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住いを建てるときにはいろいろな法律が絡んできます。
ここでは住まいを建てるにあたって、知っておきたい各種法律についてご説明いたします。
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■建築基準法について
住いを建てるにあたって、一番大事な法律が建築基準法です。この建築基準法は大きく二つに分けられます。ひとつは前半の19〜41条までの単体規定と、もうひとつは後半の42条〜68条までの集団規定です。単体規定とは個々の建物についての安全、衛生、防災、非難などに関する規定で全国一律に適用されます。これらは政令に具体的な技術基準が明記されています。一方、集団規定とはそれら個々の建物が集まり都市を形成するときに定められた法律で道路や用途、規模、形態、防火、美観などに関する規定であり、都市計画区域内のみに適用されます。
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■採光について(建築基準法28条1項、施工令19条3項)
住宅の居室にはその床面積の1/7以上の面積の採光上有効な窓が必要です。たとえば居室の床面積が6帖間であればその床面積は約10uですので、その1/7の1.43u以上の面積を持つ窓が必要です。窓の形態は必ずしも開閉できる必要はなく、はめ殺しでもかまいません。また、天窓はその面積の3倍を有効採光面積とみなします。
なお、基準法で居室とは人が生活するうえで継続して使用する部屋のことをさし、玄関や便所、浴室、洗面所、納戸などは居室には含まれません。よって、そこには窓を設ける必要もありません。また、全ての窓が採光上有効かといいますと、そうではなく、境界線からの距離と軒先からの高さによる計算式により採光上有効な窓の面積が決まります。マンションなどで一見、窓もあり居室のようでありながら、図面上ではサービスルームなどと称されている部屋は、実はこの採光上有効な窓面積が足らず、居室として表記できないからです。
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■換気について(建築基準法28条2項、施工令20条2項)
住宅の居室にはその床面積の1/20以上の換気のための窓を設ける必要があります。
たとえば居室の床面積が6帖間であればその床面積は約10uですのでその1/20の0.5u以上の換気上有効な面積を持つ窓が必要です。換気のための窓ですので当然、開閉できなければなりません。回転窓や滑り出し窓はその全面積を有効とし、引き違い窓はその面積の半分を有効とし、はめ殺し窓であれば有効部分はなしと扱います。この換気上、有効な面積が床面積の1/20未満であれば別途、換気設備を設ける必要があります。
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■天井の高さ(施行令21)
住宅の居室の天井高は2.1メートル以上にしなければなりません。船底天井など一部屋で天井の高さが異なるときはその部屋の容積を床面積で割った値をその部屋の平均の天井高さとします。
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■床高(施行令22の1号)
木造住宅における、1階の床の高さは湿気防止のため地盤面から45センチ以上にしなければなりません。ただし地面にコンクリートや防湿フィルムを敷き詰めればこの限りではありません。
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■床下換気口(施行令22の2号)
木造住宅における、外壁の床下部分には壁の長さ5メ−トル以内ごとに面積300p以上の換気口を設けなければなりません。最近は基礎パッキン工法と呼び、柱の直下の土台下に2センチ程度のパッキンを敷き、その間を換気口とする方法が主流となっています。この方法ですと基礎に換気口を設ける必要がないため、基礎強度も弱くなりません。
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■地階の居室について(建築基準法29条、令22条の2)
地下室は全体の床面積の1/3以下であれば容積率に含まなくてもよいことになっています。
このため容積率制限の厳しい地域では地下室は有効な建築手段です。ただし、地下に居室を設ける場合には、開口部の前にから掘りを設ける、換気設備を設ける、湿度を調節する設備を設ける、等のいずれかを設けなければなりません。
ちなみに地下室とはその部屋の天井高の1/3以上が地盤面下にあるものを指します。
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■階段について(建築基準法2条5号、令23条〜25条、令120条〜124条)
住宅における階段は、幅員75p以上、ふみ面は15p以上、蹴上げ (1段の高さ)は23p以下と定められています。また手摺の設置も義務付けられています。
以上、単体規定について、かいつまんでご説明しましたが、これらは最低限の規準であると言うことが明記されています。
次に個々の建物が集まったときの集団規定についてご説明いたします。
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■市街化区域(都市計画法7条)
市街化区域とは すでに市街を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域のことをよび、家を建てられる地域のことです。反対に市街化を抑制する地域を市街化調整区域とよび原則として家を建てることができません。
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■用途地域について(都市計画法8条)
市街化区域はさらに第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地と12地域に細かく細分化されています。これを用途地域と呼び、それぞれに建てることのできる建物の用途や大きさ、高さなどが制限されています。ちなみに住宅は工業専用地域には原則として建てられません。
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上記の地図からご自分の敷地がどの用途地域に属し、許容建ぺい率・容積率、北側の高さ制限、防火地域の適用などがわかります。
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■道路について(建築基準法42条)
建物を建てる敷地は4メートル以上の道路に2メートル以上接道していなければなりません。それでは敷地の前面の道路が4メートル未満のときには家を建てることはできないのでしょうか。昔は6尺道路(幅員1.8m)や9尺道路(幅員2.7m)と呼ばれた4m未満の道路が多かったのですが、今日これらの幅員の道路では、消防車や救急車などの緊急車両や日常不可欠なゴミ収集車の進入もままなりません。そのため、これらの道路は将来において積極的に4m以上の幅員に広げる必要があります。このような幅員4m未満の道路を建築基準法では42条2項道路と呼び、都市計画地図では青色に塗られ一般の道路とは区分けされています。敷地の前面の道路が4m以下のこの2項道路に認定されていれば、道路と敷地の境界は現在の位置ではなく道路の中心線から2m後退した部分を敷地境界とみなします。この後退線のことをセットバックと呼び、後退した面積は敷地の面積に参入することができません。
相対する敷地がそれぞれ建替え時に中心から2mずつセットバックすれば将来的にその道路は4mの幅員を確保することができるのです。この道路の中心線から2m以内にある部分は敷地としてみなされず建物はもちろん塀などの工作物も築造することはできません。
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■建ぺい率・容積率について(建築基準法52条、53条)
細分化された用途地域ごとに建ぺい率、容積率が定められています。
建ぺい率とは敷地の面積に対する建築面積の割合のことで、容積率とは敷地の面積に対する各階の床面積の合計(延床面積)の割合のことです。
それぞれ定められた建ぺい率、容積率を超えての規模の建物は建てることができません。
ちなみに当社付近の用途地域の区分地図をみますと下記のように表記されています。
この中の丸に囲まれた中央が用途地域の種類、下段の数字が許容建ぺい率、上段の数字が許容容積率を示します。
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建築面積とは建物を上空から見たときの水平投影面積をいい、建物の最大外周面積を指します。柱があって屋根が乗っていれば壁がなくても建築面積に加算されます。また、はね出し(柱がなく壁からでている)のバルコニーや屋根の軒などで1メートルを超える部分も建築面積に参入されます。この建築面積を敷地面積で割った百分率を建ぺい率と呼び、用途地域ごとに定められた最大建ぺい率以内でなくてはなりません。角地において行政庁が定めた敷地はすみ切り等を設けることにより建ぺい率が1割増となります。
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一方、床面積とは壁に囲まれた建物内部の面積のことで各階ごとに計算しそれぞれの合計値を敷地面積で割った百分率が最大容積率以下でなければなりません。ただし用途地域によって定められた容積率も(法廷容積率と呼びます)敷地が面する全面道路が12メ−トル未満であればその道路の幅員によって、住居系では全面道路幅員×0.4、商業系では全面道路幅員×0.6を別途道路容積率と称し、法廷容積率か道路容積率のどちらか少ない数値をその当地の容積率として採用いたします。
なお、自動車車庫や地下室などは一定の規模以内は容積率に参入しないでもよいことになっています。(自動車車庫ではその床面積と建物延床面積の合計値の1/5までが、地下においては1/3までが延べ面積に参入しなくても良いことになっています)
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■防火地域について
都市計画法においては用途地域の他に防火による観点からも地域を区分しています。
駅周辺や幹線道路の周辺など建物が密集している地域は、ひとたび火災が起こるとその周辺に及ぼす影響が大きいため、これらの地域を防火地域と呼び、建物の耐火性能も最も厳しいものが要求されます。さきほどの用途地図上では赤く塗られている部分です。また、その地域に隣接し、ある程度の耐火性を必要する地域を準防火地域と呼びます。上記の地図においては紫色で塗り分けられている部分です。それ以外の地域を防火指定なしと呼び、建物に耐火性能は要求しません。地図上も白塗りとなっています。
防火地域、準防火地域での建物の耐火性能は下記のように定められています。
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地域
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階数
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延べ面積100uを超えるもの
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延べ面積100u以下
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防火地域
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3階以上
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耐火建築物
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耐火建築物
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2階以下
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耐火建築物
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耐火建築物又は準耐火建築物
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準防火地域
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階数 |
延べ面積500u以下
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延べ面積500平米を超え1500u以下
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延べ面積1500平米を超えるもの
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4階以上
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耐火建築物
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耐火建築物
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耐火建築物
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3階
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耐火建築物又は準耐火建築物又は政令136条の2の基準に適合するもの
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耐火建築物又は準耐火建築物
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耐火建築物
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2階以下
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制限なし
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耐火建築物又は準耐火建築物
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耐火建築物
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耐火建築物とは主要構造部を火に強い、耐火構造とした建物で、延焼の恐れのある部分の開口部に防火戸などの防火設備を設けた建物のことです。
準耐火建築物とは耐火建築物に次ぐ耐火性能を持たせた建築物で、延焼の恐れのある部分の開口部に防火戸などの防火設備を設けた建物のことです。
ちなみに主要構造部とは壁、柱、梁、屋根、階段などをさします。
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■高さ制限について
用途地域により建物の高さも制限されています。
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1.絶対高さ (建築基準法55条)
第1種・第2種低層住居専用地域では、都市計画により、建築物の高さは原則的に10mまたは12m以下でなければならないと定められています。
2.道路斜線 (建築基準法56条1項1号)
前面道路幅員に対し一定以上の高さの建物が建ちますと、圧迫感があり採光上や通風上においても好ましくありません。そのため敷地の面する前面道路の幅員に比例して建物の高さを制限した法律です。具体的には前面道路幅員からの水平距離の1.25倍(住居系以外では1.5倍)の高さ以内に建物を収めなければなりません。そのため建築物の高さが高くなるほど道路からの後退距離が大きくなり圧迫感を解消します。2003年1月からはこの道路からの高さ制限を採光、通風上同等以上であれば道路斜線からではなく天空率を採用してもよいという規定が定められています。天空率とは天空を平面に水平投影した場合の全天に対する空の面積の割合であり、これがそれぞれのポイントにおいて斜線制限適合建築物の天空率以上となっていれば道路斜線の適用を受けないでよいことになっています。
3. 隣地境界斜線 (建築基準法56条1項2号)
隣地との通風・採光の確保などを目的に、隣地境界線からの距離に応じて、建築物の高さを制限するものです。第1種・第2種低層住居専用地域以外の住居系の用途地域では、隣地境界線からの距離の1.25倍に20mを加えた数値以下としなければなりません。
4. 北側斜線 (建築基準法56条1項3号)
北側隣地での日照を確保するために、北側隣地境界線からの斜線制限により建築物の高さを制限するものです。建築物の各部分の高さは、真北方向の距離の1・25倍に第1種・第2種低層住居専用地域では5m、第1種・第2種中高層住居専用地域では10mを加えた数値以下としなければなりません。なお、横浜市においてはこの北側の高さ制限は別途、条例により制限されていて、もっとも厳しい第1種高度地域においては北側からの水平距離×0.6+5m以内に高さが制限されています。また、北側斜線における北とは真北のことで、磁北とは異なります。(磁石が示す北を磁北と呼び、地球上の真北の方角とは若干異なります。横浜市においては磁北に対して時計回りに約6度5分が真北となっています。ちなみに用途地図や都市計画地図はこの真北を真上に表示しています)
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■日影規制法(建築基準法56条の2)
隣接敷地における日照の確保を目的に、中高層建築物による一定時間(規制値)以上の日影が、一定距離を超える範囲に生じさせないように、建築物の形態を制限する法律です。
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■建築協定について(建築基準法69条)
建築基準法やその他の公法による規制だけでは、よりよい地域環境の形成、保全に不十分であると地域住民が考えたとき、建築物についての必要な基準を土地所有者全員の合意のもとで定められた協定のことで、一般には建物の道路や隣地からの離れを制限しています。
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■民法について
建物は隣地境界線から50センチ以上離すように規定されています(民法234条)
隣地境界線から1m以内に他人の宅地を展望できる窓がある場合目隠しを設ける(民法235条)
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