1988 MCA Records |
のっけからドラムとベースの地響きにも似た重低音が体を震わせます。フランス映画で連綿と続いた暗黒ギャング映画の系譜をフイルム・ノワールなんて言いますが、今回のアルバム全体から受ける印象はさしずめサウンド・ノワールとでも言った趣き。やるせないまでのウイルトンフェルダーのサックスの雄叫びも健在。ただ若干ボサノバ調の曲もありますが、これはちょっとクルセイダーズとは水と油。
2曲目の「LET ME PROVE MYSELF TONIGHT」、ウイルトンフェルダーのひときわ冴え渡るサックスの音色が、コチラのハートにさながら驟雨のように降り注ぎ、乾いたスポンジ状態のハートにしっとり染み入ります。
だしぬけに「A.C."ALERNATING CURRENTS」が始まるや、卒然と,「仁義なき戦い」完結篇を想起。「会長が行かれてからですヨ、ワシラまっとうな事業を何度もやろうとしたけんど、そのたんびに警察や市から暴力団言うて強い圧力かかってですわい」と熱弁する、当時36歳の北大路欣也、漆黒のサングラスに黒ワイシャツ姿でリキの入った渾身の演技、あの時の熱気がサウンドとともに甦ります。またぞろやくざ映画かョですって。ええその通り、「オジキ、あとは頼んだぜ」、ハジキ片手にブリットを一発頭にぶち込む、あの北野武監督「ブラザー」の衝撃的なシーンも同時に脳裏をよぎります。
そして「DESTINY」のラブリーなメロディー、ジョーサンプルのキーボードのクリスタルタッチが冴えに冴え、フェルダーのサックスもそのサンプルに情緒纏綿として、まさに変幻自在の境地。
とはいっても、聴いていて、あの「OLD SOCKS NEW SHOESE」から、しみじみ「思えば遠くへ来たもんだ」って感慨ひとしきり。シャレたCDジャケットも、今までとは随分違う。まるでドイツ表現派の絵画のようなイラスト。付された解説書にも「THE new CRUSADERS」って書いてありますから、確かにnew路線の目論見があったのでしょう、ウーン正直言って、これまでのクルセイダーズ色とは何かが違う。
ふと、スタイルって何なんだろうナって考えましたネ。
頑固一徹に自分の創り出したスタイルに固執するタイプもあれば、あの横尾忠則氏のように今までのスタイルを壊していくタイプもある。
でもその横尾氏にしてからが、まるで金太郎アメのように、作品のどこを切っても切り口からはまぎれもなく横尾氏その人が立ち現れてくるのです。
とりもなおさず、スタイルとは、フォルム・オブ・ソウルなのでしょう。
確かに今回のアルバム、今までのクルセイダーズとは一味も二味も違う趣向。しかし聴いていて揺さぶられるほどコチラに伝わってくるのは、ほかならないクルセイダーズの魂、つまりは「熱き思い」、「男気」であり、文字通り闘魂の心意気です。これぞクルセイダーズのシャイでいなせなスタイル。
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