王安石江上　詩詞世界碇豊長の詩詞：漢詩 Wang Anshi

江上
	北宋・王安石

江北秋陰一半開，
晩雲含雨却低回。
靑山繚繞疑無路，
忽見千帆隱映來。

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江上

江北の秋陰(しういん)　　一半(いつぱん) 開き，
晩雲(ばんうん)　雨を含(ふく)みて　　却(かへ)って低回(ていくゎい)す。
靑山(せいざん)　繚繞(れうぜう)して　　路(みち) 無きかと疑(うたが)へば，
忽(たちま)ち見る　　千帆(せんぱん)の　隱映(いんえい)して来(きた)るを。

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◎　私感註釈

※王安石：北宋の政治家、改革者。文学者。１０２１年（天禧五年）～１０８６年（元祐元年）。字は介甫。号は半山。撫州臨川（現・江西省臨川）の人。神宗のとき宰相となり、変法（制度改革）を倡え強行したが、司馬光らの反対に遭い、やがて失脚して引退する。散文に優れる。唐宋八大家の一人。

※江上：〔かうじゃう；jiang1shang4○●〕（南方の大きな）川の畔。川の畔。河の畔。また、川の水面。ここでは長江の畔を謂う｡この詩、政治的な諷諭詩と看れば、次のような意味になろうか：「大きな川の北岸側は、秋のくもりが半分程とれてきた。（しかし、南岸側の）暁雲（＝朝雲＝朝廷の雲行き）は雨を帯びて、却って行きつ戻りつしている。男児の骨を埋むべき青い山をまつわりめぐり（行けば、政治上の）路が途切れるのかと疑ってしまった（が）。突然（目の前の展望が良くなって）、多くの船（＝天下の情勢）が見え隠れするのが見えた。」となろうか。

※江北秋陰一半開：（長江）の北岸側は、秋のくもりが、半分程開（あ）けかかった（が）。　・江北：（南方の大きな）川の北岸側。ここでは長江の北岸を謂う。　・秋陰：秋のくもり。秋のひややかさ。また、秋の木蔭。ここは、前者の意。　・一半：半分。

※晩雲含雨却低回：（南岸側のこちらの）日暮れの雲は雨を帯びて、逆に行きつ戻りつしている。　・晩雲：日暮れの雲。「曉雲」ともする。その場合は、明け方の雲。　・含雨：雨を帯びる意。　・却：反対に。逆に。かえって。　・低回：行きつ戻りつする。

※青山繚繞疑無路：青々とした樹が繁っている山がまつわりめぐっている（ので）、路が途切れるのかと疑ってしまった（が）。　・青山：青々とした樹が繁っている山。男児の骨を埋むべきところ。また、固有名詞で山の名。江寧（現・南京附近）にある山の名称で、江蘇省儀徴県の西南にある。地名では青山汛のことで、江蘇省儀徴県の西。　・繚繞：〔れうぜう（りょうじょう）；liao2rao4◎●〕まつわりめぐる。また、ひるがえるさま。ここは、前者の意。　・疑：疑う。疑うらくは。　・無路：路が途切れる。北宋・秦觀の『秋日』に「霜落邗溝積水清，寒星無數傍船明。菰蒲深處疑無地，忽有人家笑語聲。」とあり、後世、南宋の陸游は『遊山西村』で「莫笑農家臘酒渾，豐年留客足鷄豚。山重水複疑無路，柳暗花明又一村。簫鼓追隨春社近，衣冠簡朴古風存。從今若許閒乘月，拄杖無時夜叩門。」と使う。

※忽見千帆隠映来：突然（道の展望が良くなって）、多くの船が見え隠れするのが見えた。　・忽見：突然見える。たちまち見える。　・忽：〔こつ；hu1●〕たちまち。にわかに。突然。　・千帆：多くの船の意。　・隠映：かげったり、照り映えたりする。ちらっと見える。

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◎　構成について

韻式は、「ＡＡＡ」。韻脚は「開回來」で、平水韻上平十灰。この作品の平仄は、次の通り。

○●○○●●○，（韻）
●○○●●○○。（韻）
○○○●○○●，
●○○●●○○。（韻）