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詞牌と詞調




ci xiaoling小令(五十八字以下)
ci zhongdiao中調(五十九字至九十字)
ci changdiao長調(九十一字以上)


1.はじめに

 詞は唐詩に比べ、その形式が極めて多様である。「萬氏詞律全書」(「詞律」)(康煕二十六年)には、八百二十五調、千百八十余体がのせられ(「詞律」序より)、同「詞律拾遺」を合わせ、千六百七十余体がある(「詞律拾遺」凡例より)。それら各格調(詞調)毎にタイトルが冠せられている。それが、詞牌である。詞牌は詞の題名ではないので、「本意」でない場合は題を添えて書いても可である。詞の韻式を集めたものが詞譜である。
 詞を作る立場から見ていくと、一つの詞牌に対して幾つかの異体があり、仮に異体が無くとも、有名なものは、一つの韻式に幾つかの詞牌がある。また、標準の形式よりも文字の増減があったりする異体もあり、些か複雑である。また、詞牌と詠み込む内容は、ある程度関連づけがある場合(本意)が多い。特に初期ほどそうである。もし、初めて作るとすれば、やはり基本を重んじて、本意(本義)の方がよいのではないか。そのためには、幾つもの詞を味わっておき、その詞牌の表すべき傾向を確認しておく必要がある。特に実際に作ることを考えればこれは重要になってくる。もっとも温庭、韋莊、また、李U、馮延巳、柳永、晏殊、その他黄庭堅、李清照、更に、蘇軾、辛棄疾、張孝祥、陳亮…と、時代によって好まれる詞牌、詞調は変わるものの、仮に、同じ詞牌の作品があっても全く傾向が違う。それは時代の状況のみならず、むしろ作者の個性の問題が大きい。俗か雅か、閨怨を好む詞人か、雄渾な表現を得意とする詞人か、その傾向も確認しておく必要がある。
   ここでは主な詞牌の平仄を並べた詞調一覧を作り、簡単な詞譜として紹介する。特に、このサイトで取り上げた作品と、我々日本人が作りやすいと思えるものを主として取り上げている。



2.詞譜の表記法について

 詞譜の表記方法は数多くある。以下にその例を挙げ、各々の特質を見ていく。
 王力先生の大部の著作「漢語詩律學」では、詞譜を極めて丁寧に、特に平と仄の許容の範囲を厳密に分析して取り上げられており、その詞牌の特質や傾向、他の詞牌との関連を分析するには、最高ともいえる、実にすばらしいものがある。しかしながら、「詞を作る」という観点から見れば、暗号表を見ているようで、解りにくい。(上述書の表記法を以下に紹介してみる。)


◎ 柳梢青   
4x   4s  4x|4X 4s 4x||
           6X[3a'(b)4b]|〃 〃 〃 ||


  
◎ 解佩令    
4s 4a'(b)|[3A 5a] | 4X [3b' 4x]|[3A△○●△]||
           〃 〃  |[〃 4a']| 〃 〃 〃 |  〃  〃   ||


      
傳言玉女   4A      6a |4a(A)1+4s(5a)|○△△△|(4b) 6x|4x 4a||
          〃[3A3b'] (6a)| 〃    〃 |○○△○|(4b)〃|〃 〃||


  以上のようである。 また、「唐宋詞格律」(龍楡生)や「詩詞曲格律網要」(塗宗濤)等は、なかなか分かり易く、平仄を手書きするときによく使われるが、見た瞬間は、記号のバランスが取れていなく、簡単すぎてとまどってしまう。(これも以下に紹介してみる。)



◎ 虞美人    
+−+ | −− | (仄韻) 。 + | −− | (叶仄韻) 。 + - + | |
                   
                                  

 - -(換平韻) 。 + | + - + |  | - - (叶平韻) 。 
 
                             △               

 + - + | - - (換仄韻)。+ | - - | (換仄韻)。 + - + |  | - - (再換平韻)。
             △                   △                                           

 + | + - |  | - - (叶平韻)。            
                                                                                                                                                  


  少し古くなるが、「詞譜」(康煕五十四年 内府刻本)では、次のようになっている。
日本の漢詩を作っている人には見慣れた表現と思える。


◎  歸字謡    
●○○●○○○●●●○○


  これもやや古いが「周詞訂律」(楊易霖:民国)では、古典的な四声の声調符号を付けている。更にその後ろに、注釈文で詳しく説明をしている。以下のようである。


◎ 蘇幕遮    
■■■▲■
           
▲■ ■▲■■■
           
■■▲■■      ……(双調:以下略)


 詞には上声、去声、入声などを特に指定する場合があるが、それには便利である。(例が悪かった。上の例では、必ずしもそれが明瞭ではないが…)


 また古い書に戻るが「萬氏詞律全書」(別名「詞律」)(康煕年間)は、見本の詞を掲げて、それに注釈を加えている。これもよくみかけるタイプだ。


また、始めに掲げた王力先生の別著「詩詞格律概要」(文革終了後に出版)、また、北京大学中国伝統文化研究中心の「詩詞曲的格律和用韻」(耿振生)では、漢字で表している。例えば、


◎ 南歌子   
        
||仄平平仄,平平仄仄平。仄仄平平。平平仄,仄平平。||
                          △           △              △



 この方式は漢字なので、初めての人が見ても誤解が起こらない。
 
  本ページでは、「詞譜」の
方式を採用することとし、北大「詩詞曲的格律和用韻」等の漢字方式も適宜混用することとする。




3.詞譜

 詞譜とは、詞牌別に詞調を表した、平仄式の一覧表である。なお、詞の平仄と詩の平仄とは、平仄そのものは同じであるが、押韻の分類で違うところもある。しかし、今から作り始める方にとっては、同じと見なして頂いて結構かとも思う。詩の韻の方がより細かくなっている。詩韻と詞韻とでは、元になる韻書の成立時代や性格が異なっている。詞韻については、次のページの「詞韻」を参照されたい。
   以下、このページの凡例を述べる。


           ***** 凡  例 *****

(或いは
平韻字

(或いは
仄韻字

(或いは
基本的には平韻字だが、仄韻字でもよいところ。

(或いは
基本的には仄韻字だが、平韻字でもよいところ。
平仄どちらも可のところ。
平(韻) 平韻字で押韻するところ。
仄(韻) 仄韻字で押韻するところ。
句の終わるところ。(概ね押韻しないが、一定でない。)
句の終わるところ。(ほぼ押韻をするが、例外がある。)
|| と後の境目。(つまり、双調の詞)
領字。一字逗。一字で切れるところ。(この逗は仄韻字に決まっている。但し、韻を踏むところではない。)

或いは
三字以上の逗。先ず三字で切れるところ。韻は踏まない。例えば、「仄平平仄仄仄平(韻)。」という具合に表す。
・韻式 換韻の式。例えば「AAbbbAA」。これは平韻の韻を二回踏み、その後、仄韻の韻を三回踏み、再び始めと同じ平韻を二回踏むことを表す。もし、「AAAbbbbCCC」であれば、平韻の韻を三回踏み、その後、仄韻の韻を四回踏み、次は始めと異なる平韻を三回踏むことを表す。
 /  一つ前の句を繰り返す。畳句。(…平韻。 …仄韻)
畳韻 同一の韻字を繰り返して使う。
字の順を顛倒させて使う。例えば、前句末の二字「迷路」を顛倒して「路迷」として次の句で使うこと。(文でも追記しておく)

(或いは
上声字に限定されているところ。

(或いは
去声字に限定されているところ。

(或いは
入声字に限定されているところ。

 上記の表記法で、対応できないところは、文で書き記すこととする。


詞調は、字数によって、小令、中調、長調と区別される。
小令は、五十八字までのものを、中調は、五十九字から九十字までのものを、長調は、九十一字以上のものを謂う。
以下に各詞牌毎の詞調を列挙する。
ci xiaoling小令(五十八字以下)
ci zhongdiao中調(五十九字至九十字)
ci changdiao長調(九十一字以上)

                                  

***********************

99.9. 4
99.9. 5
99.9. 7
00.3. 1
00.3.12
00.3.13
00.4. 2
00,4. 3
00.4.10
00.4.16
00.4.23
00.4.27
00.5. 7
00.5. 9
00.5.13
00.5.21
00.5.27
    00. 6.23
00. 7. 8
00. 7.14
00. 7.15
00. 7.23
00. 9. 7
00. 9.15
00. 9.29
   10.18
   10.21
   11. 4
   11. 5
   11. 7
01. 1. 6
02年…03年…

   続く
    
    
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