�C明上河圖畫讃其二
	張公藥

水門　東に去れば　　陰井に接し，　　
是　　 魚鱗　　如しかざる所。
老氏　從來　　盈滿えいまんを戒め，
故に知る　今日　　丘墟きうきょに變ぜしを。

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◎　私感註釈

※張公藥：

※�C明上河圖畫讃其二：『清明上河図』の画讃にある絶句の其の二。清明節の帝都の川（（汴水）の畔の殷賑を描いた）絵の画讃詩其の二。或いは、天下が平和に治まっていた時代の帝都の川（（汴水）の畔の殷賑を描いた）画讃の絶句の其の二。普通は前者の意を採る。　*北宋末、張擇端によって描かれた北宋の首都・汴梁（開封/汴京）とそこを流れる汴河の風物絵巻物である。『清明上河図』に書き添えられた詩。複製が北京で売られており、伊勢丘人先生が手に入れられ、絵画の後に書かれている画讃部分の詩文の釈文をされた。本ページの原詩は伊勢丘人先生のものに依る。　・�C明上河圖：〔せいめいじゃうがづ；qing1ming2shang4he2tu2〕画題。普通は『清明節の帝都の川（（汴水）の畔の殷賑を描いた）絵』の意とするが、果たしてこの絵は本当に清明節（新暦・四月五、六日頃）を描いたものか。『天下が平和に治まっていた時代の帝都の川（（汴水）の畔の殷賑を描いた）絵』の方が相応しくないか。北宋末、張擇端によって描かれた汴水の流れる北宋の首都・汴梁（開封/汴京）の賑わいを描いた絵巻物。　・�C明：天下が平和に治まる。または、清明節で、二十四節気の一。新暦の四月五、六日ごろに当たる。　・上河：帝都の川。また、川を溯る。　・畫讃：絵に書き添えたほめことばや詩歌。

※水門東去接陰井：*現在、節奏が不明なので句としての意味が分からない。この詩二十七字分しか分からない（二十七字しかないのではないか）。韻脚から判断して最後は「墟」でその二句前は「如」。では第一句は押韻を踏み落としているのか。その場合「水門東去接陰井，是×魚鱗所不如。老氏從來戒盈滿，故知今日變丘墟。」なのか、或いは（わたしは漢詩を作るので、「自分が作るとしたら」と）想像をたくましくして韻脚があったとし、「水門東去接隋渠，井是魚鱗所不如。老氏從來戒盈滿，故知今日變丘墟。」ともしてみた。汴河は、隋・煬帝が造った黄河と淮河とを結ぶ運河で、通済渠のことであり、「渠」を充てた。また「「陰」字も「隋」であるようにも見え、こうしてみた。　・水門：東水門か。『東京とうけい夢華録』（孟元老著、入矢義高・梅原郁訳注　平凡社・東洋文庫) で該当するものを探してみた。『東京とうけい夢華録』２５ページ「東都の外城」に「東側の城壁は門が四つある。東南は東水門といい、これが・汴べん河の下流の水門である。門は河に跨がり、鉄板をうちつけた格子窓があって、夜になると閘門のように水面におろされる。汴河の両岸にはそれぞれ門があって人を通し、拐子城に出られ、両岸とも百丈あまりの長さになる。次は新宋門といい、その次は新曹門、またその次は東北水門、つまり五丈河の水門である。」とある。そこのことになろうか。『中国歴史地図集』第六冊　宋・遼・金時期（中国地図出版社）１２−１３ページ「北宋 京畿路　京西南路　京西北路」にはない。　・東去：東の方に行く。　・陰：この字、「隋」とも見える。前出・『東京とうけい夢華録』の３６ページ「河道」に「中央を流れる河を汴河という。…東水門の外七里の所にある橋を虹橋という。この橋には橋脚がなく、すべて巨大な材木を使ってアーチ式に架橋し、朱（あか）い塗料で飾りたてたところはちょうど空に虹がかかったようである。」とこの『清明上河図』の中央部分の賑わう橋のことにも触れている。　・陰井：陽を背にした井。家の中にある井戸。　・隋井：通済渠のことになろうか。韻字が落ちていたとし「渠」とした場合、「水門東去接隋渠」で、隋渠＝隋の煬帝が造った通済渠。　・井：井戸。田地。まち。

※是×魚鱗所不如：*現在、節奏が不明なので句としての意味が分からない。　・魚鱗：魚類。魚のうろこ。この「魚」字は押韻字と同じ韻目なので、作者があまり深く詩法に拘っていないことが感じられる。　・所-：…すること。…する時。…するところ。動詞の前に附き、動詞を名詞化する。　・不如：…に及ばない。…にこしたことはない。…した方がよい。…のほうがましだ。…にしかず。

※老氏從來戒盈滿：老子は以前から富貴・権力などが極点に達することを戒めてきた。　・老氏：老子を指す。　・從來：これまで。もとから。以前より。　・戒盈滿：『老子』第九章に「持而盈之，不如其已。」とある。　・戒：〔かい；jie4●〕さとす。（非常の場合に備えて）用心する。いましめる。　・盈滿：〔えいまん；ying2man3○●〕富貴・権力などが極点に達する。また、いっぱいになる。充満する。

※故知今日變丘墟：（極点に達した後は、衰頽しかなく）それ故分かることだが、今は荒れ果てた地となってしまった。　・丘墟：荒れ果てた地。「丘」字や「墟」字には、「空（むな）しい」の意もある。


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◎　構成について

韻式は、「AA」。韻脚は「如墟」で、平水韻上平六魚。この作品の平仄は、次の通り。

●○○●●○●，
●　 ○○●●○。（韻）
●●○○●○●，
●○○●●○○。（韻）

或いは、
　　　●○○●●○○，（韻）
　　　●●○○●●○。（韻）
　　　●●○○●○●，
　　　●○○●●○○。（韻）

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