柳宗元与浩初上人同看山寄京華親故　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 LiuZongyuan

與浩初上人同看山寄京華親故
	柳宗元

海畔尖山似劍鋩，
秋來處處割愁腸。
若爲化得身千億，
散向峰頭望故鄕。

高田風光　　　桂林　仇均世氏　撮影・提供
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浩初上人と同ともに山を看　京華の親故に寄す　　　

海畔かいはんの尖山せんざんは　　劍鋩けんばうに似にて，
秋來　處處しょしょ　　愁腸しうちゃうを割さく。
若爲いかんぞ　身みを千億せんおくに化かし得えて，
散さんじて峰頭ほうとうに上のぼりて　　故鄕を望まん。

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◎　私感註釈

※柳宗元：中唐の詩人。７７３年（大暦八年）～８１９年（元和十四年）。字は子厚。任地に因んで、柳河東、柳柳州とも呼ばれる。河東（現・山西省）の人。韓愈と並んで古文運動を提倡、その勃興に寄与した。政争に巻き込まれ、永州司馬、更に柳州司馬に左遷された。『江雪』「千山鳥飛絶，萬徑人蹤滅。孤舟簑笠翁，獨釣寒江雪。」は、特に有名。

※與浩初上人同看山寄京華親故：浩初上人とともに山を見る。都にいる親戚や知人に手紙でその詩を送る。　・與…同：…といっしょに。…とともに。　・與：…と（ともに）。　・浩初上人：柳宗元の友人の僧侶で、潭州（現・湖南省長沙）の人。龍安海禅師の弟子になる。柳宗元には『浩初上人見貽絶句欲登仙人山因以酬之』がある。　・上人：〔しゃうにん；shang4ren2●○〕僧侶の敬称。　・寄：詩歌を手紙で送る。　・京華：〔けいくゎ；jing1hua2○○〕みやこ。花の都。京都（けいと）。京師（けいし）。京城（けいじゃう）。　・親故：親戚や知人。唐・白居易の『送春』に「三月三十日，春歸日復暮。惆悵問春風，明朝應不住。送春曲江上，拳拳東西顧。但見撲水花，紛紛不知數。人生似行客，兩足無停歩。日日進前程，前程幾多路。兵刃與水火，盡可違之去。唯有老到來，人間無避處。感時良爲已，獨倚池南樹。今日送春心，心如別親故。」とあり、同・白居易『杪秋獨夜』「無限少年非我伴，可憐淸夜與誰同。歡娯牢落中心少，親故凋零四面空。紅葉樹飄風起後，白鬚人立月明中。前頭更有蕭條物，老菊衰蘭三兩叢。」とある。

※海畔尖山似劍鋩：水際の尖（とが）った山は　剣の鋩（きっさき）に似ており。　・海畔：〔かいはん；hai3pan4●●〕うみべ。ただし、柳州（現・廣西壯族自治区柳州）は山奥で、白石水、潭水、龍渓水、陽水などがあるだけで、「水辺」の意なのか。　・尖山：尖（とが）った山。作者がいる柳州は（尖った山（写真）で有名な）桂林（当時

は桂州）の西南１２０キロメートルのところ。『中国歴史地図集』第五冊　隋・唐・五代十国時期（中国地図出版社）６９－７０ページ「唐　嶺南道東部」にある。　*北方人の柳宗元にとっては、右の写真のような尖（とが）った山の形は異形と映り、彼の心を潤い癒すものではなかったことがこの聯の表現からよく分かる。　・劍鋩：〔けんばう；jian4mang2●○〕剣の鋩（きっさき）。

※秋來處處割愁腸：秋が方々（ほうぼう）に訪れたために、（その山の先のきっさきで）愁（うれ）いに満ちた心を断（た）ってしまうかのような悲しみである。　・處處：ここかしこ。あちらこちら。方々。　・割：断（た）つ。　・愁腸：うれえ悲しむ心。宋・范仲淹の『蘇幕遮』では「碧雲天，黄葉地，秋色連波，波上寒煙翠。山映斜陽天接水，芳草無情，更在斜陽外。　　黯鄕魂，追旅思，夜夜除非，好夢留人睡。明月樓高休獨倚，酒入愁腸，化作相思涙。」と使う。

※若爲化得身千億：もしも変化（へんげ）することができて、（この）身が釈迦のように千億になる（化身（けしん）する）ことができるのであれば。　・若爲：もしも。また、どうして。どのように。いかん（ぞ）。ここの句「若爲化得身千億」は、「若爲（いかん）ぞ　身（み）を千億（せんおく）に化し得て」と読み下すより、「若（も）し化（か）し得（え）て　身（み）千億（せんおく）と爲（な）りたれば」と読む方が正確だろう。　・-得：動詞の後に附いて、動作などの結果・程度を表す。…（し）得て。　・化得：化して（その結果）…となる。化し得て。　・千億：釈迦のように千億になる（化身（けしん）すること。仏教関聯用語か。甚だ多い数。

※散上峰頭望故鄕：分身が峰の上に散って上って行き、そこから懐かしい故郷の方を望もう。　・散上：散らばってのぼる。「散向」ともする。　・峰頭：峰の上。峰頂。「峰頭」は○○で、本来詩句中「○○」とすべきところで用い、「峰頂」は○●で、本来詩句中「●●」とすべきところで用いる。　・望故鄕：郷里を懐かしがる。故郷の方を遥かに眺める。望郷。

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◎　構成について

韻式は、「AAA」で、韻脚は「鋩腸鄕」で、平水韻下平七陽。この作品の平仄は、次の通り。

●●○○●●○，（韻）
○○●●●○○。（韻）
●○○●○○●，
●●○○◎●○。（韻）