王建　宮中調笑　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩wangjian

　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　王建　

宮中調笑

團扇，
團扇，
美人病來遮面。
玉顏憔悴三年，
誰複商量管弦？
弦管，
弦管，
春草昭陽路斷。

******

宮中調笑
　　　　　　　　　　　　　　　　　

團扇，
團扇，
美人　病みてより　來（このか）た　　面（おもて）を遮る。
玉顏　憔悴して　　三年，
誰（たれ）か　複（ま）た　　管弦を　商量せん？
弦管，
弦管，
春草　　昭陽の　路を　斷つ。

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◎　私感註釈

※宮中調笑：詞牌の一で、古調笑のこと。調笑令と同一ではない。この作品では第三句が異なっている。詳しくは下記の「構成について」を参照。、同様の趣のものに、漢・班婕妤の『怨詩』「新裂齊紈素，皎潔如霜雪。裁爲合歡扇，團團似明月。出入君懷袖，動搖微風發。常恐秋節至，涼風奪炎熱。棄捐篋笥中，恩情中道絶。」

や、謝

の『玉階怨』「夕殿下珠簾，流螢飛復息。長夜縫羅衣，思君此何極。」

や、唐・李白の『怨情』「美人捲珠簾，深坐嚬蛾眉。但見涙痕濕，不知心恨誰。」

などがある。

※王建：唐代の詩人。字は仲初。楽府詩や宮詞に長じている。

※團扇：うちわ。これで顔を覆っている。この句は、繰り返すことになっている。

※美人：漢代の女官の名称。また、美女。ここでは、皇帝の寵愛を失った女性の哀しみをうたっている。
※病來：やまいになってから。　・來：時間的に…以後。このかた。
※遮面：顔を隠す。。
※玉顏：ここは、美しい女性の顔のこと。白居易の「長恨歌」にも「馬嵬坡下泥土中，不見玉顏空死處」

に同じ。
※憔悴：やつれる。
※誰複：だれがまた。だれも…しない。
※商量：はかり考える。協議する。
※管弦：管楽器と弦楽器。音楽の演奏を謂う。ここの「管弦」の前後を顛倒させ、次の句で「弦管」として使う。
※弦管：弦楽器と管楽器。
※春草：春の草（が生えてきて、通うことも無くなった路に茂って、塞いでしまった）。
※昭陽：漢の成帝が建てた宮殿。昭陽殿。白居易の「長恨歌」に「昭陽殿裡恩愛絶，蓬莱宮中日月長。」

とある。
※路斷：皇帝の愛情も失せて通うことも無くなった、ということ。

◎　句の大意

團扇：うちわよ、
團扇：うちわよ
美人病來遮面：美人は　病んでからは（うちわで）顔をさえぎるようになった。
玉顏憔悴三年：美女の顔はやつれて（交情が無くなって）、もう三年になる。
誰複商量管弦：一体誰が管絃の音楽のことを図ったろうか。
弦管：弦楽器と管楽器、
弦管：弦楽器と管楽器、
春草昭陽路斷：春の草が、昭陽殿の通うことも無くなった路に茂って、塞いでしまった。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　***********

◎　構成について

　　単調。三十二字。換韻。調笑の韻式は「ａａａＢＢｃｃｃ」。韻脚は「扇扇面」は第七部去声十七霰（面扇）。「年弦」は第七部平声一先（弦年）。「管管斷」は第七部上声十四旱（管斷）。なお「断」は現代語では去声。この作品では、同一韻部の中での換韻となって、韻式は「aaaAAaaa」となっている。この作品と同一の韻式は、同じく王建の「宮中調笑」（羅袖）がそうである。第三句の平仄が調笑令と異なっている。

○●，（ａ韻）
○●，（ａ韻）ｒ（畳句。前の句を繰り返す）

○

●。（ａ韻）

●

○，（Ｂ韻）
○●○○●○。（Ｂ韻）
○●，（ｃ韻）顛（前句末の二字を顛倒して使うこと）
○●，（ｃ韻）ｒ（畳句。前の句を繰り返す）

○

●。（ｃ韻）

韻式の「ａａａＢＢｃｃｃ」、つまり、「a仄韻a仄畳韻a仄韻・B平韻B平韻・c仄韻c仄畳韻c仄韻」と換韻する。一番目のa仄韻と三番目のc仄韻は別の韻目にする。
第二句と第七句はそれぞれ別個の畳韻。
第一句と第二句は同一内容で、第一句の繰り返し。第六句と第七句も同一内容で、第六句の繰り返し。但し、第一、二句と第六、七句は異なった表現。
第五句の最後の二字（六字目と七字目）を、第六、七句で上下顛倒させて使う。
次に一

、上記内容について、例示しておく。

　　調笑令　　　韋應物

胡馬，┓
胡馬，┛（畳句：前の繰り返し）
遠放燕支山下。

沙

雪獨嘶，
東望西望路迷。（この句末の二字「路迷」を顛倒させて「迷路」とし、次の句で使う。）
迷路，┓
迷路，┛（畳句：前の繰り返し）
邊草無窮日暮。

（例示の詞には、句中の対が多い点について、他の作品と簡単に見比べたが、韋応物

や戴叔倫、馮延巳

の調笑令には、句中の対が見られるが、王建のこの作品では見られない。）

２００２．８．　９
　　　　　８．１０完
　　　　　８．１１補
２００９．７．１０

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