觀獵 | |
盛唐・王維 |
風勁角弓鳴,
將軍獵渭城。
草枯鷹眼疾,
雪盡馬蹄輕。
忽過新豐市,
還歸細柳營。
迴看射雕處,
千里暮雲平。
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獵 を觀 る
風勁 くして角弓 鳴り,
將軍渭城 に獵 す。
草は枯 れて鷹眼 疾 く,
雪は盡 きて馬蹄 輕 し。
忽 ち過 ぐ新豐 の市 を,
還 た歸る細柳 の營 に。
雕 を射し處を迴 り看れば,
千里暮雲 平 らかなり。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?〜761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※観猟:猟を観(み)る。 ・観:見物する。見る。
※風勁角弓鳴:風が強く、角で作った弓が鳴り。 ・勁:〔けい;jing4/jin4●〕つよい。 ・角弓:〔かくきゅう(かっきゅう);jiao3gong1●○〕つのでつくったゆみ。
※将軍猟渭城:将軍が渭城で猟をしている。 ・将軍:〔しゃうぐん;jiang1jun1○○〕将軍。軍を率いる。 ・渭城:長安の西北30キロメートルの所にある城市。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)40−41ページ「京畿道 関内道」にある。現代の咸陽。
※草枯鷹眼疾:草は枯れて(遮蔽物はなくなったので)、タカの目つきは素速く。 ・鷹眼:〔ようがん;ying1yan3○●〕タカの目つき。 ・疾:はやい。はげしい。とし。また、にくむ。にらみつける。憎み視る。
※雪尽馬蹄軽:雪が解け果てたので、馬のひづめ(の音)が軽やかである。 ・雪尽:雪が解け果てる。 ・馬蹄:〔ばてい;ma3ti2●○他〕馬のひづめ(の音)。馬の足取り。なお、「馬啼」〔ばてい;ma3ti2●○〕では、馬のいななき。
※忽過新豊市:たちまち新豊市を通り過ぎて。 ・忽:たちまち。 ・新豊市:都市名。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社40−41ページ「京畿道 関内道」)によれば、長安の東北東40キロメートルの所にある都市名。
※還帰細柳営:ふたたび細柳営に帰ってきた。 ・還:また。ふたたび。 ・細柳営:細柳は陝西省の咸陽県の南西。細柳営・細柳倉とも謂う。前漢・周亜夫がこの地に陣を張ったので、この名・細柳営がある。なお、後世、“厳格な規律有る陣営”、“将軍の陣営”(柳営)の喩えが付け加わった。『唐代的長安與洛陽地圖』上海古籍出版社(1991年上海)平岡武夫(原・日本の京都大学平岡武夫氏による出版の、中国での復刻唐代研究地図集及び解説集)や『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)をざっと見、読んだが、今の所見つけられない。なお、この「細柳営」から「柳営」の語が生まれた。同義。
※回看射雕処:ワシを射たところをふり返って見れば。 ・回看:顧みる。 ・雕:〔てう(現:ちょう);diao1○〕ワシ(鷲)。
※千里暮雲平:遥か彼方まで、夕暮れの雲が平たく流れている。 ・千里:遥か彼方までの意。 ・暮雲:夕暮れの雲。
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◎ 構成について
この作品の平仄は、次の通り。韻式は、「AAAAA」。韻脚は「鳴城軽営平」で、平水韻下平八庚。
○●●○○,(韻)
○○●●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
○●●○●,
○●●○○。(韻)
となる。
2021.11.19 11.20 11.21 11.22 |
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