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   【第U章】   ≦発声のシステム≧

呼吸の基本

 寝ている時自然に呼吸しているのが「腹式呼吸」別名(横隔膜呼吸)です。いざ歌うとなるとどうしても力が入り、腹式呼吸が出来なくなります。呼吸の仕方には2通りあります。両肩を上げないようにゆっくり息を吸い込んで、お臍に意識を集中させ、お腹が膨らむようになれば「腹式呼吸」です。
 それに対して息を吸った時両肩が上がるような吸い方は「胸式呼吸」別名(鎖骨呼吸)といって、横隔膜を押し上げ、上半身に力が入ってしまいます。この状態で発声をすると喉に大きな負担がかかり、息も長続きしません。

呼吸器官

@胸式呼吸(鎖骨呼吸)
呼吸のたびに胸や肩が動いている場合、胸の中には大事な心臓の他、肺(肺臓)と呼ばれる空気袋があります。その回りを肋骨と呼ばれる12対の骨が籠のように取り囲んでいます。肋骨同士を動かす筋肉の働きで肺を伸び縮みさせ空気を出し入れします。この場合の呼吸の仕方を 「胸式呼吸」と呼びます。
A腹式呼吸(横隔膜呼吸)
お腹が動いている場合一方、肺の下の胃袋など、お腹の中にある臓器をさえぎる1枚の膜がついています。これを「横隔膜」といいます。この膜が上下するにつれて、肺(空気袋)も伸びたり縮んだりします。この横隔膜の働きを調節するにはお腹の所にある筋肉(腹筋群)の働きによるもので、この場合を「腹式呼吸」といます。実際にはそれぞれが単独に働くことはありません。ただその混ざる比率が違うだけで、正確には「胸式複式呼吸」と呼ぶべきでしょう。

「呼吸」は肺自体が膨らんだり縮んだりして行うものではなく、胸郭や横隔膜や肋骨筋などの働きによって拡張、収縮することを受けて行われるものです。以下のことを参考にして体が覚えるまで繰り返し練習をしてください。
先ずは普通に立って息を吐くことから始まります。その時お腹の筋肉が背骨にくっつくように感じるほど吐き切り、5秒ほど息を止め、そのままへこんだお腹をもとに戻します。この時息を吸って戻してはいけません。自然と戻ります。何故なら吐いた時横隔膜は上がります。引力の法則で下へ下がります。それと吐いた時、肺の気圧は下がります。外の気圧の方が高いため低い方に瞬時に入ってきます。この方法だと肩は絶対に上がりません。これが正しい腹式呼吸即ち横隔膜呼吸ともいわれます。深い呼吸はこの延長線の上にあります。肩の上下は絶対にいけません。これが体の原理に沿った呼吸法なのです。

この横隔膜による空気の出し入れ、即ちお腹が出たり凹んだりする運動により、強い息を吐くことが出来ます。この強い息を声帯に当てるぶつける(アタック)により強くて深い声になります。そしてスピード感のある密度感のある深い声は遠くまで響きます。大きな声でも煩くありません。腹筋を使って歌うプロのお腹は割れています。歌は体全体が一体となって全身で歌うものなのです。その豊かに響く声を出したり引いたり、音色を自由に変化させながら歌唱技法を加え更に言葉(言霊)を入れ、身振り手振り耳目に訴えるのが歌なのです。マイクに頼って喉で声量をコントロールしている内は良い歌は歌えません。

歌う筋肉

ただ単に声を出すだけでは歌の「発声」とはいえません。発声を勉強する意味とは
@呼吸筋(腹筋、背筋、胸郭、横隔膜など肺からお腹にかけての筋肉全般)
A内喉頭筋(声門を開閉している筋肉)声帯を引っ張ったり声門を閉じたり開いたりして声帯の動きをコントロールしている筋肉、輪状甲状筋、閉鎖筋群
B調音筋(母音や子音を作る筋肉)口や顎を動かしたり口の中の形を変え、母音や子音を作る動きをする筋肉。滑舌、口腔体操、表情筋を鍛える。
以上、3つの筋肉の中で最も重要なのはAの内喉頭筋です。輪状甲状筋は歌う筋肉(音の高さやボリュームを作る主役)輪状軟骨・甲状軟骨からできている→喉ぼとけ、アダムのリンゴともいう。体全体の筋肉に普段の生活では使っていない筋肉(歌うための筋肉)を鍛えることと思ってください。声が出来る源である声帯は筋肉と粘膜の二層構造で出来ています。声帯に空気が触れて、振動して声になります。先ず発声は呼 吸筋、声帯の筋肉を鍛えることから始まります。次に重要になってくるのが、空気が振動しただけでは音が小さいままなので、音を増幅、共鳴させ、響かせること、つまり、音を響く体を作らなくてはいけませんそして、歌は沢山の空気を使い言葉を使って喜怒哀楽の感情を表現していくのです。

口を大きく開く
 発声の第1歩は先ず、口を大きく開けてみましょう。すると不思議なことに顔全体の筋肉が伸びていることが分かります。更に額から顔のてっ辺までの筋肉が伸びていますそして試しに声を出してみましょう。どうですか、筋肉が自然に伸び、腹筋や腰の回りの筋肉にも力が入り、緊張することが分かるはずです。つまり、発声練習にとって歌を唄うための筋肉が鍛えられることになります。逆に言えばこの筋肉が鍛えなければ楽しく歌を唄うことはできません。
喉を大きく開く
 ただ漫然と口を大きく開けるのではなく、喉を大きく開かないと空気は入ってきません。歌う場合は常に空気の出し入れをスムースに行わなければなりません。口を大きく開くと同時に、喉の奥も開いていることを自分で充分自覚する必要があります。そうする事によって喉の筋肉が引き締まり、弦がピンと張った状態になります。緩んだ弦からはよい音は出ません。
という文字は大きく口をあけて可可(かァかァ)と大きく息を欠伸(あくび)のように吹き出して声を立てる、という意味です。「
」という文字も口を貝のように開いたり閉じたりする動作が感じられます。

共鳴

肺に溜まった空気が声帯の振動によって音に変化し(音化)その音が体の中で共鳴して外へ複合的な音となって出ます。つまり、レコードで言えば、声帯がレコードの溝をトレースして振動する針、その振動を増幅させ加工するのがアンプである共鳴体です。       
共鳴する主要な三つの部分
@咽頭腔
A口腔
B鼻腔
◎良く響く声は単独より三つの息の流れに乗せて歌うと良い

音程により響く位置が変化するプロ

 良くプロは「当たる」という言葉を使います。ある音程の声を出した時、それに対応して響く場所が自分の体にそれぞれあって、ピタリトあったときに「当たる」という表現を使います。音程が低くなればお腹から響いてきて、高音になるにつれて響く位置が上になり頭上に移動してきます。これには個人差があるので一概に「ド」の音はここで響くとか、また「レ」はここで響くとか言うことではありませんが、発声練習を続けながら自分の響く場所つまり、「当たる場所」を発見して下さい。但しこのイメージを掴めるようになるまでには、相当練習と筋肉を鍛えなくてはならないので、一朝一夕には無理です。兎に角練習のみです。プロは日々「声をぶつける」と「声が当たる」感覚を意識して歌っているのです。ただ何気なく歌っているのではないことが分かりましたか。歌って知れば知るほど奥が深いですよね。

聴覚器官

 耳は体の外部から音が入ってくると、外耳から中耳というところに入ってきます。そこには太鼓の皮のように薄い膜(鼓膜)が張り付いています。この中を通った音は、内耳に伝わり、更に聴覚神経経路を経て大脳の聴覚神経中枢へと辿りつきます。
 ところが、こういう伝わり方の他に違う経路があるのです。言えかえると一種の近道で最初の外耳→中耳を飛び越えて、いきなり内耳→聴覚神経経路→聴覚中枢へという伝わり方があります。体の外部から音源が伝わってくる限り、どんな音も大部分は一般経路という普通の経路から入り込み、少しの部分がこの近道に辿りつきます。
 しかし、自分のしゃべる声を自分で聴く場合は音源が体の内部にあるため、この仕組みが逆転しています。体の外に放出された声という音波も、当然はね返ってきますから、一般経路からも伝わってきます。その比重は少数勢力です。
 これに対して、テープに吹き込んだ自分の声を聴く時は、自分の声であっても音源は外にあるので、この場合大部分の音が一般経路、すなわち、外耳→中耳→聴覚神経というパターンを辿ります。このためテープの声はいつも聴きなれた声とは違って聴こえます。結局のところ、客観的に聴いているつもりでも、実は極めて主観的な聴き方をしているということになります。

 
 

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