皇帝の正しくないチェス

2002 全日本選手権参戦記


はじめに

 とうとうこの日がやって来ました。私のこれまでのチェス人生(?)における最大の山場、全日本選手権です。
 この4月に転勤で福岡から名古屋に引っ越しまして、年度末の忙しさと引っ越しのバタバタで、言い訳十分の状態です。全日本の前に名古屋チェスクラブにも顔を出そうと思っていたのですが、それもままなりませんでした(涙)。
 まぁ、それはそれとして、とにかく3つの目標を立てました。

・全敗だけはヤダ。
・やっぱり1勝はしたい。
・できれば最下位にはなりたくない。

 笑われるような目標ですが、これでもマジ本気マジ本気マジ本気です。はてさて・・・。

 で、棋譜ですが、全局をこの場で公開します。JCA事業部の許可も取りました。
 最終的には、全ての棋譜に最低限の解説を入れるつもりです。解説はフリッツ君(ver. 5.32)の助けを借りて、あとは独断と偏見になりますが。
 まぁ、全日本選手権初出場の人間がどのようなチェスを指しているのか、という観点で楽しんで下さい。ヒドイ手もいっぱいあるので、笑いのネタには事欠きません(自爆)。

 ところで私のレートですが、福岡と大分での選手権の結果による上昇と、レート改定で、選手権出場時点で1575。出場選手中下から2番目でした。

初日・・・4月29日

 独りぼっちで出場となれば、もう泣きそうだとは思うのですが、どたんばの関西選手権でいるか師匠が権利を取ってくれたのは有り難い限りでした。
 ネット上では馴染みの千歳人と、クラウンオーナーとは初顔合わせながらも、仲間がいるというのは心強いですね。

 上級者の方々にもお知り合いはいるのですが、舞台が舞台ですから気軽に声もかけられない小心者の私。隅っこでおとなしくしていました。

 で、全日本選手権の出場者は31名。単純に考えても、1人余るわけです。
 実際には事前にbye(不戦で引き分け扱い)を申し込んでいる人もいるわけですが、基本的には最下位の人が強制的にbyeにされてしまうわけです。
 私のレートは下から2番目。1Rは最下位レートのクラウンオーナーがbyeとなりましたが、私も「いつbyeになるのか!?」ということが頭をよぎりました(笑)。

・1R vsM氏 (レート1809) 私の黒番
    棋譜は→こちら

・2R vsK氏(つまるところは、いるか師匠) (レート1847) 私の黒番
    棋譜は→こちら

 1敗1分とはいえ、初日から無事に0.5Pを獲得しました。滑り出しとしては上々、とりあえず全敗を逃れて大満足!贅沢は言いませんっ。

 いるか師匠は、口では「引き分けでも良いよ」などといつも言うのですが、時計を押した途端に人格が変わるので、容赦ありません(涙)。

 対局後は、いるか師匠と飲みながら反省会。勝った方のオゴリです。
 もう一つ、明日対戦があるであろうNさんを想定して、泥縄のカロカン対策講座が行われたのですが・・・。

 

2日目・・・4月30日

 おそらくは負けた瞬間にbyeとなるであろう、「個人的崖っぷち(?)」にまたもや追い込まれた2日目です。
 もう少しはbye無しで粘りたい(笑)!

 そして、3Rは前日の泥縄講座が実を結ぶか!?お相手は、想定通りの私が白番でのNさんです。

 

・3R vsN氏 (レート1807) 私の白番
    棋譜は→こちら

 この3Rを負けてしまい、4Rはbye。ダメじゃん(笑)。

 仕方がないので4Rはのんびりと観戦。対局開始前に、hiyagon先生の視界の中で妙な行動を取る、という計画を立てたのですが、本人の「お願いですからやめてください」との懇願(?)もあり、おとなしく会場内を散策(?)しておりました。

 実は3R終了までで、ちとせが3連勝。この時点で単独トップに立ち、「21世紀のチェス界はちとせのものか!?」といきり立ったのですが、世の中そうはうまくいかず、4Rで負かされてしまいました。

 この日の夜は、いるか師匠、ちとせ、私の3人で、いきつけの(京急蒲田駅前に「いきつけ」が出来るようではシマイだ)飲み屋へ。ビールがいろいろあって嬉しいのよね。

3日目・・・5月1日

 もうbyeは無いということで、連戦続きです。どうせなら疲れてくる4日目くらいにbyeが欲しかったですね(笑)。

 

・5R vsO君 (レート1780) 私の黒番
    棋譜は→こちら

・6R vsN女史 (レート1840) 私の白番
    棋譜は→こちら

 6Rで念願の初勝利なのですが、対局前にいるか師匠によるカロカン講座(というよりも、途中で定跡とは違う手を指すNさん対策)をみっちりとやりました(笑)。
 実はいるか師匠とN女史は3Rで対戦しており、いるか師匠のナイト・サクリファイスは不発に終わってしまい(結果はいるか師匠が勝ちましたが)、私にそのナイト・サクリファイスを再現、成功させよという指令が与えられていたわけです。
 局後の話では、Nさんもその様子を見たらしく、あえてこちらの対策に乗っかったとのことで、いるか師匠と私、二人で謝りました(苦笑)。

 この日の夜は、いるか師匠、クラウンオーナーと3人でとんかつ屋へ。といっても、必ず生ビールははずせないんですが・・・。

 

4日目・・・5月2日

 4日目ともなると、不調のレート上位者が下位者をイジメにやってきます。
 対戦相手が発表されただけで、もう「うげ〜っ」という感じですね。ま、全日本選手権という舞台なのですから、上位者との対戦なんぞは当たり前だと言えば当たり前で、「けたぐりの一発もかましてやるぜ!」くらいの気合いも必要なんですが・・・。

・7R vsL氏 (レート1939) 私の白番
    棋譜は→こちら

・8R vsT氏 (レート1993) 私の黒番
    棋譜は→こちら

 中盤で互角の局面であっても、それを維持できないのが、実力の差。何よりもエンドゲームの知識の無さが、中盤以降の指し回しに影響を与えます・・・(涙)。
 この日の2局はまさにそんな感じ。ドローにできるものはドローにしなきゃねぇ・・・。

 この日の夜は、別件の飲み会がありました。結局、大会期間中は毎日酒を飲んでいるわけですね(自爆)。

5日目・・・5月3日

 この日は個人的山場でした。すなわち「最下位争い」という、優勝争いとは別次元ながらもに実に緊迫した対局です。

 密かに5日目に対戦したこのお二人には負けられないという目標というか誓いというか遠い(?)というか、まぁそんなことを考えておりましたので、気合いは十分でした。

・9R vsH君 (レート1673) 私の黒番
    棋譜は→こちら

・10R vsH氏 (レート1698) 私の白番
    棋譜は→こちら

 結果は1勝1敗と、山場を無事に乗り越えました(^^)v。

 9Rでは、かなり込み入った局面を迎えまして、必死に読みまくりました(1手の為に20分使えるようなゲームってなかなかないね)。途中、キリキリと胃が痛み出し、考え過ぎでの胃痛なんぞは初体験となりました。

 続く10Rもかなり難解なゲームとなり、胃痛と頭痛に(マジ!)悩まされながらの対局となりました。

 そんな経験も、良い結果がついてきたからこそですね(苦笑)。

 この日は、いるか師匠、クラウンオーナー、ちとせ、私のyahoo軍団に加え、ブラジル出身のFさんを加えて5人で飲み会でした。

 

6日目・・・5月4日

・11R vsO氏 (レート1979) 私の白番
    棋譜は→こちら

・12R vsY氏(つまりは、クラウンオーナー) (レート1507仮) 私の黒番
    棋譜は→こちら

 レート順位でいけば必ずや当たるであろう、クラウンオーナー戦でしたが、お互いに身体ともにボロボロの状態。ヒドイチェスを指してしまいました。恥ずかしい(笑)。

 この日の対局後には、hiyagon先生相手に、9Rの棋譜の自慢。「この黒番26手目に、『!』はいくつ付ければ良いのか?」という私のクダラナイ質問に、懇切丁寧に対応してもらいました(笑)。
 「確かに、いい手ですねぇ」とhiyagon先生が誉めてくれた横から、今回の全日本選手権参加者中最高レートのM君が登場。ちなみにhiyagon先生は2位。僕は30位(それは、どうでもいい)。
 そのまま「本当にこの黒の26手目で黒の勝ちは決定的なのか?」という話の展開になり、その局面からhiyagon先生vsM君の番外頂上決戦が始まるという、謎の盛り上がりを見せました。
 これには横から見ていた私も感動モノで、とても面白いものでした。

 この後は、学生トップ軍団と、yahoo軍団とで餃子の王将に。支払いは社会人=yahoo軍団持ちです。学生の皆さん、この恩を忘れないように(笑)。

最終日・・・5月5日

 7日間にわたる全日本選手権もいよいよ最終日です。できれば有終の美を飾りたいものですが・・・。

・13R vsT君 (レート1692) 私の白番
    棋譜は→こちら

 最終局、勝つことは出来ませんでしたが、なんとか7日間の全日本選手権を乗り切り、とりあえずの充実感を感じることが出来ました。

 優勝者はベテラン権田源太郎八段で、通算12回目の日本チャンピオンとなりました。おめでとうございます。
 権田八段は全日本選手権に先立って、「挑戦するチェス」という本を出版されており、二重の喜びといったところでしょうか。

 実は、この前日に「挑戦するチェス」に、直筆サインを書いてもらっていたのですが、ずうずうしいのが売りの私は、「すいません、『2002 全日本チャンピオン』と書き足してくれませんか?」とおねだりしました(笑)。
 「えーっ、恥ずかしいなぁ」という権田八段ですが、「でも、高く売れるかも」とまんざらでも無い様子でした。
 この私の自慢話を聞いた、福岡のM女史(ゴールデンオープン3日コースに参加)も「わたしも、書き足してもらうーっ!」と対抗心むき出しで書き足してもらっていました(笑)。

 ところでいるか師匠は、最終局を勝って7.5P!国際大会出場選考基準ノルマを達成しました。さすがです!師匠!!

 表彰式ではアルゼンチンワインでの乾杯もありましたが、飲み足りない我々は勿論打ち上げに直行。上級者の方々には恐れ多くて合流できないので、いるか師匠、クラウンオーナー、ゴールデンオープン1日コースに参加のJony、柏のベテランryohma59さん(上級者!)、それに私の合計5人で飲みました。ちとせが前日夜に北海道に帰ってしまったのが残念ですが、素晴らしきyahoo軍団ですね(笑)。
 途中、ryohma59さんが潰れかかるという一幕もありました(笑)が、チェスの上達について、普及について、インターネットについて、いろんな話をしました。

 特にJony君は、全日本選手権出場者4人に囲まれ、チェスへの心意気が燃え上がったようです。せっかくなので、「Jonyのチェス日記」も見てね、ブワ〜ッと燃え上がっているから。勿論、大分チェスクラブのHPから訪問して下さい。

おわりに

 ということで、結果は3勝7敗2分1byeで4.5P。31人中27位で、当初の目的を全て達しました(ブラボー!)。
 7日間の真剣勝負は、とても苦しく、また楽しい全日本選手権でした。

 とりあえず、来年の全日本選手権までは、「全日本ランキング27位」を自称することにしました(とりあえず、嘘ではないような)。

 大会期間中に、事務局の渡井さんから「来年も出られると良いですね」と言葉をかけていただきましたが、まさにという感じですね。
 こんな緊張感を味わえる機会なんてなかなかありませんよ。来年も全日本選手権出場に向けて頑張るぞ!という気になりました。次の目標は「全日本ランキング20位以内」かな(調子に乗りすぎ)。

 さて、今回の多くの敗戦局は、エンドゲームや、その直前に間違えることが多かったと感じています(その一方でヘボ手も多かったですが・笑)。つまりは、とうとうエンドゲームの勉強する時期が来たと感じました。
 エンドゲームの知識があれば、ミドルゲームで様々なプランも考えられるというものです。今はメイトしか考えていないもんなぁ(涙)。

 このような明確な目標も見つかったことも併せて、実りの多い全日本選手権でした。今後は名古屋チェスクラブでビシビシと鍛えてもらうこととしましょう。