王安石初夏即事　詩詞世界碇豊長の詩詞：漢詩 Wang Anshi

初夏即事
	北宋・王安石

石梁茅屋有彎碕，
流水濺濺度兩陂。
晴日暖風生麥気，
綠陰幽草勝花時。

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初夏即事(そくじ )

石梁(せきりゃう)　茅屋(ばうをく)　　彎碕(わんき ) 有り，
流水(りうすゐ)　濺濺(せんせん)として　　兩陂(りゃうひ)を度(わた)る。
晴日(せいじつ)　暖風(だんぷう)　　麥気(ばくき)を生(しゃう)じ，
綠陰(りょくいん)　幽草(いうさう)　　花時(くゎじ)に勝(まさ)る。

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◎　私感註釈

※王安石：北宋の政治家、改革者。文学者。１０２１年（天禧五年）～１０８６年（元祐元年）。字は介甫。号は半山。撫州臨川（現・江西省臨川）の人。神宗のとき宰相となり、変法（制度改革）を倡え強行したが、司馬光らの反対に遭い、やがて失脚して引退する。散文に優れる。唐宋八大家の一人。

※初夏即事：初夏の風景に対して即席で作る。＊この詩、後世の南宋・呂祖謙の『野歩』「石梁俯清流，苔髮明可數。茅簷春晝長，寂寂亭陰午。鳥啼花徑深，風絮浩無主。幽人不可覿，棊聲時出戸。」に影響を与えたか。　・即事：その場のことを詠じた詩。目の前の景色や様子。即席。

※石梁茅屋有彎碕：石の小さな橋、かやぶきの粗末な家、彎曲した岸。　・石梁：石の小さな橋。　・茅屋：かやぶきの家。粗末な家。また、自分の家の謙称。ここは、前者の意。　・彎碕：彎曲した岸。　・有：（…）がある。蛇足になるが、ここの「有」が「在」だとすれば「石梁、茅屋は彎碕に在り」の意となり、大きく異なる。

※流水濺濺度両陂：流れる水は、さらさらと二つの土手/池（の間）をわたり。　・濺濺：〔せんせん；jian1jian1○○〕水がさらさらと流れるさま。また、涙が流れ落ちるさま。ここは、前者の意。　・陂：〔ひ；pi2（/は；po1）○〕つつみ。土手。いけ。坂。＝坡。

※晴日暖風生麦気：晴れた日射しで、暖かい風で、麦の草いきれが起こって。　・麦気：麦のくさいきれ。畑に植えてある麦から発生するかおり。

※緑陰幽草勝花時：（初夏の）青葉の茂った木立のかげの暗くひっそりとした草の繁み（の情景）は、花の咲く季節（花の春）に勝（まさ）っている。　・幽草：ほの暗くひっそりとした草。　・勝：まさる。　・花時：春、いろいろの花の咲く季節。花期。花候。

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◎　構成について

韻式は、「ＡＡＡ」。韻脚は「碕陂時」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。

●○○●●○○，（韻）
○●○○●●○。（韻）
○●●○○●●，
●○○●◎○○。（韻）