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田園樂七首之七 | |
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唐・王維 |
酌酒會臨泉水,
抱琴好倚長松。
南園露葵朝折,
東谷黄粱夜舂。
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田園樂 七首の七
酒を酌めば會 ず 泉水に臨み,
琴 を抱 きては 好く 長松に倚る。
南園 の露葵 は 朝に折り,
東谷 の黄粱 は 夜に舂 く。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?~761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※田園楽七首之六:田園(生活)はすばらしい。作者の罔川での田園生活を指すか。これは七首のうちのその七。陶淵明のような隠者生活を詠う。*この六言詩の節奏は「□□・□□・□□」となっている。なお、(『楚辭』などを除いて、)一般的に七言詩の節奏は「□□・□□+□□□」(=「□□・□□+□□・□」or「□□・□□+□・□□」)であり、五言詩の節奏は「□□+□□□」(=「□□+□□・□」or「□□+□・□□」。)(『楚辭』
の場合では、七言句、五言句の場合も上述の形式は当て嵌まらない場合が多い)。
※酌酒会臨泉水:酒をくむ時は、きっと泉から湧き出る流れに向かい。 ・酌酒:酒を飲む。酒をくむ。 ・会-:きっと。かならず(や)。中唐・白居易の『長恨歌』に「唯將舊物表深情,鈿合金釵寄將去。釵留一股合一扇,釵擘黄金合分鈿。但敎心似金鈿堅,天上人間會相見。」とある。 ・泉水:泉。泉から湧き出る水。後出・陶淵明の『歸去來兮辭』に「木欣欣以向榮,泉涓涓而始流。羨萬物之得時,感吾生之行休。」
とある。
※抱琴好倚長松:琴(きん)をいだいては、たけの高い松に靠(もた)れ寄る。 ・抱琴:琴(きん)をいだく。「琴」(きん)は、陶淵明の時代から盛唐・李白『山中與幽人對酌』「兩人對酌山花開,一杯一杯復一杯。我醉欲眠卿且去,明朝有意抱琴來。」
と隠者を暗示するもの。文人の嗜(たしな)むもの。 ・好-:…しがちである。ともすれば。よく…。よく…する。…したがる。また、よし。軽い肯定。ここは、前者の意。「好倚」で「ともすればもたれがちである」「よく靠(もた)れる」の意。 ・倚:寄りかかる。もたれる。よる。 ・長松:〔ちゃうしょう;chang2song1○〕たけの高い松。大きくなった松。老松。現代語ではハイマツの一種。なお、「長」は「大きくなる」の意では〔zhang3●〕、形容詞「長い」の意では〔chang2○〕。東晋・陶淵明の『歸去來兮辭』
の後半「瞻衡宇,載欣載奔。僮僕歡迎,稚子候門。三逕就荒,松菊猶存。攜幼入室,有酒盈樽。引壺觴以自酌,眄庭柯以怡顏。倚南窗以寄傲,審容膝之易安。園日渉以成趣,門雖設而常關。策扶老以流憩,時矯首而游(/遐)觀。雲無心以出岫,鳥倦飛而知還。景翳翳以將入,撫孤松而盤桓。 歸去來兮,請息交以絶遊。世與我而相遺,復駕言兮焉求。悅親戚之情話,樂琴書以消憂。農人告余以春及,將有事於西疇。或命巾車,或棹孤舟。既窈窕以尋壑,亦崎嶇而經丘。木欣欣以向榮,泉涓涓而始流。羨萬物之得時,感吾生之行休。」
とあり、同・陶潛の『飮酒二十首』其八「靑松在東園,衆草沒其姿。凝霜殄異類,卓然見高枝。連林人不覺,獨樹衆乃奇。提壺撫寒柯,遠望時復爲。吾生夢幻間,何事紲塵羈。」
とあり、盛唐・劉長卿の『尋盛禪師蘭若』に「秋草黄花覆古阡,隔林何處起人煙。山僧獨在山中老,唯有寒松見少年。」
とあり、盛唐・李白の『贈韋侍御黄裳』に「太華生長松,亭亭凌霜雪。天與百尺高,豈爲微飆折。桃李賣陽艷,路人行且迷。春光掃地盡,碧葉成黄泥。願君學長松,慎勿作桃李。受屈不改心,然後知君子。」
とある。なお、『論語』子罕篇の「歳寒,然後知松柏之後凋也。」での意は、困難な環境にも耐え得、不屈の気節を表す松を謂い、この詩の用法とは異なる。
※南園露葵朝折:南側の畑で(朝)露を受けた(食用の)アオイを朝に折って(収穫し)。 ・園:畑。 ・露葵:アオイの別名。露を受けると美しくなるのでいう。幾つかの詩では、「露葵」を食用の菜として詠われている。また、現代語ジュンサイのこと。スイレン科の多年生草本で池沼に生え、食用とされる。「南園露葵」なので、ここでは前者の意が妥当。
※東谷黄粱夜舂:東の谷で(とれた)オオアワは夜にうすづいている。 ・黄粱:オオアワのこと。「黄粱一炊の夢」(黄粱一夢)をも暗に謂うか。 ・舂:〔しょう;chong1○〕うすで、粟などの穀物などをつく。うすづく。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「松舂」で、平水韻上平二冬。この作品の平仄は、次の通り。
●●●○○●,
●○●●○○。(韻)
○●●○○●,
○●○○●○。(韻)
2014.6.4 |
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