小院春風木下家,
長街短巷插櫻花。
十杯清酒千般意,
筆墨相期流錦霞。
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木下順二に 贈る
小院 春風 木下家,
長街 短巷 櫻花を 插す。
十杯の清酒 千般の意,
筆墨 相ひ期す 錦霞を 流さんことを。
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◎ 私感註釈
※贈木下順二:一九六五年三月二十八日に木下順二宅に訪問した際のもの。 ・木下順二:『夕鶴』で有名。
※小院春風木下家:小院に春風が(訪れている)木下家。 ・小院:小さな庭。
※長街短巷插櫻花:あちこちの町並みで、サクラの花の枝が、外へ伸ばしている。木下家のある東京本郷の情景をいう。 ・長街短巷:大通りと横町。“大街小巷”のこと。「大街小巷」を「長街短巷」としたのは、平仄に因る。「大街小巷」は●○●●で、「長街短巷」は○○●●になる。 ・插櫻花:(木下家に到るまでの家々の塀の上から)桜の枝が、外へ出ているようすをいう。
※十杯清酒千般意:十杯清酒に多くの思いがある。木下家での歓待をいう。 ・清酒:老舎の記録に拠ると、この清酒は「剣菱」。 ・千般意:千種の思い。多様な感情。
※筆墨相期流錦霞:文筆活動で成果を挙げるように、約束しあった。 ・筆墨:筆と墨で、ここでは、文筆活動を指す。 ・相期:約束する。期待しあう。 ・錦霞:五色の雲。ここでは、成果のこと。
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◎ 構成について
作品全体の韻式は「AAA」。換韻。韻脚は「家花霞」で、下平六麻。この作品の平仄は次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
●○○●○○●,
●●○○○●○。(韻)
2003.7.17 |
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