劉長卿贈崔九載華　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩　Liu Changqing

贈崔九載華
	唐・劉長卿

憐君一見一悲歌，
歳歳無如老去何。
白屋漸看秋草沒，
靑雲莫道故人多。

******

崔九載華に贈る

君を憐(あはれ)む　一見すれば　　一悲歌するを，
歳歳　老い去るを　如何ともする無し。
白屋(はくをく)　漸(やうや)く看る　　秋草に沒するを，
青雲　道(い)ふこと莫れ　　故人多しと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　****************

◎　私感註釈

※劉長卿：盛唐の詩人。７０９年？（景龍年間？）～７８０年？（建中年間？）。字は文房。河間（現・河北省）の人。進士に合格して官吏となるも下獄、左遷された。ために、詩には失意の情感や離乱を詠うものが多い。五言詩に優れていることから「五言（の）長城」と称された。

※贈崔九載華：崔載華に（この詩を）贈る。＊崔載華の時運を得ない歎きについて、諫め慰めた詩。　・崔九載華：崔載華のこと。崔家の九男。「九」は排行。作者・劉長卿の友人。劉長卿の詩には、崔載華（崔九載）の出てくる詩題・『送張起崔載華之閩中』、『茱萸灣北答崔載華問』、『酬李員外從崔録事載華宿三河戍先見寄』『同崔載華贈日本聘使』と、相当密度の濃い交遊があったのが覗える。詳細は不詳。

※憐君一見一悲歌：（劉長卿の言：）あなたを気の毒に思う。会うたびに、悲しげな詩歌をうたうのは。　・君：あなた。ここでは､崔載華（崔九載）を指す｡　・一見：一回会う。ちょっと会う。 *この「憐君一見一悲歌」の句連動文のようにとり、「憐れむ君の一見一悲歌するを」とも読むが、いいのか。ただ、劉長卿には似通ったものに『同崔載華贈日本聘使』「憐君異域朝周遠，積水連天何處通。遙指來從初日外，始知更有扶桑東。」があり、これも連動文のように読まれているようだが…。　・一…一…：一回…をするごとに、一回…をする。　・悲歌：悲しげな詩歌。この詩中の句でいえば「如老去何」（歳月が徒（いたずら）に流れていく）、「白屋…秋草没」（貧しい家で、人生の秋に埋没しようとしている）、「青雲故人多」（曾ての友人は、出世した者も多いのに…）

※歳歳無如老去何：（劉長卿の崔載華に対する言：）毎年、歳を取っていくのは、どうしようもない（ことなのだ）。　・歳歳：毎年。　・如…何：…をどんなにしたものであろう。どうしたらいいだろう。（…を）いかんせん。疑問の形式。　・老去：歳を取っていく。老いていく。　・無如老去何：歳を取っていくのはどうしようもない。

※白屋漸看秋草没：（崔載華の言い分で、）「貧しいかやぶきの家（＝（崔載華の家）は、だんだんと秋の草にかくれてきて…（次の句へ続く）」。　・白屋：貧しい者の家。かやぶきの家。彩色の施していない家。　・漸：〔ぜん；jian4●〕だんだんと。次第に。ようやく。　・沒：〔ぼつ；mo4●〕かくれる。かくす。また、しずむ。ここは、前者の意。

※青雲莫道故人多：（崔載華の言い分について）「…高官には、昔の友人が多くなっているのに」等とは、言いなさるな。（時運なのだ）。　・青雲：高い位。高官。立派な徳を備え、名声の高いこと。また、俗世から隠れる喩え。また、青みがかった雲。青空。ここは、前者の意。　・莫道：（…と）言いなさるな。（…と）言うなかれ。　・故人：古くからの友人。昔の友達。旧友。故知。また、死んだ人。

　　　　　　　　　　　　　　***********

◎　構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「歌何多」で、平水韻下平五歌。この作品の平仄は、次の通り。

○○●●●○○，（韻）
●●○○●●○。（韻）
●●●◎○●●，
○○●●●○○。（韻）