鷓鴣天
　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宋　陸游

家住蒼煙落照間， 絲毫塵事不相關。 斟殘玉行穿竹， 卷罷黄庭臥看山。 貪嘯傲， 任衰殘， 不妨隨處一開顏。 元知造物心腸別， 老卻英雄似等�閨I

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　　　　　　　　　　　　鷓鴣天
　　　　　　　　　　

家は 住む　　蒼煙　落照の間，
絲毫も　塵事に　　相ひ 關（かか）はらず。
玉を　斟（く）み 殘し　　　行くゆく　竹（たかむら）を穿ち，
黄庭を　卷き 罷へ　　　臥して　山を看る。


嘯傲を　貪り，
衰殘に　任し，
隨處に　一（しばしば）　顏を　開（ほころ）ばすを　妨げず。
元より 知る　　造物と　心腸は 別なるを，
老卻せば　　英雄も　等��（ありきたり）に似るを！

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◎　私感訳註：

※鷓鴣天：詞牌の一。詳しくは「構成について」を参照。
※家住：家は…にある。…に居住している。
※蒼煙：青いもやが立ちこめる樹木が茂った深山。
※落照：落日。夕陽。
※家住蒼煙落照間：居宅は青いもやが立ちこめる樹木が茂った奥山で、夕陽が射しかける所で。
※絲毫：いささかも（…ない）。全然（…ない）。この語の後には否定形が来る。
※塵事：俗事。俗世間の事柄。
※不相關：関わらない。関係を持たない。
※絲毫塵事不相關：。
※斟殘：汲み残す。「斟淺」ともする。
※玉：（ぎょくせつ；yu4xie4）美しい小川の流れ。古代の酒の名称。　・：小川。そそぐ。水が湧き出る。
※行：行くと。
※穿：つっきる。くぐりぬける。
※竹：ここでは竹藪。竹林。竹叢。
※斟殘玉行穿竹：美しい小川の流れを汲んでも、その余りの水の流れは、竹藪の中へ流れ込んでいる。「玉」を古代の酒の名称ととった場合、「美酒を酌み残したそのものは、〔穿竹〕」。この場合、「穿竹」の意味が苦しい。
※卷罷：巻き取る。巻子本の本を読み終わり、まるめること。
※黄庭：道教の経の名。「黄庭内景経」「黄庭外景経」「黄庭遁甲縁身経」の三部がある。
※臥看山：寝ころんで（物事にこだわることなく、気楽に）山を看る。
※卷罷黄庭臥看山：巻子本の道教の経を読み終わって、寝ころんで山を看る。
※貪：むさぼる。充分に味わう。
※嘯傲：物事に拘束されない。奔放である。
※貪嘯傲：（精神的には）自由、奔放を味わい尽くす（が）。
※任：まかせる。
※衰殘：おとろえすたれる。やつれはてる。
※任衰殘：（肉体的には）おとろえすたれるにまかせている（ものの）。
※不妨：…をさまたげない。構わない。差し支えない。
※隨處：いたるところで。随所で。
※一：やや。すこし。
※開顏：顔をほころばす。笑う。
※不妨隨處一開顏：いたるところで顔をほころばしたりするのををさまたげない。
※元知：元々から分かっていることである。
※造物：造物主。天。神様。
※心腸：考え。心ね。気持ち。
※別：別のものである。
※元知造物心腸別：元々、造物主と（人間とは）考え方が別のものであるということは、分かっていることである。
※老卻：老い去れば。老いてしまった。　・却：忘却、困却の却で、動詞の後について、動詞の意味を強調する。
※等�閨Fありきたりの。普通の。なおざりにする。＝等閑。
※老卻英雄似等�閨F老いてしまっては、英雄もありきたりの普通の人のようになってしまった。

◎　構成について

　　　双調。五十五字。平韻一韻到底。韻式は「ＡＡＡ　ＡＡＡ」。韻脚は「間關山　殘顏�閨vで、第七部平声で〔殘〕は十四寒。〔間關山顏�閨lは十五刪。

●○○●○，（平韻）
○●●○○。（平韻）
○●○●，
●○○●○。（平韻）


○●●，
●○○。（平韻）
○●●○○。（平韻）
○●○○●，
●○○●○。（平韻）

２００２．４．２２ 　　　　　４．２３完

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