「そう。よかった。言葉が分かればいい友達になれるわよね。ね?ニンフィ?」
「いい友達ねえ。ニンフィちゃん、言葉喋れないのよ?」 「え!?」 シルフィードの言葉に思わず颯樹(さき)はニンフィの方を見た。 ニンフィは心なしか少し寂しそうな表情をしてそこに浮かんでいた。 ニンフィの体から放たれる光も少し弱くなっている。 「言葉が喋れないってどういうこと……?」 「そんな事どうでもいいじゃない、颯樹(さき)ちゃん。」 シルフィードはそう言って颯樹(さき)の言葉を遮ろうとしたが、 重樹(しげき)はそんなシルフィードを制して、ゆっくりと口を開いた。 「それは私の若き日の罪なんだよ。颯樹(さき)。」 「??それってどういう……。」 「その妖精ニンフィは、元々は生きている本物の妖精だった。 ニンフィがこの世界にやってきて迷子になっている時、 私達はニンフィと出会い、ニンフィを『妖精国』に帰すために冒険をしたのだ。だが……。」 「だが……?」 重樹(しげき)の相貌に刻まれている皺が一瞬濃くなったように颯樹(さき)には思えた。 「失敗した。私達は失敗したのだ!!私はニンフィを『妖精国』に帰すどころか 守る事すらも出来なかった。ニンフィは、そんな非力だった私達を守るために……。」 颯樹(さき)には、その先に続く言葉が容易に想像できた。 「パパ……。」 「ニンフィは死んだ!!私達を守るために!」 重樹(しげき)はまるで自らに言い聞かせるように颯樹(さき)に語る。 まるで自らの過去の罪を心に刻みつけるように。 「そして、その魂が宿っているのがその指輪なのだ。どういう訳なのかは分からないが、 どうやら死者と生者とは会話が出来ないらしい。だから、ニンフィの言葉は我々には分からない。 どうだ、颯樹、納得したか?」 「う、うん……。」 颯樹(さき)は、ばつの悪さを目一杯感じていた。 「ねえ、パパ……。」 颯樹(さき)は、何か言葉を重樹(しげき)にかけてあげたかった。 だが、自らの弱さゆえにニンフィを死なせてしまったという重樹(しげき)の 深い苦悩を目の前にして、まだ世間知らずな颯樹(さき)がどんな言葉をかけられただろう。 結局、颯樹(さき)の言葉の後ろ半分は途切れてしまった。 「ま、あんまりニンフィちゃんはあんまりその事を気にしてないみたいだけどね。」 シルフィードがそっと重樹(しげき)に声をかける。 (8) |