記事No | : 1788 |
タイトル | : 杜子春の母 |
投稿日 | : 2012/12/06(Thu) 23:28:12 |
投稿者 | : 桃青 |
私が長いこと世の親、特に母親に対して抱いていたイメージは
芥川龍之介の「杜子春」の母でした。
自分は馬になって肉が破れるほどにムチうたれながら、
「お前が黙っていたいのなら、黙っておいで」と囁くあの姿ですね。
読むたび、思いだすたびに、涙がこぼれましたし、
私の子供時代は、どちらを向いても母とはそういうものだ。
と思わせるような情報に満ちていましたので、なんとなく親とはそういう有り難いものなのだ、ずっと思っていました。
その思いは今も変わりませんし、母も認知症になるまでは間違いなく杜子春の母だった、と思います。
ただ、認知症になった母を見ていると、そういう部分はすっかりなくなり、もっとなんというか、原初な思いで生きているように見えます。
その思いとは一言で言えば
「私はとても不安なの。私に優しくして。」
でしょうか・・・。
こういう場合、夫婦のほうが、ぎゅっと抱きしめるなり、なんなり不安を和らげることは、簡単じゃないかと思うのですが、
さすがに親をぎゅっと抱きしめるのは、抵抗があるなあ。
手をぎゅっと握るくらいがせいぜいです。
ああ、でも杜氏春は、馬のお母さんに駆け寄って抱きしめたのですね。