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劍客 | |
賈島 |
十年磨一劍,
霜刃未曾試。
今日把似君,
誰爲不平事。
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劍客
十年 一劍を磨くも,
霜刃 未だ曾つて試みず。
今日 把りて君に似さば,
誰か 不平の事を 爲さん。
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◎ 私感註釈
※賈島:中唐の詩人。779年(大暦十四年)〜843年(會昌三年)。字は浪仙。范陽の人。初め、僧侶で無本と号し、後、韓愈に認められて還俗、仕官した。五言律詩にすぐれる。
※劍客:〔けんかく;jian4ke4●●〕剣の達人。剣術使い。剣士。この詩、作者は剣のことを謂いたいのではなく、自分が努力を積み重ねて築き上げた力の顕現する場が無いことを歎いて詠ったものだろう。ここでは、実際に剣を手に持っているものとして解してゆく。
『古文眞寶』
※十年磨一劍:十年の間、一振りの剣を磨いてきたが。(十年間、わたしは刻苦奮励してきたが。) *「十年磨一劍」で、十年の間、一振りの剣を磨く。長い間、剣技を練る意の成語。常に刻苦奮励して努力を怠らなかったことの意。後世、日本の頼山陽は『題不識庵撃機山圖』で、「鞭聲肅肅夜過河,曉見千兵擁大牙。遺恨十年磨一劍,流星光底エ長蛇。」と使う。 ・一劍:作者の能力、人格の譬喩でもある。
※霜刃未曾試:白く光ったするどい刃(やいば)は、まだ実際には試(ため)したことがない。(わたしの素晴らしい能力をまだ実際に試(ため)す機会がない。) ・霜刃:〔さうじん;shuang1ren4◎●〕白く光ったするどい刃(やいば)。 ・未曾:まだ…していない。いまだかつて…したことがない。 ・試:ためす。
※今日把似君:(練成)した今日、(その剣を)手に持って貴君に示すが。その実力の一端をお見せすれば。(或いは)(その剣を)手に持って貴君にたてまつろう。(今日、わたしの実力の一端をお見せすれば。) ・今日:(練成)したきょうび。 ・把:〔は;ba3●〕取る。手に持つ。にぎる。つかむ。 ・似:〔じ(し);si4(shi4)●〕示す。≒示〔じ(し);shi4●〕。また、たてまつる。ささげる。この語のとりようで、この詩の意味が変わってくる。 ・君:あなた。貴君。
※誰爲不平事:一体だれが不満に基づく仕打ちをしようか(だれもできまい)。(だれもわたしに文句は出せまい。) ・誰爲:だれが…をしようか(だれもしない)。『古文眞寶』(写真:右)では「なんぞ…あらん」と読んでいる。 ・不平:不平。不満。 ・不平事:不満に基づく仕打ち。邪魔立て。
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◎ 構成について
韻式は、「aa」。韻脚は「試事」で、平水韻去声四寘。この作品の平仄は、次の通り。
●○○●●,
○●●○●。(韻)
○●●●○,
○○●○●。(韻)
2009.3. 9 3.10 3.12 3.14完 4. 2版 |
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