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龕山凱歌 其五
                                                  
                        明・徐渭

夷女愁妖身畫丹,
夫行親授不縫衫。
今朝死向中華地,
猶上阿蘇望海帆。




          
    **********************


           龕山(がんざん)凱歌(がい か ) 其五

夷女( い ぢょ) (えう)(うれ)へて  ()(あか)きを(ゑが)き,
夫の(かう)に (した)しく(さづ)く  ()はざる(さん)
今朝(こんてう) 中華(ちゅうくゎ)の地に(おい)て死するに,
()ほも 阿蘇(あそ)(のぼ)りて  海帆(かいはん)(のぞ)む。

            ******************




◎ 私感訳註:

※徐渭:明の劇作家、詩人、書画家。正德十六年(1521年)~萬暦二十一年(1593年)。字は初め文清、後に文長。号は天池山人、青藤道士など。天池生、田水月など自署した。山陰(現・浙江省紹興)の人。受験に失敗して官途に恵まれず、浙閩総督の胡宗憲の顧問となって、倭寇との戦いに従事したこともある。晩年は、書画を売って生活した。

※龕山凱歌:龕山(がんざん)での(倭寇との戦闘での)勝利の歌。 ・龕山:〔かんざん(がんざん);Kan1shan1○○〕杭州蕭山区。杭州蕭山国際機場の南4キロメートルのところ。坎山。現・浙江省蕭山区。明の湯克寬(=湯克寛)参将(=武将の階級で、副将の下の位)が、ここで倭寇に大勝したところ。なお、「倭寇」とは、主として、中国大陸の沿岸や内陸、朝鮮半島及び南洋方面で行動した日本人を含む海賊的軍事貿易集団に対して、中国側からの呼称。「日本(人)の寇賊」という意味。ここでは、明代のものを指す。 ・凱歌:凱旋の時に歌う歌。戦いの勝利の歌。なお、倭寇を討った時の凱歌の詩に、明・沈明臣の『
凱歌』「銜枚夜度五千兵,密領軍符號令明。狹巷短兵相接處,殺人如草不聞聲。」がある。また、戦いに出た夫と留守をあずかる妻の間を詠う詩に、盛唐・王昌齡『閨怨』「閨中少婦不知愁,春日凝妝上翠樓。忽見陌頭楊柳色,悔敎夫壻覓封侯。」や、晩唐・陳陶の『隴西行』「誓掃匈奴不顧身,五千貂錦喪胡塵。可憐無定河邊骨,猶是春閨夢裏人。」がある。

※夷女愁妖身画丹:東夷(東方の異民族(蛮族)である日本)の妻は、もののけの害を案じて、赤い入れ墨を施して。 ・夷女:東夷(東方の異民族(蛮族)、東方のえびす≒日本)の妻。ここでは、「倭寇の妻」の意で使われている。「夷」〔い;yi2○〕には貶(さげす)みを含んだ「(東方の)外国人」の意がある。 ・愁:案じる。心配する。うれえる。後出・『魏書・東夷傳』(=『魏志倭人伝』)中の表現で言えば「避」「厭」。 ・妖:〔えう;yao1○〕わざわい。化け物。もののけ。妖怪。後出・『魏書・東夷傳』(=『魏志倭人伝』)中の表現で言えば「蛟龍之害」「大魚水禽」。 ・画丹:(朱や酸化鉄などで)赤い色(の入れ墨)を施す。入れ墨。文身。刺青。『魏書・烏丸鮮卑東夷傳卷三十』(=俗にいう『魏志倭人伝』)に「倭人…
男子無大小皆黥面文身。自古以來,其使詣中國,皆自稱大夫。夏后少康之子封於會稽,斷髮文身避蛟龍之害今倭水人好沈没捕魚蛤,文身亦以厭大魚水禽,後稍以爲」(中華書局版225ページ上段 東夷傳卷三十 八五五頁)とある。

※夫行親授不縫衫:(妻は、)夫(おっと)が旅立つ時に、みずから縫(ぬ)い目の無い肌着(はだぎ)を手渡した。 ・行:出発すること。旅立つこと。 ・親授:みずから手渡す意。自分で手渡す意。親しく手渡す意。 ・不縫衫:縫(ぬ)い目の無い肌着(はだぎ)。*縫(ぬ)っていないシャツとは、腹に巻いた「さらし」のことか。倭寇は、戦闘前には、妻から授かった新しい晒(さらし)を巻いたのか。これは、もしや、「千人針」の祖型というべきものなのか。(まさか「六尺褌(ふんどし)」ではあるまい)。明末の『學府全編』には、「日本國」との見出しで、両肌(もろはだ)を脱いで、上半身裸になって、裸足(はだし)で長大な日本刀の抜き身を担(かつ)いだ月代(さかやき)を剃(そ)った倭寇の姿が描かれている。(イメージで謂えば、日本の絵本の赤鬼、青鬼…の姿?)。 ・衫:〔さん;shan1○〕袖無しの襦袢(じゅばん)。肌着。シャツ。

※今朝死向中華地:(倭寇の夫は)今日、中華の地で死んだが。 ・今朝:今日(きょう)。今朝(けさ)。今日(こんにち)。現在。なお、ここで「今朝」として「今日」としないのは、平仄上、「今朝」は
○○●○)のところで使い、「今日」は●●○●)のところで使うため。この句・「□□死向中華地」は「○○●●○○●」とすべきところで、「今朝」(○○)とするのが適切。 ・死向-:(…の場所)で死ぬ。…に死す。…において死す。=「死於」。ここを「死於」として「死向」としないのは、「死於」は○○●○)で、「死向」は●●○●)。ここでは、●●とすべきところなので、「死向」(●●)が適切。全くの蛇足になるが、(仮に、この詩を自分が作っているとして)「今朝死向中華地」(○○●●○○●)の句を、逆の「●●○○○●●」とする必要がある場合は、「今日死於華夏地」とでもする。以上、余談。 *『龕山凱歌』其四には「無首有身只自猜,左啼魂魄右啼骸。憑將老譯傳番語,此地他生敢再來?」と、夫(男)が亡くなったことが詠われている。 ・中華地:当時は明の地。

※猶上阿蘇望海帆:(故国の妻は、)なおも(高山である)阿蘇山に上(のぼ)って、(夫が乗って帰って来るはずである)海からの船を待ち望んでいる(ことだろう)。 ・猶:引き続いて。なおも。 ・上:のぼる。*「山に登る」は、「上山」とも表現する。 ・阿蘇:九州の熊本、大分両県にまたがる世界最大級のカルデラを持つ規模雄大な活火山。最高峰は海抜1592メートル。なお、標高で謂えば、九州本島の最高峰は、大分県の九重山系の中岳は1791メートルで、屋久島の宮ノ浦岳は1928メートル。本州の富士山の標高は3776メートル。この詩の原注に「其地
阿蘇山最高」(其の地(=倭の地)は阿蘇山が最も高い)とある。 ・望:待ち望む。また、(遠くを)のぞみ見る。(遠くを)ながめる。ここは、前者の意。 ・海帆:航海する船。外洋船。





◎ 構成について

韻式は「AAA」。韻脚は「丹衫帆」で、平水韻上平十四寒(丹)、下平十五咸(衫帆)。(平水韻の韻目「十四寒」は〔-an〕韻であり、韻目「十五咸」は〔-am〕韻であるので、本来は通韻はしない。当時、作者の生活した地域では、既に〔-m〕韻が消えて〔-n〕韻に統一されていたのか。次の平仄はこの作品のもの。

○●○○○●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○◎●○。(韻)
2015.2.25
     2.26
     2.27
                               
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