1980 MCA RecordsCA Records |
クルセイダーズはとんでもない傑作を作ってしまいました。
日影丈吉氏の「吉備津の釜」が、執筆の時神が宿ったとしか考えられないような傑作であるなら、この「Soul Shadows」もまさに神懸った畢生の名曲です。
「IMAGES」あたりから朝もやの立ち込める昧爽のイメージが浮かんでしょうがなかったのですが、文字通り朝のイメージから「Soul Shadows」は始まります。朝まだき霧のなかから現れるジャンレノ主演「レオン」的殺し屋の孤独のブルース。サァ、待ってましたビルウイザースが熱唱するスナイパーブルース。このビルウイザースを起用するというクルセイダーズの抜群のセンス。作曲はジョーサンプル。
ジョーサンプルはここにきて途方も無い相貌を顕わしました。このアルバムほどジョーサンプルのスゴサを目の当たりに見せつけられたものはありません。これまでどうしても寂しい孤独の面影を引きずっているように個人的に思えてしょうがなかったジョーサンプルですが、何の何の、さすがクルセイダーズの牽引者、このアルバムで「孤独」もまた「燃焼する」ことを見事立証してみせましたネ。まるで鍵盤を走るジョーサンプルの指先からめらめらと炎が燃え上がってくるのが見えるよう。
スティックスフーパーもツボを得たタイトなリズムを叩きこみます。ウィルトンフェルダーの必殺技も冴えに冴え、サックス・リボルバーの望遠レンズを通してこちらに標的が絞られ、今まさに心臓が打ち抜かれそうです。
表題作「Rhapsody and Blues」はクルセイダース風究極の男と女のブルース。せつないまでに心を揺さぶるウイルトンフェルダーのソプラノサックスが鳥肌立つほどに良いですヨ。美しくもはかない線香花火のような恋物語。
「Last Call」は海辺をスポーツカーで突っ走るようなドライブの爽快感。群青の空の下、潮の香り漂い、目前に開ける広大な海。ふと「海より発した命ゆえ、ただひたすらに海を見る」という谷川俊太郎の詩の一節が思い浮かびました。
そしてエンディングは「Sweet Gentle Love」。「本日ご来場の皆様、ご静聴まことにありがとうございました」、勢揃いしたクルセイダーズの面々の雄姿が目に浮かぶよう。心より拍手喝采し大満足の余韻を心底かみしめましょう。
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