花間集
蝴蝶兒
張泌
zhangmi ZhangMi zhang mi Zhang Mi
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蝴蝶兒， 晩春時。 阿嬌初着淡黄衣， 倚窗學畫伊。 還似花間見， 雙雙對對飛。 無端和涙拭臙脂， 惹敎雙翅垂。  |
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蝴蝶兒， 晩春時。 阿嬌初着淡黄衣， 倚窗學畫伊。 還似花間見， 雙雙對對飛。 無端和涙拭臙脂， 惹敎雙翅垂。 |
蝴蝶兒
後庭花
蝴蝶兒，
晩春の時。
阿嬌 初めて着る 淡黄の衣を，
窗に倚（よ）りて 伊（これ）を畫くを 學ぶ。
還ほも 似たり 花間に 見えしに，
雙雙 對對として 飛ぶ。
端（はし）無くも 涙に和して 臙脂を拭へば，
雙翅をして 垂らせ敎（し）むを 惹（まね）く。
| ****************** 私感訳注： ※蝴蝶兒：詞牌の一。詞の形式名。蝴蝶児の名称はこの作品から起こった。詳しくは下記の「構成について」を参照。 ※蝴蝶兒：ちょうちょ。児は、接尾辞で、主として可愛げな名詞等に付く。意味は特にない。児童、子どもの意味はない。 ※阿嬌：漢の武帝の従妹の名。武帝が「若得阿嬌，當以金屋貯之。」と言い、後に皇后とした。ここでは、美少女の意味で使われている。 ※初着淡黄衣：初めて薄いあさぎ色の着物を着たとき。この句の「淡黄色の着物を着る」とは何を意味するのか、よく分からない。 ※倚窗：窓に寄り添い。 ※學畫：絵を学ぶ。 ※伊：これ。ここでは、蝴蝶を指している。 ※還似：まるで…みたい。なおも…のごとく。 ※花間：花の咲き乱れているところ。 ※見：出会う。 ※雙雙：あちらで二匹、こちらで二匹という具合に、ならんで飛んでいるさま。 ※對對：あちらで一対、こちらで一対という具合に、対になって飛んでいるさま。 ※無端：ゆえなく。わけもなく。端なくも。 ※和涙：涙と共に。 ※拭臙脂：（絵を描いている）べにをぬぐう。涙がべにを流し去ったということ。 ※無端和涙拭臙脂：（蝴蝶は対になって楽しそうに飛んでいるのに比べ、自分は独りなので、）つい、わけもなく涙が出て、描いている絵の紅を濡らしてしまった。 ※惹：ひきおこす。…を招く。…という事態になる。 ※敎：…を…させる。…をして…しむ。古語では、平声。 ※雙翅：二つの羽根。 ※垂：たらす。 ※惹敎雙翅垂：（蝶が驚き、気を使って、飛ぶのを止めて）左右の羽根を垂れさせることになってしまった。 ◎ 構成について 双調。四十字。平声一韻到底。韻式は「AAAA AAA」。韻脚は「兒時衣伊 飛脂垂」で、第三部平声。この作品の詞調は、
○●○，（韻） ●○○，（韻） ○○○●●○○。（韻） ●○●●○。（韻） ○●○○●， ○○●●○。（韻） ○○○●●○○。（韻） ●○○○○。（韻） 「教」は両韻、使役は○ となる。 |
| ２００１．７．４ ７．５ ７．６完 ７．２２補 ８． ５ |
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