颯樹(さき)には、その石が、そこらで売っている本物の宝石などとはまた違う何か
神秘的な光を秘めているように感じられた。 「!?(気のせいかしら……今、何か光ったように見えたんだけど……)」 「『ニンフィ』。こいつに姿を見せてやってくれ。」 重樹(しげき)が一言声をかけると、突然その石が昼間の太陽にも劣らぬ強烈な閃光を放った! 「きゃあっ!!??」 突然の閃光は容赦なく颯樹(さき)の目を焼く。 閃光の後に颯樹(さき)が目にしたのは、目の前に音もなく浮かぶ人のような姿をした小さな何かだった。 「パパ……。これって一体……?」 「ああ。お前は知らないだろうな。これは、『妖精』と呼ばれた生き物だったものだ。」 「なんかわかりづらい言い方するわね。」 「要するに、昔は本物の『妖精』だったんだが、今は……まあ、言ってみれば『指輪の精』みたいなものかな。」 その人影……その全身はうっすらとした光を放ちつづけている……をよく見ると、 背中に羽らしきものが生えていることに颯樹(さき)は気づいた。 『ニンフィ』と呼ばれた『指輪の精』は、自分を見つめる颯樹(さき)に愛らしい笑みを送る。 「『妖精』って、昔話に出てくるあれ??」 「そう。我々の記憶に残らないはるか古代、この世界が今の姿とは全く違う姿だった時代に、 我々とともに暮らしていたとされる不思議な生き物、それが『妖精』だ。」 「で、でも!!あれはただの作り話だって聞いたわ……。」 神とも言われている「精霊」に付け加わって架空の存在といわれていた「妖精」までもが 目の前に現れたことで、颯樹(さき)の頭は完全に混乱していた。 「まあ、我々がこの世界について知っていることなどほんの少しでしかない、っていうことだな。 昔、誰かが『冒険者の使命は世界に隠されている不思議を見つけ出すことだ』なんて 言ってたような……。」 「『世界に隠されている不思議』ね……へぇ……。」 颯樹(さき)は、自分の「常識」がいかに偏狭で役に立たないものであるかを 思い知らされたような気がしていた。 と同時に、自分もいつかはこういう大発見をしたい、と胸に炎を燃えあがらせていた。 そんな颯樹(さき)の周囲をニンフィがくるくると円を描きながら飛び回る。 「ほう。颯樹(さき)、お前、ニンフィに気に入られたようだな。こいつは気分屋だから 気を損ねると光らなくなってしまうから、気をつけろよ。」 「え?私たちの言葉がわかるの?」 「どうやらこちらの言うことは理解できてるらしいからな。」 (7) |