兮易水寒,壯士一去兮不復還。」
とある。
※疑是民間疾苦声:(この竹の音は)悪政の苦しみに対する民の声ではないか、と疑った。 ・疑是…:…かと疑う。「疑ふらくは是れ」。盛唐・李白の『望廬山瀑布』に「日照香爐生紫煙,遙看瀑布挂前川。飛流直下三千尺,疑是銀河落九天。」とあり、前出・李白の『靜夜思』に「床前明月光,疑是地上霜。舉頭望明月,低頭思故鄕。」
(「牀前看月光,疑是地上霜。舉頭望山月,低頭思故鄕。」
)とある。 ・疾苦:悪政の苦しみ。なやみ苦しむ。苦痛。多くは悪政の苦しみ。
※些小吾曹州県吏:わたくしたちめは、地方の下級の役人(で)。 ・些小:少しばかりの。自分を遜って謂う場合に使う。それがし、やつがれ…。 ・吾曹:我々。 ・州県吏:地方の下級の役人。
※一枝一葉総関情:(竹=民の)枝や葉の一つ一つにまで目を行き届かせ、些細なところにまで、心配りをすることだ。 ・一枝一葉:ひと枝、ひと葉にまで。作者は、些細なところにまで、目を通して心配りをすることを謂う。 ・総:すべて。総じて。 ・関情:心にかける。
◎ 構成について
2021.9.2 |
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