えーッ、こうやってクルセイダーズのアルバムを時系列て追っていきますってぇーと、いつかボルテージが落ちるんじゃないかとつい思ってしまいます。エクスタシーは長くは続かないもの、一旦アクメに昇り詰めりゃ、下降線を辿るもの。そう懸念して、今回のアルバム「STANDING TALL」を聴いたんですが、全くの杞憂でしたネ。
オリエンタルなムードで始まる「STANDING TALL」、昔よく巡業でやってきた曲芸団のサーカス小屋、余興で演じられる手妻師の幻術に幻惑されるように、あれよあれよという間にクルセイダーズマジックに乗せられて、目を閉じれば、壮大な男のロマンを思い描いているという仕儀。
2曲目の「I'M SO GLAD I'M STANDING TODAY」。ジョーコッカーが髪振り乱し、金八先生風にコブシを効かせて渾身のシャウト。「この馬鹿チンが、ボロは着てても心は錦たい!」、マグマが噴出してきそうなほど力が涌き出てくる。このエネルギッシュな佳曲には、思いますに、79年にクルセイダーズがジョイントしたあのBBキングとの一大セッションが重要な伏線となっているはず。
アルバム「TAKE IT HOME」で見事なまでにクルセイダーズとマッチして男の激情がほとばしります。とりわけ「SAME OLD STORY」。シャウトするBBキングの歌声を聴きながらふと脳裏に浮かんだのは誰あろう、あの「ガルシャの首」のウォーレン・オーツ。漆黒のサングラスを掛けて単身殴りこむウォーレンオーツ。そして、あの「ワイルドバンチ」でペッキンパー監督お得意のスローモーションタッチで活写される銃弾に蜂の巣状態のオーツ。映画でシャウトするウォーレンオーツの雄姿にWって、クルセイダーズ魂が怒涛の如く押し寄せ、男心を揺さぶります。
実際このアルバム、クルセイダーズ風「男の情唄」のような気がしてなりません。最後のウィルトンフェルダーのサックスむせび泣く「REPRISE」に至るまで、「シャウト」「恋情」「泣き」の文字通り「REPRISE」で、男心を高揚させていきます。ここで又ウォーレンオーツ同様にどうしても思い出しますのは、映画「リベンジー」。今は亡き名優アンソニークインの裏切られた男の「泣き」と、最後にケビンコスナーが流す悲恋の涙が、クルセイダーズ快心の情唄に彩られながら記憶のスクリーンに蘇ってくるのでした。
今回のアルバム、間違い無く感情が勃起します。
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