Fortunally Encounter3ページ目
 重樹(しげき)は寺の片隅に一人ぼっちで建っている質素な墓の前にたたずんでいた。

その墓にはまだみずみずしいままの花が供えられていた。

「麗王(れいおう・※1)……もうあの子は私の手には負えんよ……。私も年をとったんだな……。」

「えー??あたしたちに比べれば全然マシだと思うけどー?」

 墓の前でしんみりとした気分になっていた重樹のつぶやきをあっさりと中断したのは

シルフィードの高く透き通るような声だった。

「あはははは!!確かに、世界が生まれたときから生きてるルーフィに比べれば

パパの年齢なんてたかが知れてるわね!」

 シルフィードに連れられてきた颯樹(さき)が笑い声を上げる。

「お、颯樹(さき)、起きたのか。って、その『ルーフィ』っていうのは何だ……?」

「だって、『シルフィード』も『シルフィーヌ』も長くていちいち呼ぶのってまどろっこしいじゃない?

だから、私が新しいあだ名をつけてあげたの。ちょっと変だったかしら?」

「あたしは結構気に入ってるけどね。『ルーフィ』って。」

「……そうか。」

 重樹(しげき)はシルフィードと颯樹がすでにやたらと仲がよさそうにしているのを見て、

心の内でため息をついた。

「(……シルフィーヌならひょっとして、とは思ったんだが。やはり、シルフィーヌも

颯樹(さき)の監視役にはなれそうもないな……。)」

 サラマンダーに比べ自由奔放に生きているように見えるシルフィードだったが、

やはり彼女も精霊であるという事実に変わりはない。精霊の掟には逆らえないのだ。

 最も、それ以前の問題として、重樹(しげき)には、シルフィードは颯樹(さき)のことを

監視するどころか逆に煽りそうな気がしていたのだが。

「(まあ、仲がいいことは悪いことじゃない、か……。)」

 重樹(しげき)は、今ははるか遠くにいる自分の仲間達の事に一瞬思いを馳せた。

とても仲のよかった仲間達……いや、重樹(しげき)にとっては唯一の「人間の」親友と

呼べる者達だったが……。

「で、パパ。こんな朝早くから一体何の用なの?」

「え?えーっと、何で呼んだったんだっけか……??」

「まさか、何の用事もないのにこんな朝っぱらから人を呼びつけたんじゃないでしょうね?」

 重樹(しげき)は思わず少し身を引いた。また蹴られてはたまらないとでも思ったのだろう。

「ま、まさか、そんなことあるわけないだろう、はははははは。」

「声に説得力がない!!」

 次の瞬間、再び重樹(しげき)の体は宙に舞った。

「げごぱうはぁぁぁぁぁっ!!??」
 
 

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