琵琶湖映比良山,
銀色峰頭碧玉灣。
莫怨櫻遲紅未綻,
雙鳩軟語破春寒。
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琵琶湖 遠望
琵琶湖に映ず 比良の山,
銀色の峰頭 碧玉の灣。
怨む莫れ 櫻 遲くして 紅(はな) 未だ 綻ばざるを,
雙鳩 軟語して 春寒を破る。
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◎ 私感註釈
※老舎:現代中国の小説家、劇作家。1898年暮〜1966年8月23日。本名は、舒慶春。北京市西城区護国寺附近の小羊圈胡同に生まれる。それ故、作品は北京を舞台としたものが多い。最期は、文革発動の初期である66年の8月23日、屈辱の内に北京の太平湖で投身自殺した。
※琵琶湖遠望:琵琶湖の遠望。1965年昭和40年の日本訪問の際の連作の一。
※琵琶湖映比良山:この句は、「琵琶湖映比良山,銀色峰頭碧玉灣。」の一聯でひとまとまりとなる。「琵琶湖は比良山を映じて、銀色の峰頭が碧玉灣に(映じてある)」ということ。
※莫怨櫻遲紅未綻:怨みなさるな、(まだ寒さが残っており)サクラがぐずぐずとして、花をまだ著けていないのを。 ・莫怨:怨むな。 ・櫻遲:サクラの咲くことが遅い。・遲:のろい。ぐずぐずしている。蛇足だが、(時刻が)「おそい(おくれる)」の意は“晩”を使う。 ・紅:花。 ・未綻:まだほころんでいない。
※雙鳩軟語破春寒:(サクラの代わりに)一対になっているハトの穏やかな鳴き声が、早春の寒さを打ち消してくれる。 ・雙鳩:一対になっているハト ・軟語:穏やかな言葉。柔らかな言葉。 ・破春寒:早春の寒さを打ち消す。
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◎ 構成について
作品全体の韻式は「AAA」。韻脚は「山湾寒」で、平水韻上平十四寒(寒)、十五刪(灣山)。この作品の平仄は次の通り。
○○○●●○○,(韻)
○●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
○○●●●○○。(韻)
2003.8.15 8.16完 2017.1.25補 |
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