花間集
菩薩蠻
菩薩蛮
唐 温庭
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玉樓明月長相憶。 柳絲  娜春無力。門外草萋萋。 送君聞馬嘶。 畫羅金翡翠。 香燭消成涙。 花落子規啼。 綠窗殘夢迷。  |
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玉樓明月長相憶。 柳絲 娜春無力。門外草萋萋。 送君聞馬嘶。 畫羅金翡翠。 香燭消成涙。 花落子規啼。 綠窗殘夢迷。 |
菩薩蠻
菩薩蛮
玉樓 明月 長へに相ひ憶ふ。
柳絲娜として 春 無力。
門外 草 萋萋たり。
君を送れば 馬の嘶くを 聞けり。
畫（いろうつくしき）羅（うすぎぬ） 金の 翡翠。
香（かぐはしき）燭 消（とけ）て 涙を成し、
花 落ちて 子規 啼けば、
綠窗に 殘夢 迷ふ。
| ****************** 私感訳注： ※菩薩蠻：詞牌の一。詞の形式名。双調 四十四字。換韻。詳しくは 「構成について」を参照。 この詞は花間集の六番目に載せられいる。女の人が、男と共に過ごした昔を思い起こしている情景を詠んでいる。 ※温庭 ：晩唐の大詞人。詩人でもある。花間集では彼の作品が一番多く、六十六首も採用されており、このことから花間鼻祖とも称されている。※玉樓：玉（ぎょく＝宝石）のように立派な建物。女性の住む建物を指す。 ※明月：明るい月。名月。 ※長：とこしえに。いつまでも。 ※相憶：昔のことを思い起こす。憶は、あれこれと思いをはせること。 ※柳絲：垂れ下がった柳の枝のこと。絲柳。 ※ 娜：（でうだ：niao3nuo2）しなやかなさま。なよなよとしているさま。は、嫋（たおやか、しなやか）に通ずる。※春無力：春の様子は、力 無げである。この句の意味は、柳の新芽の出た、若いしなやかな枝の様子だけを謂うのではなく、この女性は、男が別れを告げて、去っていってしまった後、無気力になっているということをもにおわせている。 ※萋萋：草が茂っているさま。 ※送君：恋人を送る。君とは男性を指す。 ※聞馬嘶：馬のいななくのが 聞こえてきた。男と最後の別れの情景であろう。ここは、過去のことを思い出している。 ※畫羅：。うすぎぬ（しとねor着物）に画く。または、美しいうすぎぬ（しとねor着物）のこと。畫は、動詞として、（絵を）えがく。形容詞として（建物などに色が塗られていたり、模様が画かれていたりして）美しい、（「畫船聽雨眠」の畫）になる。ここは、どちらにとっても意味が通じるが、後者の用例が詞には多い。羅は、しとねととった方が、前後がよく繋がる。 ※金翡翠：かわせみ。雌雄対になったカワセミのことで、翡は雄で翠は雌を謂う。 ※香燭：香しき蝋燭。香はこの蝋燭がいい香りを放つかどうかということよりも、女性を暗示していることの方が大きい。なお、同じく温庭 の詩で、「香燭有花妨宿燕，畫屏無睡待牽牛」とあるが、ここは対句で、香燭と畫屏が対になっている。この詩（池塘七夕詩）の解説でで「香燭」の意味が「香（こう）と蝋燭」となっていたが、香燭、畫屏の香と畫とは、共に形容詞として使われ、後を修飾しているのではなかろうか。これらの語は、やはり、「かぐわしい」「うるわしい」とするのが、一番相応しいのではないか。※消成涙：。蝋が溶けて涙を流したみたいになっていること。消を銷とする本が多い。銷の方が通りやすい。 ※花落：花が 散る。 ※子規：ホトトギス。血を吐きながら、悲しげに、不如歸去（bu4ru2gui1qu4ブールーグイチュー。当時は、ピアｔニョキャュェイキョ？）（ホーホケキョ？？）と啼くという。不如歸去の意味は「歸去するに如（しか）ず」（♪♪歸って こ～いよ～♪♪）で、これは、この女性の叫びでもある。蛇足だが、このことからホトトギスを不如歸とも書き表す。 ※綠窗：緑の紗（うすぎぬ）の窓。女性の部屋の窓のこと。 ※殘夢：見果てぬ夢。見残した夢。男と過ごした日々の思いでを指している。 ※迷：悩乱している。 ◎ 構成について 双調 四十四字。換韻。全ての句が押韻する。押韻の平仄が入れ替わる多彩な詞。
 ○ ●○○●。（a仄韻）○●○○●。（a仄韻）●●○○。（B平韻）○●○，（B平韻）○○●●。（c仄韻）●○●，（c仄韻）●●○○，（D平韻）○●○。（D平韻）となる。 押韻は、換韻で、韻式は「aaBB ccDD」 韻脚は「憶力」は第十七部入声で、「萋嘶」は第三部平声で、「翠涙」は第三部去声で、「啼迷」は第三部平声。 |
| ２０００． ９．３０ １０． ２ １０． ３ １０． ４完 １０． ７（土） １０．１０ ２００１． ５．１０ |
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