<敷地の概要>
■ 古くからの農家と新しい住宅の混在する環境。このお宅は、現在でも農業を続けられており、北の屋敷林と南の畑に挟まれた広い敷地は、東側にやや交通量の多い道路、西側は細い道で区切られた東西に狭く南北に長い形状です。その敷地の一部に、若夫婦家族の住まいを建てるという計画です。
<敷地内、他の建物との関係>
■ 敷地内の中央部には、入母屋屋根で二階建てのりっぱな母屋が建っています。その前庭から西側道路へと門を開いています。また南側の畑との間は生垣で区切り、そこに瓦屋根を載せた、いわば正門が開きます。正門脇には納屋、車庫、井戸小屋が前庭に面するように展開します。これらの建物との関係を調整しながら、敷地内のどこに新しい建物を建てるか、3箇所ほど検討が進められた結果、前庭の南側、西側道路よりに落ち着きました。母屋の南ということから、高さをなるべく押さえる事が前提です。
■ 南からの太陽エネルギーを受けようと南面に開口部を多くとると、他の三面は、比較的壁勝ちな立面になります。道路側の西面は壁でのディフェンスでよいのですが、母屋側の北面と、納屋側の東面は強い分節を避けたい。そこで、木製のパーゴラを北面・東面にL型にまわすことで、他の建物とやわらかな関係を結ばせようと考えました。特に東面は、相対する納屋が下屋の庇をこちら側に伸ばしているので、形態的にお互いを映すような関係ができました。納屋の庇下空間は、農作業の合間の休憩や近所の人たちとの井戸端会議に使われており、こちらも東面には土間を設けて、納屋に向けて一軒幅の開口を開き、機能的にも対応するように備えました。
<室内環境を整える>
■ 屋根面で太陽光のエデルギーを受ける空気循環システムが前提だったので、内部はなるべくワンルーム的につながっていく構成が求められました。一階は、西側に、道路からの関係をブロックするように水周りの空間を配置。中央のリビングから東側に、玄関を兼ねた土間を、南へはウッドデッキへ繋がる構成です。南西に下屋のように突き出した和室からも、ウッドデッキに出ることができます。さらにリビング上部に吹き抜けをとり、二階はその周りを回遊できるようなプランを採用。屋根の垂木をあらわしにして、一階からも屋根の広がりや傾きを感じ、南へのオリエンテーションを体感できるようにしています。屋根の高さを低くおさえましたが、この広い吹き抜けが、圧迫感を感じさせません。吹き抜けを中心に回遊しながらも、玄関土間上部の床をやや下げたり、階段を平面的に45度振ったりすることで、空間的な変化を導入しています。
■ 玄関土間の脇に設けた箱階段は、無印良品のバスケットの寸法に合わせて玄関土間側からも使える収納を兼ねながら、上部のフリースぺースから二階へのサブ動線ともなっています。
<地元の木を使う>
■ 家の中心には24センチ角の大黒柱が屋根まで達しています。この樹齢100年近い杉の木は、埼玉の飯能の山で伐採するところから、製材所で角材として整えられるまで建て主さん家族にも体験していただいたもので、この家のシンボルです。さらに、玄関土間の上がり框も、同じ山から出た二間半長の、桧材です。
所在地/埼玉県さいたま市
構造/木造二階建て
竣工/2010年
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