我梳白髮添新恨,
君掃靑蛾減舊容。
應被傍人怪惆悵,
少年離別老相逢。
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舊(きう)に逢ふ
我は 白髮を 梳(くしけづ)り 新恨(しんこん)を 添(そ)へ,
君は 靑蛾(せいが)を 掃(はら)ひて 舊容(きうよう)を 減ず。
應(まさ)に 傍人(ばうじん)に 惆悵(ちうちゃう)するを 怪(あや)しまるべし,
少年に 離別して 老いて 相ひ逢ふ。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)~846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※逢舊:旧友に出逢う。ここでの故知とは女性になっている。若い時に知り合った女性に、年老いた現在、偶然に出逢った感懐を詠う。なお、白居易には同題『逢舊』「久別偶相逢,倶疑是夢中。即今歡樂事,放盞又成空。」がある。 ・逢:出逢う。出くわす。偶然に行きあうこと。
※我梳白髮添新恨:わたしは、白髪頭をくしけずっていると、(頭髪の老化現象を見せつけられ)哀しみを新たにしている。 ・我:わたし。作者・白居易のこと。 ・梳:〔そ;shu1○〕(櫛で)とく。すく。くしけずる。 ・白髮:しらが。 ・添:〔てん;tian1○〕付け加える。そえる。後世、明・金鑾は『除夕』で「還憶去年辭白下,卻憐今夕在黄州。空江積雪添雙鬢,細雨疏燈共一樓。世難久拚魚雁絶,家貧常爲稻梁謀。歸來故舊多凋喪,愁對東風感舊遊。」とする。 ・新恨:新たな愁い。白髪頭を梳(くしけず)ったために、白髪が増えたことや髪の毛が減ったという老衰を表す頭髪の現象を見て、哀しみを新たにすることをいう。
※君掃靑蛾減舊容:貴女(あなた)も眉を始めとした美しい容貌は、すっかりなくなり、昔の姿形は損なってしまっている。 ・君:貴女(あなた)。出逢った旧知の女性のこと。 ・掃:すっかりなくなる。全く除く。はく。 ・靑蛾:〔せいが;qing1e2○○〕美しくひいた女性の眉。なお、「青娥」〔せいが;qing1e2○○〕は、若い美人。 ・減:へる。 ・舊容:昔の(若かった時代の)姿形。
※應被傍人怪惆悵:きっと傍にいる人たちに、(わたしたちの)うれえ悲しむさまを(見て、)不思議に思われてしまっていることだろう(が)。 ・應:〔おう;ying1○〕きっと…だろう。おそらく…だろう。当然…だろう。まさに…べし。副詞。蛇足になるが、「こたえる」という動詞は〔おう;ying4●〕になる。 ・被:〔ひ;bei4●〕…られる。受身表現。 ・傍人:傍にいる人。傍らにいるひと。 ・怪:変に思う。あやしむ。 ・惆悵:〔ちうちゃう;chou2chang4○●〕恨み歎くさま。失意のさま。うれえ悲しむさま。ここでは、お互いに歳を取った感慨と旧情を舒(の)べていることをいう。
※少年離別老相逢:(実は、)若い時に別れたままで、歳をとった(今、久々に)出逢った(ものなのだから)。 ・少年:若い時代。若者。ここは、前者の意。 ・離別:別れる。 ・老:歳をとる。 ・相逢:出逢う。
◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「容逢」で、平水韻上平一東(風)、二冬(容)。次の平仄はこの作品のもの。
●○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
○●○○●○●,
●○○●●○○。(韻)
2006.3.21完 2009.5. 4補 |
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