2003ミステリ&SFベスト

2004.01.01 by SAKATAM


 2003年に読んだ本(再読を除く)の中から、個人的に面白かったもの(国内新刊・海外新刊を3作品ずつ、国内初読・海外初読を5作品ずつ)を挙げておきます。
 題名のリンク先は、もう少し詳しい内容紹介と感想です。

国内新刊
1『忘却の船に流れは光』 田中啓文 『神曲』をモチーフにした黙示録的世界。その奥に隠された想像を絶する秘密。
 田中啓文版『宝石泥棒』にして、持てる資質を存分に発揮した集大成。
2『サイコトパス』 山田正紀 メタフィクション的世界に取り込まれていく“女子高生作家”。
 何とも内容の紹介しづらい、しかしとにかく山田正紀らしい作品。
3『OZの迷宮』 柄刀 一 ユニークな趣向が凝らされた連作短編集。
 “名探偵とは何か?”をテーマとした意欲作。個々の短編もまずまずの出来。
 国内新刊は、かろうじて2桁は読むことができました。とはいえ、そのうち山田正紀・霞流一というお気に入りの作家が3冊ずつを占める偏った状態なのですが……。その中にあって2003年の第1位に輝いたのは、田中啓文の本格的なSF長編。しっかり計算された仕掛けと猥雑なパワーが同居する傑作です。
 なお、次点は霞流一『火の鶏』

海外新刊
1『雷鳴の夜』 R.ファン・ヒューリック <ディー判事シリーズ>。嵐の中の寺院を舞台に起こる怪事件。
 意外な手がかりが秀逸。
2『歌うダイアモンド』 H.マクロイ ミステリからSFまで。幅広い作風が楽しめる短編集。
 いずれも粒揃い。
3『死が招く』 P.アルテ 執筆中の新作と同様の状況で命を落としたミステリ作家。
 いくつか不満はあるものの……。
 3作選び出すのも無理があるくらい、ほとんど読んでいません。

国内初読
1『妖異金瓶梅』 山田風太郎 中国の奇書『金瓶梅』を下敷きにした異色の連作ミステリ。
 特異な舞台と登場人物を見事に生かし切った、巧妙にして壮絶な傑作。
2『おんな牢秘抄』 山田風太郎 多重解決にして連鎖式という、特異な構成の時代ミステリ。
 巧妙な仕掛けに逆転のカタルシス、そして魅力的な登場人物。
3『忍びの卍』 山田風太郎 忍法コンテストに端を発し、史実の裏で繰り広げられる凄絶な死闘。
 練り込まれた忍法、考え抜かれたプロット、そして壮大な“最後の一撃”。
4『饗宴』 柳 広司 古代ギリシアを舞台とした歴史ミステリ。探偵役はソクラテス。
 史実と虚構が巧妙に絡み合い、さらに独特の名探偵像が示される傑作。
5『銀河帝国の弘法も筆の誤り』 田中啓文 人類の支配宙域である<人類圏>を舞台とした、ダジャレSF連作。
 すべてがダジャレに奉仕する、田中啓文にしか書けない空前の怪作。
 2003年は山田風太郎作品をだいぶ読みましたが、さすがに傑作揃いでなかなか絞り込むことができず、第3位まで独占という結果になりました。
 なお、次点は貫井徳郎『プリズム』

海外初読
1『闇よ落ちるなかれ』 L.S.ディ・キャンプ 古代ローマにタイムスリップした男が、20世紀の知識を生かして孤軍奮闘。
 大胆かつ痛快な過去の改変と、全編に漂うユーモラスな雰囲気が魅力の傑作。
2『アデスタを吹く冷たい風』 T.フラナガン 切れ味鋭い作品が並ぶ短編集。
 評判にたがわぬ傑作。
3『囚われの世界』 H.ハリスン 閉ざされた谷で昔ながらの生活を送るアステカ人たち。しかし谷の外には……。
 衝撃とともに明かされる、壮大なスケールの秘密。
4『悪魔の機械』 K.W.ジーター 怪しげなガジェットに彩られた、ヴィクトリア朝の冒険。スチームパンクの快作。
 ユーモラスな主人公と際限ないドタバタ劇とのミスマッチが絶品。
5『最上階の殺人』 A.バークリー 警察の捜査に疑問を抱いたシェリンガム。独自の調査で導き出した結論は……?
 『ジャンピング・ジェニイ』と同様、“異能の名探偵”シェリンガムが大活躍。
 2003年に最も多くの作品を読んだ、いわば激戦区です。その中で栄えある第1位は、ディ・キャンプによるタイムスリップSFの古典的名作。
 なお、次点はプロンジーニ&マルツバーグ『裁くのは誰か?』とB.J.ベイリー『シティ5からの脱出』


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