隱隱江城玉漏催, 勸君須盡掌中杯。 高樓明月笙歌夜, 知是人生第幾回。 |
酒に對 す
隱隱 たる江城 に玉漏 催 し,
君に勸 む須 く盡 くせ掌中 の杯 を。
高樓 明月笙歌 の夜,
知るや是 れ 人生 第幾 回なるぞ。
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◎ 私感訳註:
※張霊:明代の詩人。字は夢晋。呉県の人。
※対酒:酒に向かう。 *人生の時の移ろいの中で、素晴らしい時はどれほどあるのだろうか。今がその機会ならば、今を楽しんでおこうではないか。中唐・白居易の『對酒』第二首に「蝸牛角上爭何事,石火光中寄此身。隨富隨貧且歡樂,不開口笑是癡人。」とあり、『對酒』第四首に「百歳無多時壯健,一春能幾日晴明。相逢且莫推辭醉,聽唱陽關第四聲。」とある。
※隠隠江城玉漏催:ぼんやりとした川沿いの町にも、時間の過ぎ去っていくのにせきたてられる。 *時間は、瞬く間に過ぎ去っていく(ので)。 ・隠隠:〔いんいん;yin3yin3●●〕かすかであるさま。ぼんやりとしたさま。はっきりしないさま。また、うれえるさま。いたむさま。また、さかんなさま。また、車や雷の音のさま。 ・江城:川沿いの都市。 ・玉漏:水時計。玉で飾った宮中の水時計。 ・催:せきたてる。急がせる。催促する。うながす。漢・樂府の『蒿里曲』に「蒿里誰家地,聚斂魂魄無賢愚。鬼伯一何相催促,人命不得少踟蹰。」とある。
※勧君須尽掌中杯:あなたにお勧(すす)めるが、(今)手に取り持った杯(さかづき)を飲み乾そう。 *今、楽しめるうちに楽しんでおこうではないか。 ・勧君:あなたにお勧(すす)める。盛唐・王維の『送元二使安西』に「渭城朝雨浥輕塵,客舎柳色新。勸君更盡一杯酒,西出陽關無故人。」とあり、中唐・李賀の『將進酒』に「琉璃鍾,琥珀濃。小槽酒滴眞珠紅。烹龍炮鳳玉脂泣,羅屏繡幕圍香風。吹龍笛,撃鼉鼓。皓齒歌,細腰舞。況是青春日將暮,桃花亂落如紅雨。勸君終日酩酊醉,酒不到劉伶墳上土。」とあり、唐/蜀・韋莊の『菩薩蠻』其四に「勸君今夜須沈醉,樽前莫話明朝事。珍重主人心,酒深情亦深。須愁春漏短,莫訴金杯滿。遇酒且呵呵,人生能幾何?」とある。 ・須:すべきである。すべからく…べし。 ・尽:つくす。動詞。ここでは、飲み乾すの意で使われる。盛唐・李白の『魯郡東石門送杜二甫』に「醉別復幾日,登臨偏池臺。何時石門路,重有金樽開。秋波落泗水,海色明徂徠。飛蓬各自遠,且盡手中杯。」とあり、盛唐・杜甫の『絶句漫興』に「二月已破三月來,漸老逢春能幾囘。莫思身外無窮事,且盡生前有限杯」とある。 ・掌中杯:手に取り持った杯(さかづき)。前出・李白の『魯郡東石門送杜二甫』に「飛蓬各自遠,且盡手中杯。」とある。
※高楼明月笙歌夜: @:高楼(たかどの)で、 A:明月(澄みわたった月)に、 B:笙歌(笙のふえと歌)がある夜と(、三拍子そろった夜は(滅多にない))。 ・高楼:たかどの。 ・明月:曇りなく澄みわたった月。 ・笙歌:笙のふえと歌。また、笙にあわせて歌う。
※知是人生第幾回:思うに、(三拍子そろったこんなに素晴らしい機会は)この世に生きている間で、何回目になろうか。(滅多にないことだ)。 *人生で、楽しく過ごせる時は、どれほどあることだろうか、滅多にあることではない。 ・知是:思うに。分かる。盛唐・王昌齡の『出塞行』に「白草原頭望京師,黄河水流無盡時。秋天曠野行人絶,馬首東來知是誰。」とあり、唐〜蜀・韋莊の『女冠子』に「昨夜夜半,枕上分明夢見。語多時。依舊桃花面,頻低柳葉眉。 半羞還半喜,欲去又依依。覺來知是夢,不勝悲。」とある。 ・人生:人の一生。生涯。この世に生きている間。また、人がこの世で生きていく。人が生まれて、この世に生きている。ここは、前者の意。魏・曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。慨當以慷,憂思難忘。何以解憂,唯有杜康。」とあり、東晋・陶潛の『己酉歳九月九日』に「靡靡秋已夕,淒淒風露交。蔓草不復榮,園木空自凋。清氣澄餘滓,杳然天界高。哀蝉無留響,叢雁鳴雲霄。萬化相尋繹,人生豈不勞。從古皆有沒,念之中心焦。何以稱我情,濁酒且自陶。千載非所知,聊以永今朝。」とあり、『古詩十九首』之十三に「驅車上東門,遙望郭北墓。白楊何蕭蕭,松柏夾廣路。下有陳死人,杳杳即長暮。潛寐黄泉下,千載永不寤。浩浩陰陽移,年命如朝露。人生忽如寄,壽無金石固。萬歳更相送,賢聖莫能度。服食求~仙,多爲藥所誤。不如飮美酒,被服與紈素。」とあり、盛唐・杜甫の『絶句漫興』に「二月已破三月來,漸老逢春能幾囘。莫思身外無窮事,且盡生前有限杯」とある。 ・第幾回:何回目。唐・崔敏童に『宴城東莊』「一年始有一年春,百歳曾無百歳人。能向花前幾回醉,十千沽酒莫辭貧。」とある。
◎ 構成について
2015.2.12 2.13 2.14 |
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