年華冉冉催人老, 風物蕭蕭又變秋。 家在鳳凰城闕下, 江山何事苦相留。 |
秋懷
年華冉冉 として 人を催 して老いしむ,
風物蕭蕭 として 又た 秋に變 ず。
家は鳳凰 城闕 の下 に在り,
江山 何事 ぞ苦 に相 ひ留 むる。
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◎ 私感訳註:
※蘇舜欽:北宋の詩人。1008年〜1048年。字は子美。梓州銅山(現・四川省中江)の人。若くして蔭補により、任官。仁宗の景祐元年(1034年)の進士。後に、范仲淹に認められたが、反対派により弾劾され、蘇州に移住し、滄浪亭を造り、読書と作詩に没頭した。その詩は、雄志を述べる道をふさがれた感慨の述べて悲憤慷慨したものとなっている。
※秋懐:秋に、心に感じ思うこと。 *年を取っても、故郷へ帰れない切なさを詠う。
※年華冉冉催人老:年月は、だんだんと進んで、人を老いにせきたてて。 ・年華:年月。歳月。 ・冉冉:〔ぜんぜん;ran3ran3●●〕だんだん進行するさま。また、しなやかなさま。『楚辭』屈原の『離騷』に「衆皆競進以貪婪兮,憑不厭乎求索。羌内恕己以量人兮,各興心而嫉妬。忽馳*以追逐兮,非余心之所急。老冉冉其將至兮,恐脩名之不立。朝飮木蘭之墜露兮,夕餐秋菊之落英。苟余情其信*以練要兮,長*頷亦何傷。」(*字は「参照」を参照のこと」)とあり、南唐後主・李Uの『謝新恩』に「冉冉秋光留不住,滿階紅葉暮。又是過重陽,臺登臨處,茱萸香墮。 紫菊氣,飄庭戸,晩煙籠細雨。新雁咽寒聲,愁恨年年長相似。」とある。 ・催人老:人を老いにせきたてる意。「催」:うながす。せきたてる。また、もよおす。せまる。盛唐・杜甫の『閣夜』に「歳暮陰陽催短景,天涯霜雪霽寒宵。五更鼓角聲悲壯,三峽星河影動搖。野哭千家聞戰伐,夷歌幾處起漁樵。臥龍躍馬終黄土,人事音書漫寂寥。」とあり、中華民国・丁景唐の『秋』歌青春に「柔和的陽光徘徊在屋頂, 青青的小草匍匐在墻際, 巷子裏雖依然是幽靜的一片, 冷風中意識着秋天的踪跡來近。秋雨瀟瀟 似離人的涙水飄渺。又如哀悼催人的年華無情地隨流水西去。愣看墻外的黄葉下墜, 在秋風的懷中訴説秋意深了。鮮艷的紅葉掛向枝頭。嫩黄的叢菊開遍籬笆;薄暮裏,老年人以低喟來追思消逝的童年, 寒江露白, 而秋天却又要匆匆地走了。」とある。
※風物蕭蕭又変秋:景色はもの寂しく、またしても秋になった。 ・風物:けしき。 ・蕭蕭:〔せうせう;xiao1xiao1〕もの寂しいさま。雨や風の音などの寂しいさま。『古詩十九首』第十三首に「驅車上東門,遙望郭北墓。白楊何蕭蕭,松柏夾廣路。下有陳死人,杳杳即長暮。」とあり、『古詩十九首』の第十四首に「去者日以疎,來者日以親。出郭門直視,但見丘與墳。古墓犁爲田,松柏摧爲薪。白楊多悲風,蕭蕭愁殺人。」とあり、東晉・陶潛の『挽歌詩』其三に「荒草何茫茫,白楊亦蕭蕭。嚴霜九月中,送我出遠郊。四面無人居,高墳正嶢。馬爲仰天鳴,風爲自蕭條。幽室一已閉,千年不復朝。千年不復朝,賢達無奈何。向來相送人,各自還其家。親戚或餘悲,他人亦已歌。死去何所道,託體同山阿。」とあり、燕・荊軻の『易水歌』に「風蕭蕭兮易水寒。」とある。 ・又:またしても。また。 ・変秋:秋に変わった。秋になった。
※家在鳳凰城闕下:故郷の家は、鳳凰城の城門もそばにある(が)。 ・家:故郷の家。家郷。 ・在:(…に)ある。 ・鳳凰城:作者の郷里にある城市。どこの鳳凰城か不詳。 ・城闕:城門。 ・下:そば。「城下」は、日本語の「城下」とは感じが異なる。
※江山何事苦相留:御国(/山河)は、どうして根気よく留(とど)めてくるのだろうか。 ・江山:山河。また、御国。国土。国家。 *「山河」「河山」との違いは、「山河」(「河山」)はただ単に山や川を指すが、「江山」は、国家または国家の支配権を指し、「御国」「祖国」といった趣がある。ここでは、その双方の意を持った用法。 ・何事:どうして。何ゆえ。 ・苦:ねんごろに。しきりに。ひどく。度を超して。根気よく。 ・相留:とどめてくる。「相」:…てくる。…ていく。動詞の前に附き、動作が対象に及んでくる表現 。「…てくる」「…ていく」の意。「相互に」の意味はここではない。白居易の『勸酒』「昨與美人對尊酒,朱顏如花腰似柳。今與美人傾一杯,秋風颯颯頭上來。年光似水向東去,兩鬢不禁白日催。東鄰起樓高百尺,題照日光相射。」 、李白に『把酒問月』「天有月來幾時,我今停杯一問之。人攀明月不可得,月行卻與人相隨。皎如飛鏡臨丹闕,拷喧ナ盡C輝發。但見宵從海上來,寧知曉向雲陝刀B白兔搗藥秋復春,娥孤棲與誰鄰。今人不見古時月,今月曾經照古人。古人今人若流水,共看明月皆如此。唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。」や、陶潜の『飮酒二十首』其一「衰榮無定在,彼此更共之。邵生瓜田中,寧似東陵時。寒暑有代謝,人道毎如茲。達人解其會,逝將不復疑。忽與一觴酒,日夕歡相持。」 、陶淵明の『雜詩十二首』其七の「日月不肯遲,四時相催迫。寒風拂枯條,落葉掩長陌。弱質與運頽,玄鬢早已白。素標插人頭,前途漸就窄。家爲逆旅舍,我如當去客。去去欲何之,南山有舊宅。」や張説の『蜀道後期』「客心爭日月,來往預期程。秋風不相待,先至洛陽城。」、杜甫の『州歌十絶句』其五に「東西一萬家,江北江南春冬花。背飛鶴子遺瓊蕊,相趁鳧雛入蒋牙。」とあり、李U『柳枝詞』「風情漸老見春羞,到處消魂感舊遊。多謝長條似相識,強垂煙穗拂人頭。」 、范仲淹の『蘇幕遮』「碧雲天,黄葉地,秋色連波,波上寒煙翠。山映斜陽天接水,芳草無情,更在斜陽外。 黯ク魂,追旅思,夜夜除非,好夢留人睡。明月樓高休獨倚,酒入愁腸,化作相思涙。」 前出・韋莊の『浣溪沙』「夜夜相思更漏殘。」とあり、 盛唐・王維の『竹里』に「獨坐幽篁裏,彈琴復長嘯。深林人不知,明月來相照。」とあり、盛唐・李白の『古風五十九首』の其十一に「黄河走東溟,白日落西海。逝川與流光,飄忽不相待。春容捨我去,秋髮已衰改。人生非寒松,年貌豈長在。吾當乘雲螭,吸景駐光彩。」や顧夐の『訴衷情』「永夜抛人何處去,絶來音。香閣掩。眉斂。月將沈。怎忍不相尋。怨孤衾。換我心爲你心。始知相憶深。」など、下図のように一方の動作がもう一方の対象に及んでいく時に使われている。
また、李白の「古風」「龍虎相啖食,兵戈逮狂秦」、「遠別離」の「九疑聯綿皆相似,重瞳孤墳竟何是。」「長相思」「長相思,在長安」や王維の「入鳥不相亂,見獸皆相親。」などは、下図のような相互の働きがある。
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更に、これらとは別に言葉のリズムを整える働きのために使うことでも、詩では重要な要素となる。
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◎ 構成について
2016.4.29 5. 3 5. 4 |