「まあ、私もここに入るのは久しぶりだからな。お前が知らなくても無理はない。」
颯樹(さき)は、重樹(しげき)の後についてその隠し部屋に入った。 その部屋にはいたるところに鎧やら剣やらといった武器防具が並べられていた。 それらのどれもがうっすらと埃(ほこり)をかぶっている。 封印されていた年月を感じさせる埃(ほこり)だった。 「……これが、パパの使ってた道具かぁ……。」 その一部は颯樹(さき)も見たことがあったが、その全てを目にするのはこれが初めてだった。 「って、まさか、前に見せてもらった剣みたいに、錆びてボロボロのものを押し付ける なんて事はないでしょうね?」 「え!?いや、そうなんだが……。」 「そんなもんもらってどうするっ!!」 再び颯樹(さき)の必殺の右足が繰り出されるが、さすがにこれ以上痛い目にあいたくないらしく、 重樹(しげき)はすんでのところで右足を受け止める。 「だから!!親を蹴るなと言っただろうが!!」 「颯樹(さき)ちゃんって、口より先に手が出るタイプなのね……全く、誰に似たのかしら……?」 シルフィードは並べられた武器防具を懐かしそうな目で見つめながら、ボソッと呟いた。 「とにかく、ここにある品はまあ、超一級ではないかもしれんがそれなりに強力な品物ばかりだ。 きっとお前の身を守ってくれるはずだが、力ある道具はその力ゆえに誤った使い方をすれば 持ち主を滅ぼすこともある、と言うことを肝に銘じておけよ。」 そう重樹(しげき)はいうと、壁にかけられていた一本の剣を手に取り、鞘ごと颯樹(さき)の手に渡した。 「これって、あの錆びた剣じゃないの?」 颯樹は、試しに鞘から剣を引き抜いてみた。 その刀身はやはり赤茶けた錆にびっしりと覆われ、やはり颯樹(さき)にはこの剣が とても実戦で使えるとは思えない。 「……その剣を貸してみろ。『力ある剣』とは一体何なのか、見せてやろう。」 颯樹(さき)は、重樹(しげき)に言われるままその錆びた剣を重樹(しげき)に手渡した。 重樹(しげき)はその剣を正眼に構えると突然体を硬直させ気合を入れ始めた。 その体が緊張のためかわずかに震えてみえる。 「うううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」 重樹(しげき)の気合の声が大きくなるとともにその剣の刀身が不思議な光に包まれ始めた。 颯樹(さき)は、何がなんだかわからず、ただその様子を食い入るように見つめるだけだった。 「はああああああああああっ!!!!!」 ひときわ大きな気合の声が響き渡ると、閃光が走り一瞬颯樹(さき)の目を焼いた。 「うっ!?」 目を開けた颯樹(さき)がそこに見たものは……。
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