月子彎彎照九州 | |
南宋民歌 |
月子彎彎照九州,
幾家歡樂幾家愁。
幾家夫婦同羅帳,
幾家飄零在外頭。
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月子 彎彎 として九州 を照らす
月子 彎彎 として九州 を照らし,
幾家 か 歡樂して 幾家か愁 ふる。
幾家の夫婦か羅帳 を同じうし,
幾家か飄零 して 外頭に在 らん。
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◎ 私感註釈
※月子彎彎照九州:月は、まあるく全中国を照らす。 ・月子:月。「月児」ともする。同義。「-子」「-児」は接尾字で、名詞等の後に附く。名詞。日本語に訳すための該当する特段の日本語はない。蛇足になるが、現代(中国)語では「-子」と「-児」とのニュアンスの違いはある。「つき」と「お月様」といった感じになろうか? ・彎彎:ぴん(と)。 ・彎:〔わん;wan1○〕ひく。張る。弓を引き絞る。また、曲がる。曲げる。「彎月」は、ゆみはりづき・弦月・半月のこと。 ・九州:中国全土を指す。古代九州伝説で、禹が全土を開いて冀、兖、青、徐、予、荊、揚、雍、梁の九つの州に分けたことによる。祖国。全国。南宋・陸游の『示兒』に「死去元知萬事空,但悲不見九州同。王師北定中原日,家祭無忘告乃翁。」とあり、後世、明末〜・朱舜水は『述懷』で「九州如瓦解,忠信苟偸生。受詔蒙塵際,晦跡到東瀛。囘天謀不就,長星夜夜明。單身寄孤島,抱節比田。已聞鼎命變,西望獨呑聲。」とする。
※南宋民歌:南宋の民謡。 *北宋の末年、金が南進し、戦火を避けるために北宋の人民は流浪し、やがて金軍は汴京に侵攻して、徽・欽の二帝を拉致した。靖康の変である。北宋が倒れ、江南半壁の地に南宋が起こった。この民謡は、その頃南渡して江南の地を流浪する民衆の間に流行ったもの。
※月児彎彎照九州:月は、まあるく全中国を照らしている(が)。 ・九州:中国全土。「幾州」ともする。「どれほどの地方で」の意。
※幾家歓楽幾家愁:どれほどの家庭が喜び楽しんで、どれほどの家庭が悲しんでいることだろうか。 ・幾家:どれほどの家庭。 ・歓楽:喜び楽しむ。漢・武帝(劉徹)『秋風辭』「秋風起兮白雲飛,草木黄落兮雁南歸。蘭有秀兮菊有芳,懷佳人兮不能忘。汎樓船兮濟汾河,中流兮揚素波。簫鼓鳴兮發櫂歌,歡樂極兮哀情多。少壯幾時兮奈老何。」とあり、中唐・白居易の『對酒』に「蝸牛角上爭何事,石火光中寄此身。隨富隨貧且歡樂,不開口笑是癡人。」とある。 ・愁:憂える。悲しむ。心配する。
※幾家夫婦同羅帳:どれほどの家の夫婦が、薄絹のとばりのベッドを共にしていることだろうか。 *「同羅帳」は、夫婦が離散せずにすんで、共に暮らせていることを謂う。 ・同:同じくする。動詞。 ・羅帳:薄絹のとばり。ベッドの上から垂らした長い垂れ幕。ここでは夫婦の同衾の夫婦生活、更には夫婦の平穏な家庭生活を謂う。
※幾家飄散在外頭:どれほどの家が、外地(よそ)を流離(さすら)っていることだろうか。 飄零:〔へうれい;piao1ling2○○〕落ちぶれる。落ちぶれて流浪する。さすらい漂泊する。また、枯れて落ちる。ここは、前者の意。「飄散」ともする。「飄散」:〔へうさん;piao1san4○●〕ひらひらと飛び散る。 ・外頭:外。よそ。よその土地。「他州」ともする。「他州」:他郷。異郷。 ・-頭:接尾字。名詞や形容詞の後に附いて、名詞の語に換える接尾字。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「州愁頭」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
●○○●○○●,
●○○○●●○。(韻)
2012.5.30 5.31完 6. 1補 |
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