第2話「Fortunally Encounter」(第1ページ目)
「ふぁぁぁ……もう朝……?」

 颯樹(さき)は、自分の顔に降り注ぐ朝日に起こされた。

元々朝寝坊の気がある颯樹(さき)を、毎日起こすのは面倒だ、と考えた重樹(しげき)が彼女の部屋を

寺の東側にしたため、朝になって日が昇ると自然と颯樹(さき)は目を覚ましてしまうのだ。

「……ううーん、今日もいい日になりそうねー。」

 こうして、いつものように彼女のちょっと退屈だけど平和な一日が始まるはずだった

……今日という日が冒険者デビューという特別な日でなければ。

「……??何か、大事なこと忘れてるような気がするのよね……?」

 颯樹は、ぐしゃぐしゃになっている自分の髪を櫛でとかしながら、

「……って、何で私自分の部屋にいるのよ!!昨日、確か精霊にあって、精霊と戦って、

私が精霊使いになって……って、夢だったのかな……?」

「夢なわけないじゃない。」

「!!!???」

 突然耳元で囁かれた颯樹は、本当に飛び上がった。それはそうだろう。いくら寝ぼけ頭の

人間相手とはいえ、この超至近距離にまで近づいて相手に気配を悟られない、などというのは

すでに人間技ではない。颯樹は、反射的にその場から飛びのいていた。

「だ、誰!?」

「ひっどーい。あたしのこと忘れちゃったの?シルフィーヌよ。シルフィーヌ。まあ、

あなたには『シルフィード』の方が通りがいいんでしょうけど。」

「!!せ、精霊!?」

「そ。重樹(しげき)がね、そろそろ颯樹(さき)ちゃんが目を覚ましてるだろうから

様子を見てきてくれないかって言ってたからね。様子を見にきたってわけ。」

 シルフィードの新しい主人はすでに重樹(しげき)から颯樹(さき)に代わっているはずなのだ。

それでもなおシルフィードが重樹(しげき)の言うことを聞いている、

というその不自然さに颯樹(さき)はまだ気づいていなかった。

「わかったわ。もうちょっとしたら行くってパパに言っておいて。」

「ええ。」

 シルフィードはにこにこしたままそこに立っている。

「??シルフィーヌ?パパのところに行かないの?」

 シルフィードはその笑みをぴくりとも変えずにこう言った。

「重樹(さき)には颯樹(さき)ちゃんをつれて来いって言われてるから。」

「あっ、そう。じゃ、着替えるまで外で待っててね。」

「あら、いいじゃない。女の子同士なんだし。ここで待つわよ。」

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