陳起買花　詩詞世界碇豊長の詩詞：漢詩 Chen Qi

買花
	南宋・陳起

今早神淸覺歩輕，
杖藜聊復到前庭。
市聲亦有關情處，
買得秋花插小瓶。





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花を買ふ      　　　　　　　　　　　　　

今早((けさ))　神(しん) 淸(すがすが)しくして　　歩(ほ)の輕きを覺(おぼ)え，
藜(れい)を杖(つゑつ)き　聊(いささ)か復(ま)た　　前庭に到る。
市聲( しせい)　亦(ま)た　　關情(くゎんじゃう)の處(ところ) 有りて，
秋花(しうくゎ)を　買ひ得(え)て　　小瓶に插(さ)す。

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◎　私感註釈

※陳起：南宋時代の出版者。江湖（世間）の作品を集めて『江湖集』をはじめとして、『江湖×集』『江湖○集』という具合に、出版を続けた。字は宗之。臨安の錢塘（現・浙江簫杭州）の人。落魄の詩人側に立っていたが、弾圧された。

※買花：花を買った。 *他の詩人ではあまり見かけられない、大胆な表現をとっている。

※今早神清覚歩軽：今朝（けさ）は気分が清々（すがすが）しくて、歩みが軽やかであると感じたので。　・今早：今朝（けさ）。　・神：気分。精神。神経。　・清：すがすがしい。　・覚：…と感じる。　・歩軽：歩みが軽やかである、意。

※杖藜聊復到前庭：杖をついて、ちょっと前庭に行った。　・杖藜：〔じゃうれい；zhang4li2●○〕杖をつく。アカザの茎で作った老人用の杖。＝藜杖（○●）。　・聊復：いささかまた。ちょっと。しばらく。さしあたり。

※市声亦有関情処：市（いち）の賑（にぎ）わいがまた、懇（ねんご）ろな気持ちにさせることもあって。　・市声：市（いち）の賑（にぎ）わい。南宋・楊萬里の『再病中書懷呈仲良』に「病中嫌雨又嫌晴，自是情懷未若平。兩日雨多端不惡，市聲洗盡只簷聲。」がある。　・亦有：…でもある。　・関情：気遣うような気持ち。懇（ねんご）ろな気持ち。（關切的情懷）。

※買得秋花挿小瓶：秋の花を買ってしまい、小瓶に活（い）けている。　・買得：…を買って（その結果）。　・挿：（花を）活（い）ける。（花を）挿（さ）す。

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◎　構成について

韻式は、「ＡＡＡ」。韻脚は「軽庭瓶」で、平水韻下平八庚（軽）、下平九青（庭瓶）。この作品の平仄は、次の通り。

○●○○●●○，（韻）
●○○●●○○。（韻）
●○●●○○●，
●●○○●●○。（韻）