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柴門寂寂黍飯馨,
山家煙火春雨晴。
庭花濛濛水,
小兒啼索樹上鶯。
春晩 山家屋の壁に書す
柴門 寂寂として 黍飯 馨(かを)り,
山家の煙火 春雨 晴る。
庭花 濛濛(もうもう)として 水(れいれい)たり,
小兒 啼(な)きて索(もと)む 樹上の鶯を。
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◎ 私感註釈
※貫休:晩唐五代の僧侶。俗姓は姜。字は德隱。禅月大師。州蘭溪(現・浙江省蘭渓)の人。832年(唐・文宗:太和六年)~912年(後梁・太祖:乾化二年?)徳隠
※春晩書山家屋壁:春の宵に山家の壁に詩を書き付けた。 ・春晩:春の宵。 ・書:書く。ここでは山家の壁に詩を書き付けることをいう。 ・山家屋:やまが。粗末な家。茅屋。 ・壁:かべ。この壁に詩を書き付けた。題壁。書壁。
※柴門寂寂黍飯馨:柴で作った粗末な門ひっそりとして静まりかえっており、キビでつくったご飯の炊けるかんばしいにおいが遠くにまで伝わってくる。 ・柴門:柴で作った門。柴戸。柴扉(さいひ)。柴折り戸。隠者の草庵の門などにいう。劉長卿の『逢雪宿芙蓉山主人』に「日暮蒼山遠,天寒白屋貧。柴門聞犬吠,風雪夜歸人。」とある。 ・寂寂:ひっそりとして寂しいさま。無心のさま。無念無想のさま。 ・黍飯:〔しょはん;shu3fan4●●〕五穀の一であるキビでつくったご飯。山奥の簡素な生活が窺える。 ・馨:〔けい;xing1○〕かおる。かんばしい。よいにおいが遠くにまで及ぶ。
※山家煙火春雨晴:山家(やまが)に炊煙(が立ち上り)、春雨は晴れた。 ・煙火:炊煙。
※庭花濛濛水:庭の草花はしっとりと霧で覆われて、渓流の水音は清らかな音を立てている。 ・庭花:庭の草花。 ・濛濛:〔もうもう;meng2meng2○○〕小雨、霧雨、ぬかあめなどで薄暗いさま。 ・水:川の流れ。 ・
:〔れいれい;ling2ling2○○〕水や風の音の清らかなさま。音声の盛んなさま。清らかで涼しいさま。
※小児啼索樹上鴬:小児:おさなごが木の上のウグイスを泣いてほしがっている。 *この句は小林一茶の「名月を とってくれろと 泣く子かな」を想い出す。 ・小児:おさなご。 ・啼索:泣いてほしがる。泣いてもとめる。 ・樹上:木の上。 ・鴬:ウグイス。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAA」。韻脚は「馨晴鶯」で、平水韻下平九青。全ての脚で押韻しており、詞の影響を受けていよう。ただ、七絶格の各詞牌(『柳枝詞』『採蓮子』、『単調:浪淘沙』、『陽關曲』、『江南春』、『阿那曲(仄韻)』『鴨叫子』、『八拍蠻』、『欸乃曲』、『水調歌』『竹枝詞』)
は三平韻で、詞譜にはこのような四平韻格の形式はない
。伝統的な七言絶句とも言い難い。この作品の平仄は次の通り。
○○●●●●○,(韻)
○○○●○●○。(韻)
●○○○●○○,(韻)
●○○●●●○。(韻)
2005.5.1 |
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