浦和の家
■ JR浦和駅から徒歩で10分足らず、商店街から住宅地へと変わっていく環境に建つ、3世帯住宅です。東西に狭く南北に長い敷地で、東側に5階建てのマンション、西側は3階建ての事務所兼住宅に挟まれた、谷間のような空間。その、谷間のなかにさらにもうひとつの谷間をつくるように、敷地の中央を南北に貫く「通り庭」を設けました。東西2つの棟に分かれた建物の隣地側を閉じ、「通り庭」側に開くプランニングです。 ■ 東棟の1階に親世帯の住まい、その2階が弟世帯の住まい、西棟は1階が兄世帯の仕事場、2階に兄世帯の住まいを割り当てました。共用廊下、共用階段等の共用の空間は持たないものの、東棟と西棟は構造上不可分の関係にあることから、建築基準法上は、重層長屋という範疇に入る建築物となりました。 ■ 3世帯それぞれが機能的に独立して生活できる計画ですが、「通り庭」を外部の共用空間としているので、「通り庭」越しにお互いの生活がチラチラと伝わって来ます。また、「通り庭」での出来事は、門のように見えるブリッジ状のテラスをくぐって、街路へと開かれ、混じり合います。「通り庭」の上部に奥行き二間ごとに掛け渡した「つなぎ梁」は、構造上の働きとともに、奥へと導くリズムを生んでいます。 ■ インテリアではほぼ全室、シナベニアとコルクタイルという単一な仕上げを選びました。また、開口部にはすべて両面貼りの断熱障子を用いています。それらのこと等で、「通り」庭越しに向かい合う部屋相互にも、空間的な連続感が生じるよう意図しました。 ■ 「通り庭」の南の部分には、かつての家の裏庭を残しました。中央部から街路側(北側)は、インターロッキングブロックを敷き、半戸外的な活動や、パーキングなどとして機能します。さらに、新たに4本の木を植えて、「通り庭」が自然の通り道になることを願っています。「通り庭」が街路と接する部分に植えた「ヤマボウシ」は、門の外側、つまり街路側の空間に属し、都市を彩る緑として「まち」に参加しています。 所在地/埼玉県さいたま市浦和区(旧浦和市)構造/木造二階建て竣工/1994年掲載紙住宅建築2000年9月号 特集『集まって住むこと』再考住宅建築別冊・52 2000年5月 『集まって住む形』 -低層スモールハウジング- |
Photo : Seiichiro Ootake |