白塔橋邊賣地經,
長亭短驛甚分明。
如何只説臨安路,
不較中原有幾程。
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壁に題す
白塔橋 邊 地經を賣り,
長亭 短驛 甚(はなはだ)だ分明なり。
如何(いかん)ぞ 只(た)だ説く 臨安の路,
中原まで 幾(いくばく)の程 有るかを 較(あきらか)にせず。
◎ 私感註釈 *****************
※題壁:駅路の白塔橋あたりの壁に書かれていたもの。南宋朝廷の対金政策の弱腰をうたう。「我が国の地図なのに、我が国固有の北方領土(中原の地)が省かれているではないか。」という意味の詩。南宋時代のもの。当時は、淮河以北は金の領土となっていた。なお、南宋・趙聞礼(釣月)に『驛程記』「白塔橋邊賣地經,長亭短堠甚分明。如何只到銭塘住,不説中原有幾程。」がある。
※白塔橋邊賣地經:白塔橋駅附近では、地図帳『朝京里程図』が売られているが。 ・白塔橋:杭州の南端の入り口である白塔附近にあった白塔橋駅。今、銭塘江大橋のあるたもと。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)59−60ページ「南宋 両浙西路 両浙東路 江南東路」にはないが、観光地図には詳しい。 ・邊:あたり。 ・賣:売る。白塔橋駅では『朝京里程図』が売られていたと云う。 ・地經:地図帳。
※長亭短驛甚分明:十里毎に置かれた宿場と、五里毎に置かれた宿場は、非常にはっきりとしている。 ・長亭短驛:十里毎に置かれた宿場と、五里毎に置かれた宿場。「長亭短堠」では:宿場と一里塚。「堠」は:〔こう;hou4●〕一里塚。土を積んで作った里程標。 ・甚:はなはだ。 ・分明:はっきりしている。
※如何只説臨安路:(しかしながら)どうして、ただ(仮の南宋の首都)臨安(=杭州)に通じる路筋だけを説明しているのか。 ・如何:どうして。 ・只説:ただ…だけ言う。 ・説:言う。説明する。説く。 ・臨安路:前出『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期では「臨安路」という行政区劃はない。「(臨時首都の)臨安に通じる路筋」の意。 銭塘:杭州。 ・住:止(と)まる。止(や)む。
※不較中原有幾程:(我々漢民族の故地である)中原までは、どれほどの里程があるのか、明らかにしていない(ではないか)。 ・較:明らかなさま。 ・中原:黄河中流域の平原地帯で、漢民族の故地。河南省、山東省西部、河北省と山西省の南部、陝西省東部を含むところ。 ・幾程:どれほどの路程。
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「經明程」で、平水韻下平八庚。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2007. 8.16完 2017.12.18補(釣月) |
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