■ 敷地は、西鹿児島駅に近く、住宅と商店が混在して高密度な環境です。
4人家族の住まいと御主人の仕事場を、最小限の面積(76u)の中にいかにコンパクトにまとめるかというのが、プランニングの主題でした。
■ 一階に家族で共有する主室・水まわり・寝室を、二階に仕事場・子供部屋・ルーフバルコニーを配置。
それぞれの部屋に必要とされる面積を足していくと、計画可能な述べ床面積に近くなってしまうため、廊下の面積をできるだけおさえる、いわゆるリビングアクセス的プランを採用しました。
■ 家族の日常生活の中心となる「主室=リビング・ダイニング」が、一階の中心に置かれ、動線の結節点になっています。主室のカウンター(物入れ)は、キッチンの作業台に連続して、勝手口へと空間をつないでいきます。
ただ、御主人の仕事と接客の必要から、玄関とトイレの前の廊下は「表(おもて)の空間」として確保してあります。
■ また、どうしても小さく分節されてしまう空間に連続感をもたせるため、内部の仕上げはできるだけ単一な素材を用いました。
シナベニアの壁・天井・建具、地元のユス材のフローリングです。
狭さをやわらげるために主室にもうけられた大きな出窓などに、柱や筋交いが部分的に露出して、構造を感じるアクセントとなっています。
徹底的に造作を廃し、仕上げを単純化したことが、ローコストに繋がったとともに、シンプルで、初源的な空間を生んだと思っています。
■ 水まわりなどは最小寸法で設計されていますが、家具等に合わせ、壁の厚みを調整してぎりぎりで収めているところもあります。
設計当時まだ幼なかった姉弟のために用意した二階の子供部屋は、将来、家具などを使って二部屋に区切れるように、ドアも二つ用意するなどの配慮をしました。
極力収納をおさえた分、単純な切り妻の屋根裏には、物入れが用意されています。
所在地/鹿児島県鹿児島市
構造/木造二階建て
竣工/1986年
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