石城橋示倪雁園太史 | ![]() |
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清・王士禛 |
昔作秦淮客, 朱樓賦洞簫。 白頭故人盡, 重上石城橋。 |
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昔は 秦淮の客と作り,
朱樓に 洞簫に賦す。
白頭 故人 盡き,
重ねて上る石城橋 。
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◎ 私感訳註:
※王士禛:清代の詩人。字は貽上、また子眞。号して漁洋。士禎と名を賜る。1634年(明・崇禎七年)~1711年(洪煕五十年)。
※石城橋示倪雁園太史:石城の橋(石頭城の橋か)で、倪雁園太史に詩を作って示した。 ・石城橋:金陵(現・南京)城外にある橋の名。 ・倪雁園:〔げいがんゑん;Ni2Yan4yuan2○●○〕倪粲(げいさん)のこと。康煕の挙人。倪は姓、雁園は号。 ・太史:官名。天文、暦算をつかさどり、兼ねて、国の歴史をつかさどる。倪粲は検討の官を授けられ、検討の官は翰林院属し、歴史の編纂をつかさどることから、こう呼ぶ。
※昔作秦淮客:昔(の若かった頃)は、(金陵の歓楽街である)秦淮の客となって(みんなとともに遊び)。 ・作:(…と)なる。 ・秦淮:〔しんわい;Qin2huai2○○〕金陵の歓楽街。本来は川の名で、建康(現・南京)の東南にを貫流して長江へ注ぐ古代(秦代)の運河。この金陵(南京)の秦淮河周辺には歓楽街が発展し、妓女も多く、歌舞遊覧の地として発展した。唐・杜牧に『泊秦淮』「煙籠寒水月籠沙,夜泊秦淮近酒家。商女不知亡國恨,隔江猶唱後庭花。」
とあり、唐・劉禹錫に『石頭城』「山圍故國週遭在,潮打空城寂寞回。淮水東邊舊時月,夜深還過女牆來。」
とあり、孫光憲の『後庭花』其二に「石城依舊空江國,故宮春色。七尺靑絲芳草碧,絶世難得。」
とあり、唐・韋莊『金陵圖』「江雨霏霏江草齊,六朝如夢鳥空啼。無情最是臺城柳,依舊烟籠十里堤。」
、とあり、欧陽炯『江城子』「晩日金陵岸草平,落霞明,水無情。六代繁華,暗逐逝波聲,空有姑蘇臺上月,如西子鏡,照江城。」
とあり、南唐後主・李煜の『浪淘沙』に「往事只堪哀,對景難排。秋風庭院蘚侵階。一任珠簾閑不卷,終日誰來。 金鎖已沈埋,壯氣蒿莱。晩涼天靜月華開。想得玉樓瑤殿影,空照秦淮。」
とあり、朱敦儒の『相見歡』に「金陵城上西樓,倚清秋,萬里夕陽垂地、大江流。 中原亂,簪纓散,幾時收?試倩悲風吹涙、過揚州。」
とあり、宋・王安石の『桂枝香』「金陵懷古」に「登臨送目,正故國晩秋,天氣初肅。千里澄江似練,翠峰如簇。歸帆去棹殘陽裡,背西風酒旗斜矗。彩舟雲淡,星河鷺起,畫圖難足。念往昔,繁華競逐。嘆門外樓頭,悲恨相續。千古憑高,對此漫嗟榮辱。六朝舊事隨流水,但寒煙衰草凝綠。至今商女,時時猶唱,後庭遺曲。」
とあり、辛棄疾の『念奴嬌』「登建康賞心亭,呈史留守致道」「我來弔古,上危樓、贏得閒愁千斛。虎踞龍蟠何處是?只有興亡滿目。柳外斜陽,水邊歸鳥,隴上吹喬木。片帆西去,一聲誰噴霜竹?却憶安石風流,東山歳晩,涙落哀箏曲。兒輩功名都付與,長日惟消棋局。寶鏡難尋,碧雲將暮,誰勸杯中綠?江頭風怒,朝來波浪翻屋。」
とあり、明・高啓の『登金陵雨花臺望大江』に「大江來從萬山中,山勢盡與江流東。鍾山如龍獨西上,欲破巨浪乘長風。江山相雄不相讓,形勝爭誇天下壯。秦皇空
此黄金,佳氣葱葱至今王。我懷鬱塞何由開,酒酣走上城南臺。坐覺蒼茫萬古意,遠自荒煙落日之中來。石頭城下濤聲怒,武騎千群誰敢渡。黄旗入洛竟何祥,鐵鎖橫江未爲固。前三國,後六朝,草生宮闕何蕭蕭。英雄乘時務割據,幾度戰血流寒潮。我生幸逢聖人起南國,禍亂初平事休息。從今四海永爲家,不用長江限南北。」
とあり、現代では『知靑之歌』に「藍藍的天上,白雲在飛翔,美麗的揚子江畔是可愛的南京古城,我的家鄕。
,彩虹般的大橋,直上雲霄,橫斷了長江,雄偉的鍾山脚下是我可愛的家鄕 告別了媽媽,再見家鄕,金色的學生時代已轉入了靑春史册,一去不復返。
,未來的道路多麼艱難,曲折又漫長,生活的脚印深淺在偏僻的異鄕。」
とある。
※朱樓賦洞簫:赤く塗られた(美人のいる美しい)たかどので、洞簫(どうしょう≒笛)(の音(ね)にあわせて)詩歌を作り(楽しく過ごしたものだった)。 *「朱樓賦洞簫」と「白頭故人盡」とは、対句(?)ともみられるが、訓読(読み下し)ではそろえるのが難しい。「朱樓」は「在(於)朱樓」の意であるが、「白頭」は主語。また、「朱樓賦洞簫」の意は「朱樓に洞簫に賦す」と読み下せば、「…に…に」と、「に」が重なって苦しい。といって「…に…を」とはしづらい。 ・朱樓:赤く塗られた美人のいる美しいたかどの。朱塗りのうてな。朱閣。 ・賦:〔ふ;fu4●〕詩歌を作る。詩歌をうたう。 ・洞簫:〔どうせう;dong4xiao1●○〕ふえの一種で、単管で尺八に似て、底の突き抜けた(底のない)管楽器の名。
※白頭故人盡:白髪頭になった(今)、古い友人は皆、亡くなり。 ・白頭:しらがあたま。老齢を謂う。 ・故人:昔からの知り合い。古い友人。唐・王維の『入山寄城中故人』に「中歳頗好道,晩家南山陲。興來毎獨往,勝事空自知。行到水窮處,坐看雲起時。偶然値林叟,談笑無還期。」とあり、唐・李白の『送友人』に「青山橫北郭,白水遶東城。此地一爲別,孤蓬萬里征。浮雲遊子意,落日故人情。揮手自茲去, 蕭蕭班馬鳴。」
、同・李白の『黄鶴樓送孟浩然之廣陵』に「故人西辭黄鶴樓,煙花三月下揚州。孤帆遠影碧空盡,惟見長江天際流。」
とある。 ・盡:死に絶える。尽きる。
※重上石城橋:(一人だけになって)再び石城の橋にやって来た。 ・重:再び。かさねて。 ・上:のぼる。行く。到る。「上朱樓」だと「朱樓に上(のぼ)る」がよかろうが、ここは「上石城橋」なので「(石城)橋に上(いた)る」などの方がよかろう。
◎ 構成について
2010.5.27 5.28 5.29完 2012.5.31補 |
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