「け、剣が!?」
錆に覆われてボロボロだったその剣は、それがまるで嘘だったかのような素晴らしい輝きを放っていた。 「すごーい!!パパ、これならいつでも鍛冶屋さんになれるわね!!」 「って、驚き方が微妙にずれてないか!?」 思わず脱力する重樹(しげき)を尻目に、シルフィードがぼそっと呟く。 「……なんか、ホントに颯樹(さき)ちゃんって母親に似てるわねー。」 「……ああー、もういい!!とにかく、この剣ならば大抵の怪物には立ち向かえるはずだ。 あとはお前の腕次第、といったところだろう。だが、くれぐれも剣の力に溺れるなよ。 剣を振るうのは人間だが、剣に振りまわされるようでは人間とは言えないからな。」 重樹(しげき)は不安そうな目で颯樹(さき)を見つめた。 「剣に振りまわされないように、ね……。よく分からないけど、気をつけるようにするわ。」 普段なら軽く軽口のひとつでも叩くところだったが、「剣に振り回される」という言い回しに 何故か不安を覚えた颯樹(さき)は、素直に重樹(しげき)の言葉に従った。 「で、他の物は??」 「うむ。お前には鎧は不向きなようだしな。あとは、私の使っていた『魔法具』と、この指輪ぐらいか。」 「魔法具」とは、人間が魔法を使う際に必ず身につけていなければならない護符のようなもので、 たとえ正しく呪文を唱えたとしても、「魔法具」を持たなければ魔法はその力を発揮しない。 護符のようなものと言うだけあって、その大きさはさほどのものではなく、手のひらに簡単に収まるほどだ。 「指輪??指輪なんかもらったって……。売って旅の資金にしろって事?」 「ば、ばか。売るんじゃないぞ。これには、大事な思い出がこめられているんだ。」 重樹(しげき)は懐から小さな指輪を取り出し、颯樹(さき)に手渡した。 何か宝石のようなものが埋め込まれているが、決して目利きではない颯樹(さき)の目から見ても、 その石が本物の宝石とは思えなかった。その石以外の飾りは一切なく、質素極まりない指輪だ。 「ね、ねえ……まさか、これって、ママの……?」 指輪と聞いて颯樹(さき)が連想したのは、「結婚指輪」だった。 「ああ、違う違う。私はお母さんと結婚するとき指輪なんて贈っていないからな。 まあ、その指輪をよく見てみろ。」 「指輪をよく見る……?」 颯樹(さき)の目には、それはどこからどう見てもそれは飾りというには あまりに質素な指輪にしか見えなかった。 颯樹(さき)の視線は自然と唯一の飾りである石に注がれる。 (6) |