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征人怨 | |
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唐・柳中庸 |
歳歳金河復玉關,
朝朝馬策與刀環。
三春白雪歸青冢,
萬里黄河遶黑山。
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征人怨
歳歳 金河に復 た 玉關に,
朝朝 馬策 と刀環 と。
三春の白雪 は青冢 に歸り,
萬里 の黄河 は黑山 を遶 る。
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◎ 私感註釈
※柳中庸:盛唐末の詩人。名は淡。字が中庸。?~775年頃。河東(現・山西省永済))の人。柳宗元の一族。大暦年間の進士で、官は鴻府戸曹になるが就かず。盧綸や李端の詩友。
※征人怨:出征する人のうらみ。 ・征人:出征する人。また、旅人。ここでは、「朝朝馬策与刀環」の句から考えて、前者の意になる。 ・怨:(個人的なな)うらみ。 *詩中の地名は、全て現・内蒙古自治区の呼和浩特(フホホト)市附近にある。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)42-43ページ「唐 関内道北部」にある。この詩は全句が対で構成されている:
歳歳金河復玉關, 朝朝馬策與刀環。 三春白雪歸青冢, 萬里黄河遶黑山。
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※歳歳金河復玉関:毎年、金河(=現・呼和浩特(フホホト))で、また、玉門関で(軍務に就き)。 ・歳歳:毎年。初唐・劉希夷に『白頭吟(代悲白頭翁)』「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,清歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫神仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」とあり、唐・懷濬の『上歸州刺史代通状』に「家在閩山西復西,其中歳歳有鶯啼。如今不在鶯啼處,鶯在舊時啼處啼。」
とある。 ・金河:地名。唐代の金河県で、現・内蒙古自治区の呼和浩特(フホホト)市の南。大黒河。また、河の名称で、呼和浩特近辺を流れる黄河の支流。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)42-43ページ「唐 関内道北部」にある。 ・復:また。ふたたび。前出・懷濬の『上歸州刺史代通状』に「家在閩山西復西,其中歳歳有鶯啼。」
とある。 ・玉関:玉門関のこと。現・甘粛省敦煌市にある。
※朝朝馬策与刀環:毎日、乗馬用の鞭と刀の柄(つか)に銅の環(わ)がある戦闘用の刀(とを携(たずさ)えている)。 ・朝朝:毎朝。毎日。 ・馬策:乗馬用の鞭。 ・与:…と。…と(…と(を))。英語での and の意の「と」。 ・刀環:刀の柄(つか)に銅の環(わ)がある刀のことで、ここでは、戦闘用の武器の意で使われる。
※三春白雪帰青冢:春の白い雪は、王昭君の墓所である青い草の生えた塚に残って。 ・三春:春の三か月。陰暦の孟春(正月)・仲春(二月)(=初春・仲春・晩春)を謂う。また、三度春を過ごす意で、三か年のこと。ここは、前者の意。中唐・孟郊の『遊子吟』に「慈母手中線,遊子身上衣。臨行密密縫,意恐遲遲歸。誰言寸草心,報得三春暉。」とある。 ・三春白雪:春の雪。淡雪。≒「陽春白雪」。「陽春白雪」としないで「三春白雪」としたのは、「万里」の対とするためには「三春」とする必要があったため。 ・青冢:〔せいちょう;qing1zhong3○●〕青い草の生えている塚。王昭君の陵墓をいう。王昭君の墓所には、冬でも青々と草が生えていたと云う故事に因る。現・呼和浩特(フホホト)沙爾泌間の呼和浩特の南九キロメートルの大黒河の畔にある。盛唐・杜甫の『詠懷古跡』に「羣山萬壑赴荊門,生長明妃尚有邨。一去紫臺連朔漠,獨留青冢向黄昏。畫圖省識春風面,環珮空歸月夜魂。千載琵琶作胡語,分明怨恨曲中論。」
とある。
※万里黄河遶黒山:遥々(はるばる)と流れてくる黄河は、黒山を迂回していく。 ・黄河:華北を流れる大河。漢民族の北方防禦線としての大河で、長城とともに、漢民族の対西北方の異民族侵入を阻止する防波堤・天然の塹壕(天塹)の役を果たしていた。水源は、紫山(悶摩黎山)(現・青海省巴顏喀拉(バヤンカラ)山脈)西北部で、渭水、汾水、洛河などの支流を合わせて渤海湾に注ぐ。盛唐・高適の『九曲詞』に「鐵騎橫行鐵嶺頭,西看邏逤取封侯。靑海只今將飲馬,黄河不用更防秋。」とある。 ・遶:めぐる。めぐらす。回り道をする。迂回する。まわりを回る。 ・黑山:現・内蒙古自治区の呼和浩特(フホホト)市の東南にある。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「關環山」で、平水韻上平十五刪。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○●●◎○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2013.5.31 6. 1 6. 2 |
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