私がウィルトンフェルダーを知ったのは、彼が12歳の頃でした。私たちはともに高校、大学へと進みました。お互い協力して演奏しては上達していきました。14歳の時には、ウィルトンはヒューストン近辺のトップグループと演奏し、ボビーブランドやパーシィメイフイールドのようなシンガーをサポートするまでになっていました。
今日、ウィルトンフェルダーはジャズクルセイダーズのメンバーとして素晴らしい才腕を発揮し、テナーサックス界の偉大な演奏者として名を馳せ、独自の哀愁に満ちたテキサスサウンドを生み出し、国を問わず、聞く人のハートを熱くしています。
ウィルトンの素晴らしいところは、どんな聴衆をも魅了するところで、そのことには驚くばりです。ウィルトンにまつわるある出来事があります。それは私たちクルセイダーズがインディアナ州はインディアナポリスの「Mr,B's」と言うクラブで演奏していた時のこと。ウィルトンはバラッド「You Don't Know What Love Is」を演奏していました。最前列に陣取っているグループの人たちを見るとウィルトンのプレイに熱心に聞き入っていました。突然のこと、その女性の一人が号泣し始めたのです。私たちはすぐさまそれに気付きましたが、彼女の身に何か悪いことでも起こったのかなと思いました。驚いたことに、そのときウィルトンが演奏していたバラッドを中断するや、彼女は泣きながらも駆けより、ウィルトンを声高らかに絶賛しました。彼女は「これほど美しい演奏を聴いたことはない」と叫びました。彼女はウィルトンの演奏に耽溺していたのです。これこそコミュニケーションです。あなた方がこのアルバムに耳を傾けると、きっと私の言うことが分かるはず。
ジャズクルセイダーズの中での演奏であろうとなかろうと、ウィルトンの産み出すサウンドに耳を傾けるべきであると私は確信します。ウィルトンは一見無関心の殻をかぶっている風に見えますが、その実むせび泣くソールフルなサウンドには、彼の温厚な性格と懐の深さが現れています。そのサウンドはまぎれもなく才気横溢なウィルトンフェルダーのもので、このアルバムを素晴らしいものとしています。