送王淑亮之蘇州
	清・趙慶

蘆花( ろ くゎ)　楓葉(ふうえふ)　　江天(かうてん)を憶(おも)ふ，
夢は斷つ　 姑蘇(こそ)　二十年。
舊友に　若(も)し 逢(あ)ひて　　相(あ)ひ問訊(もんじん)せば，
「長安　多くは　酒家に向(おい)て 眠る」と。

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◎　私感註釈

※趙慶：清の詩人。不詳。この作品は、『清詩佳絶』の第六葉に拠る。

『清詩佳絶』第六葉

※送王淑亮之蘇州：王淑亮が蘇州に行くのを見送る。 *詩から判断するに、長安（西安）にいる作者は、姑蘇（蘇州）に旅立つ王淑亮を送別する詩で、作者自身も曾ては姑蘇（蘇州）に行ったことがあるということが判る。『送（王淑亮）之（蘇州）』と同じ形式の詩題に、唐・李白『黄鶴樓送（孟浩然）之（廣陵）』「故人西辭黄鶴樓，煙花三月下揚州。孤帆遠影碧空盡，惟見長江天際流。」 や唐・劉長卿の『送（李判官）之（潤州行營）』 「萬里辭家事鼙鼓，金陵驛路楚雲西。江春不肯留行客，艸色����送馬蹄。」がある。　・送：見送る。送別の宴をして送別の詩を作る。　・王淑亮：作者の親しい人になろうが、不詳。　・之：行く。　・蘇州：現・江蘇省蘇州市。現・上海市中心部より西９０キロメートルのところ。後出・「姑蘇」と同義。

※蘆花楓葉憶江天：アシの花、色づいたカエデの葉と、南国の長江の（秋の）風光や空を思い出させる。　・蘆花：アシの花。「蘆花楓葉」で、秋のさまを謂う。　・楓葉：（色づいた）カエデの葉。　・憶：思い出す。　・江天：広々とした河の上空。南国の長江の風光や空。

※夢斷姑蘇二十年：（わたし（＝作者）の南国・）姑蘇（≒蘇州）での夢が途絶えて二十年（経った）。　・夢斷：夢が途絶える（-た）。北宋・歐陽脩/張先 の『生査子』に「含羞整翠鬟，得意頻相顧。雁柱十三弦，一一春鶯語。　　　嬌雲容易飛，夢斷知何處。深院鎖黄昏，陣陣芭蕉雨。」とある。　・姑蘇：〔こそ；Gu1Su1○○〕蘇州一帯の古称で、現・江蘇省蘇州市西南郊にある呉県。太湖の東岸にあり、附近に姑蘇山があり、その山頂には姑蘇台がある。また平江ともいう。但し、『中国歴史地図集』第三冊　三国・西晋時期（中国地図出版社）、第四冊　東晋十六国・南北朝時期、第五冊　隋・唐・五代十国時期の該当頁には、（呉県はあるが）姑蘇はない。前出・「蘇州」と同義。唐・張繼の『楓橋夜泊』に「月落烏啼霜滿天，江楓漁火對愁眠。姑蘇城外寒山寺，夜半鐘聲到客船。」とある。　・二十年：ここでは､二十年前の意。作者が曾て蘇州（姑蘇）いた頃のことを謂う。

※舊友若逢相問訊：（王淑亮さんよ、あなたは姑蘇（≒蘇州）へこれから行くが、そこで、わたしの）旧友に、もしも出逢うことがあって、（わたしのことを）訊ねたら。　・舊友：作者の姑蘇（蘇州）での友人を謂う。　・若：もし。もしも。仮定の表現。　・相-：あい…。〔相＋動詞〕で「…てくる」「…ていく」で、動詞の動作が対象に及んでいく表現。　・逢：（偶然に）であう。でくわす。　・問訊：尋ねる。聞く。問う。現代語。

※長安多向酒家眠：「長安で、しょっちゅう酒場で（酔っぱらって）眠り込んでいてばかりいる」と（答えてほしい）。　・長安：現・（陝西省）西安の古称。作者の在世中の清代でも西安となっていた。ここは、作者の居住地になる。　・多向：しょっちゅう…で。　・多：ずっと。よく。しょっちゅう。しばしば。　・向：…において。…で。≒於。　・酒家：酒屋。酒場。酒を飲ませる店。現代では、接待の女性もいる高級中華料理の店。　・眠：ここでは､（酒に酔っぱらって）眠り込む。


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◎　構成について

韻式は、韻式は、「AAA」。韻脚は「天年眠」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。

○○●●●○○，（韻）
●●○○●●○。（韻）
●●●○○●●，
○○○●●○○。（韻）

２０１１．１０．２５ 　　　　　１０．２６完 ２０１２．　６．２０補

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