柳宗元登柳州峨山　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩　LiuZongyuan

                    　　　
      登柳州峨山　
      　　　　　　　　　　　柳宗元

荒山秋日午，
獨上意悠悠。
如何望鄕處，
西北是融州。

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柳州の峨山に登る

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
荒山　　秋日　午（ご）なり，
獨り（ひと）上（のぼ）りて　　意　悠悠（いういう）たり。
如何（いかん）ぞ　　望鄕の處，
西北は　　是（こ）れ融州（ゆうしう）。

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◎　私感註釈

柳宗元：中唐の詩人。７７３年（大暦八年）～８１９年（元和十四年）。字は子厚。任地に因んで柳柳州とも呼ばれる。河東（蒲州？現・山西省蒲県）の人。韓愈と並んで古文運動を提倡、その勃興に寄与した。

※登柳州峨山：柳州にある峨山に登る。　・登：登る。高いところへ登り故郷を偲んだ登高でもある。九月九日の重陽の日の風習で、高い山に登り、家族を思い、菊酒を飲んで厄災を払う習わし。高きに登る。重陽の日に登高して、茱萸（しゅゆ；zhu1yu2）かわはじかみ。朝鮮呉茱萸、ぐみ）の実を頭に挿して邪気を払うという後漢の桓景の故事に基づいた重陽の風習に因ったか。王維の『九月九日憶山東兄弟』「獨在異鄕爲異客，毎逢佳節倍思親。遙知兄弟登高處，插茱萸少一人。」や曹植の「茱萸自有芳，不若桂與蘭」や杜甫「明年此會知誰健，醉把茱萸仔細看。」魏・阮籍の『詠懷詩』其十「昔年十四五，志尚好書詩。被褐懷珠玉，顏閔相與期。開軒臨四野，登高望所思。丘墓蔽山岡，萬代同一時。千秋萬歳後，榮名安所之。乃悟羨門子，今自嗤。」や、南唐・李煜の『謝新恩』「冉冉秋光留不住，滿階紅葉暮。又是過重陽，臺登臨處，茱萸香墮。　　　紫菊氣，飄庭戸，晩煙籠細雨。新雁咽寒聲，愁恨年年長相似。」や、南宋・陳亮『念奴嬌』「登多景樓」「危樓還望，嘆此意、今古幾人曾會？鬼設神施，渾認作、天限南疆北界。一水橫陳，連崗三面，做出爭雄勢。六朝何事，只成門戸私計。　　　因笑王謝諸人，登高懷遠，也學英雄涕。憑却江山，管不到、河洛腥無際。正好長驅，不須反顧，尋取中流誓。小兒破賊，勢成寧問強對。」また、現代では在米留学生・朱海洪『元宵』「東風拂面催桃李，鷂鷹舒翅展鵬程。玉盤照海下熱涙，遊子登臺思故國。休負平生報國志，人民有我勝萬金。憤起直追振華夏，且待神洲遍地春。」と、中国人には大切な風習である。　・柳州：現・広西壮族自治区・柳州市。作者の任地で、柳州の刺史であった。『中国歴史地図集』第五冊　隋・唐・五代十国時期（中国地図出版社）６９－７０ページ「唐　嶺南道東部」にある。現・広西壮族自治区・柳州市。桂林の西南２００キロメートルのところ。　・峨山：柳州にある山の名になるが詳しいことは不明。

※荒山秋日午：雑草が地を覆った山に、秋の一日の正午。　・荒山：雑草が地を覆った山。詩題にでてくる柳州にある峨山のことになる。上の写真は桂林附近なので、恐らく峨山もこのようなところではないか。　・秋日：秋の日。　・午：ひる。正午。

※獨上意悠悠：ひとりでのぼって、思いを遠くはるかな（故郷の方へ致そうと思った）。　・獨上：ひとりでのぼる。　・意：思い。　・悠悠：〔いういう；you1you1○○〕うれえるさま。遠くはるかなさま。のんびりしたさま。

※如何望鄕處：どうしよう、ふるさとを遥かにながめる方向には。　・如何：どうしようか。どうするか。（処置を問う）。いかん。　・望鄕：ふるさとを遥かにながめる。郷里を懐かしがる。ここは、前者の意。

※西北是融州：（ふるさとを遥かに望むはずの）西北の方向は、（ふるさとではなく、）隣の融州である。　*故郷を望むことができない落胆をいう。　・西北：地図で見れば、柳州から長安や河東は、真北１５００キロメートルのところで、西北ではない。作者は柳州を実際の位置よりも東寄りに思っていたようだ。　・是：…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B：AはBである〕。　・融州：〔ゆうしう；Rong2zhou1○○〕柳州の西北８０キロメートルのところ。現・広西壮族自治区・融安。柳州の西北に接しており、潭水で繋がっている。前出『中国歴史地図集』第五冊　隋・唐・五代十国時期（中国地図出版社）６９－７０ページ「唐　嶺南道東部」にある。

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◎　構成について

韻式は「AA」。韻脚は「悠州」で、平水韻下平十一尤。次の平仄はこの作品のもの。

○○○●●，
●●●○○。（韻）
○○◎○●，
○●●○○。（韻）