泱泱哉! 吾中華。
最大洲中最大國,
廿二行省爲一家。
物産腴沃甲大地,
天府雄國言非誇。
君不見,英日區區三島尚崛起,
況乃堂矞吾中華。
結我團體,
振我精神,
二十世紀新世界,
雄飛宇内疇與倫。
可愛哉! 吾國民。
可愛哉! 吾國民。
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愛國の歌
泱泱たる哉! 吾が 中華。
最大の洲中 最大の國,
廿二行省 一家と 爲す。
物産 腴沃にして 大地に 甲(ひい)で,
天府の 雄國 言(ここ)に 誇りを 非(そし)らず。
君 見ずや, 英日 區區たる三島より 尚ほ 崛起し,
況んや 乃ち 堂矞(ともがら) (み)ちたる 吾が中華。
我らが團體に 結ばれ,
我らが精神を 振はし,
二十世紀の 新世界,
宇内に 雄飛し 疇(たれ)と倫(とも)にかせん。
愛す可(べ)き哉! 吾が國民。
愛す可(べ)き哉! 吾が國民。
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◎ 私感註釈
※梁啓超:清末・民国初期の政治家・思想家。1873年(同治十二年)〜1929年(中華民国十八年)。字は卓如。号は任公、飮冰室主人。広東省新会の人。康有為に師事し、立憲君主制を主張、維新を目指し戊戌変法に参与したが百四日で失敗(戊戌政変)、日本に亡命した。日本語文献を通じて西洋ブルジョアジーの新しい社会・政治・経済・哲学・歴史などの理論を紹介した。民国時代は、司法総長などを歴任した。
※愛國歌:全四章からなる。これはその第一章。
※泱泱哉!吾中華:勢威が漲っている我が中華よ。 ・泱泱:〔あうあう;yang1yang1○○〕勢力、気概の盛大なさま。本来は、水の深く広いさま。
※最大洲中最大國:世界最大の(アジア)洲の中の最大の国(にして)。
※廿二行省爲一家:全国の二十二の省を一家となして(統一し)。 ・廿二行省:全中国。全中国清末の行政区画。二十二の省。ほぼ現在のものに同じ。元朝に中央直属の中書省と、その他の地区である行中書省に分けられ、「行省」と称された。 ・行省:(特別)行政区域。
※物産腴沃甲大地:物産がこえて優れていることは、地上一番である。 ・腴沃:〔ゆよく;yu2wo4〕肥沃である。こえている。・甲:優れている。秀でている。ぬきんずる。“桂林山水甲天下”に同じ用法。
※天府雄國言非誇:産物が豊かな大国は、そしることではない。 ・天府:産物が豊かな天然の倉庫。四川省をいうことがある。 ・雄國:大国。 ・言:語調を整える助辞。ここに。或いは、言論は。 ・非誇:そしることではない。或いは、誇るべきものではない。
※君不見,英日區區三島尚崛起:君は見なかったか、イギリスと日本は、とるにたらない三つの島から、なおも高く立ち上がったのを。 *これと同じことを秋瑾が述べている。『警告我同胞』「被小小三島的日本」 ・君不見:君見ずや。 ・英日:イギリスと日本。 ・區區:〔くく;qu1qu1○○〕とるにたらない。こまごました。蛇足になるが、「區」〔おう;ou1○〕の音もあるが、意味も当然異なる。 ・三島:ここでは、日本を指す。本来は、東海にある「三壷」のことで、蓬莱、方丈、瀛州の三神山のこと。三つの島。清末・秋瑾の『日人石井君索和即用原韻』「漫云女子不英雄,萬里乘風獨向東。詩思一帆海空闊,夢魂三島月玲瓏。銅駝已陷悲囘首,汗馬終慚未有功。如許傷心家國恨,那堪客裏度春風!」や、清・康有爲の『呈東國諸公』「櫻花開罷我來遲,我正去時花滿枝。半歳看花住三島,盈盈春色最相思。」 と使う。 ・尚:なおも。 ・崛起:〔くつき;jue2qi3〕高くそばだつ。勢いよく立ち上がる。現代語の文章語では、よく見かける。
※況乃堂吾中華:ましてや親戚同胞が横溢している吾が中華では。 ・況乃:ましてや、その上に。「玄冬霜雪積,況乃回風吹。」「江城帶素月,況乃C夜起。」 ・堂:親戚の。りっぱなさま。 ・:〔いつ;yu4〕あふれる。うがつ。驚いて飛ぶ。いつわる。
※結我團體:我が団体に参加して。
※振我精神:我ら(中華民族)の精神を奮い起こそう。 *民族呼称について詳しくはこちら。
※二十世紀新世界:二十世紀の新たな世界で。
※雄飛宇内疇與倫:世界に雄飛して。 ・宇内:天下。世界。 ・疇與倫:誰と一緒になろうか。 ・疇:〔ちう;chou2○〕たぐい。なかま。誰。
※可愛哉!吾國民:愛すべき我が国民よ。 ・吾國民:第二章以降は「我國民」としている。
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◎ 構成について
作品全体の韻式は「AAAABBBB」。換韻。韻脚は「華家誇華 神倫民民」で、平水韻下平六麻と上平十一真。この作品の平仄は次の通り。
○○○!●○○。(A韻)
●●○○●●●,
●●○●○●○。(A韻)
●●○●●●●,
○●○●○○○。(A韻)
○●●,○●○○○●●●●,
●●○●○○○。(A韻)
●●○●,
●●○○。(B韻)
●●●●○●●,
○○●●○●○。(B韻)
●●○!○●○。(B韻)
●●○!○●○。(B韻)
2003.6.30完 10.26補 2011.9. 3 |
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