2006ミステリ&SFベスト

2007.01.01 by SAKATAM


 2006年に読んだ本(再読を除く)の中から、個人的に面白かったもの(国内新刊・海外新刊・国内旧刊・海外旧刊を3作品ずつ)を挙げておきます。
 題名のリンク先は、もう少し詳しい内容紹介と感想です。

国内新刊
1『厭魅の如き憑くもの』
三津田信三
 旧弊に支配された辺鄙な山村で起きる、神の祟りとも思える連続殺人。
 ホラーと本格ミステリを高いレベルで見事に融合させた傑作。
2『カオスコープ』
山田正紀
 曖昧な記憶の中に浮かび上がる殺人の幻影。そして「万華鏡連続殺人事件」。
 サイコサスペンス風の物語の果てに描き出される強烈な幻想。
3『殺意は必ず三度ある』
東川篤哉
 ベース盗難事件に端を発する、不可解な“野球見立て殺人”。
 滑り気味のギャグと豪快なトリック、そして鮮やかな解決。
 今年はそこそこ新刊も読みましたが、1位の三津田信三が頭一つ抜けていました。
 次点は、好調のライトノベル・シリーズ第三弾、久住四季『トリックスターズD』

海外新刊
1『幻を追う男』
J.D.カー
 幻の女性を探し求める大尉が巻き込まれた不可解な事件。
 J.D.カーのラジオドラマ集。待望の初単行本化。
2『ひよこはなぜ道を渡る』
E.フェラーズ
 ユーモラスなシリーズの最終作は、“死体なしの殺人”と“殺人なしの死体”の謎。
 とらえどころのない事件と興味深い人間模様、そして鮮やかな解決が秀逸。
3『奇術師の密室』
R.マシスン
 植物状態の老奇術師の目前で繰り広げられる、騙し合いと殺人劇。
 どんでん返し、どんでん返し、そしてまたどんでん返し。
 1位のJ.D.カーは最後の未訳長編『ヴードゥーの悪魔』も刊行されましたが、原書で一度読んでいるのでこちらの方を。
 次点は、ツイスト博士の登場する作品集、P.アルテ『赤髯王の呪い』

国内旧刊
1『痙攣的 モンド氏の逆説』
鳥飼否宇
 前衛芸術をテーマとした連作短編ミステリ、のはずが……。
 あまりにも不条理極まりない、“バカミスの極北”。
2『螢』
麻耶雄嵩
 かつて凄惨な事件の舞台となった、閉ざされた山荘で起きる連続殺人。
 オーソドックスな“館もの”のようでいて、思わぬ方向から襲いくる強烈な一撃。
3『イニシエーション・ラブ』
乾 くるみ
 “たっくん”と“マユ”――二人の恋の始まり、そして終わり。
 ベタベタな恋愛小説の皮をかぶった、精妙な騙し絵のような作品。
 1位の鳥飼否宇の強烈な破壊力がダントツ。
 次点は、歌野晶午の衝撃的な傑作『葉桜の季節に君を想うということ』と、とんでもない仕掛けが施された飛鳥部勝則『誰のための綾織』

海外旧刊
1『百番目の男』
J.カーリイ
 連続首切り殺人をめぐる、サイコスリラー+警察小説。
 発想そのものが常軌を逸している、あまりにもバカすぎる真相。
2『アプルビイズ・エンド』
M.イネス
 ドタバタに巻き込まれたアプルビイ警部と、小説そのままの事件。
 抱腹絶倒のユーモラスな展開と、実に鮮やかなオチが見事。
3『疑惑の霧』
C.ブランド
 多すぎる容疑者。混迷を極める事件は、やがて法廷へ……。
 多重解決の行く先は、“最後の一撃”による鮮烈なカタルシス。
 方向性は違うものの、バカミス系がワンツーフィニッシュ。
 次点は、サスペンスの古典的名作、B.S.バリンジャー『歯と爪』


黄金の羊毛亭 > 雑文 > 2006ミステリ&SFベスト