富士山麓の萬壽山荘
■ 富士山北麓、標高1100mの別荘地に建つ山荘です。富士の裾野の傾斜が敷地を支配しているなかで、どのように建物を配置し、環境になじませながら、ある種の存在感をもたせる事ができるかが問われる仕事でした。 ■ 敷地には、空間的に2つの方向性が重なって存在していました。ひとつは、敷地の長方形の区割りと南側道路による、ほぼ南北の方向性です。もうひとつは土地の傾斜がもっている北西へと降りていく方向性です。このふたつの方向性を、建築のありかたの上で解決しておく必要がありました。建物の建つ場所は、傾斜の比較的平坦な南側道路に近い部分に限られていました。そこで、建物は敷地(道路)の方向性にあわせた軸に乗せ、全体のヴォリウム構成を傾斜の方向性に向けるようにL字型とし、部分的に雁行させていく事で処理しました。 ■ さらに敷地は、「おもて・うら」といえるような、2つの空間の性質の対立も合わせもっていました。南の道路側(おもて)は、別荘地内とはいえ、不特定な他者の視線に対してある種の防御が必要な空間です。それに対し、北の庭(うら)はカラマツなどの林で、積極的に出て行って享受したくなる空間です。そのため、南側を比較的閉じた外観とし、庭側は、パーゴラに縁取られたテラスを半戸外的な空間として用意し、またテラスへの開口部もできるだけ多くとって、ふたつの空間の性質に対応しようとしています。 ■ 内部計画としては、多様な利用形態に対応できるようなプランニングが採用されました。また、設備的には、深夜電力使用の蓄熱式床暖房を配備しました。別荘という性格上、インターネット経由での遠隔操作・状態確認ができるシステムが導入されています。 所在地/山梨県都留郡鳴沢村字富士山構造/木造二階建て竣工/2002年掲載紙住宅建築 2003年4月号特集 自然な暮らしのための『快適温熱環境の設計』 |
Photo : Ryo Hata |
空間の繋がりを表す断面パース
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