Fortunally Encounter10ページ目
「で、この魔法具、大丈夫なの?ちゃんと使えるの?」

「大丈夫!魔法具はそんな簡単に壊れたりしない!多分……。」

「多分ってねえ……。ま、それはあくまでも力を颯樹(さき)ちゃんに伝える

中継点みたいなものだから。力をうまく使いこなせるかどうかは颯樹(さき)ちゃん次第のはずよ。」

 颯樹(さき)はそのベルトにそっと触れてみた。

「触るのにも勇気がいるわね……。なんか変な匂いするし。」

「この程度の匂いなんて、どうせすぐに気にならなくなるぞ。冒険者になったら

毎日風呂になど入れんのだからな。」

「えーっ!!そ、そんな、なんて不潔なの!?」

「常に危険と隣り合わせの冒険者に不潔もくそもあるか。まあ、あんまり長いこと体を

拭かずにいるとそれはそれで病気の元だからな、たまには体を拭くこともあるが、

下手をすると1ヶ月以上も体を拭けない、なんてこともよくあった。」

「………。」

 あまりにも衝撃的な重樹(しげき)の言葉に颯樹(さき)はただ言葉を失うしかなかった。

「英雄物語なんかでよく言われてる『冒険者』とイメージ全然違うでしょ、颯樹(さき)ちゃん?」

「ま、まあ、お話の中でお風呂のことなんか一度も聞いたことはないけれども……。」

 颯樹(さき)は、自分が今試練の道に立たされていることを強く感じた。

それは、颯樹(さき)にとって、サラマンダーやシルフィードと戦ったときよりも

はるかに辛く苦しい試練になりそうだった。
 

 周囲を人々が忙しそうに行き交う。

 「悪の国」と他の国からは呼ばれるが、そこに住む者がみな悪人なのではない、

というのはこの町の通りを見れば一目でわかった。

「……道がわからない……です……。」

 ノームはただ一人町の真中で立ち尽くしていた。

何年も精珠の中にひきこもっていた間に町の作りもだいぶ変わっていたりしたせいもあって、

ノームはすっかり迷子になってしまっていた。

「……このままじゃ……日が暮れちゃう……。」

 日が暮れるどころか次の日までに帰れるかどうかも怪しかったが、ノームは

あえてそういうことを考えないことにした。

「……うう……確かにこの辺にあったのに……。」

 日紫国首都、東方都市。

重樹や他の冒険者の活躍もあってここしばらく魔物による大きな被害が出ていないせいもあって、

急速な発展を遂げた。いまや世界でも有数の10000人都市としてその名を世界に轟かせている(解説4)。

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